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空想お散歩紀行 物語の道

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空想の世界の日常を自由に描いています。
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2024年2月の記事一覧

空想お散歩紀行 闇のサイクル

空想お散歩紀行 闇のサイクル

雨が降り、川が作られ、草木を育み、川は海へと流れ、そしてまた雲を作り雨が降るように、世界は常に回っている。
それは自然界だけではなく、人間界でも同じである。
さらに言えば、そのサイクルに善悪や正邪はない。
闇を生きる者たちの間でもそれは必定である。
一人の暗殺者がいる。
彼は依頼通りに一人の人間を殺す。それは仕事だから当たり前だ。
時に彼は殺すだけが仕事でないときもある。
殺した後の死体処理まで込

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空想お散歩紀行 それはただそこにある試練

空想お散歩紀行 それはただそこにある試練

とあるダンジョン。そこは何人もの冒険者が挑戦し、そしてある者は大量の金を持ち帰り、ある者は満身創痍で帰ってきた。
このダンジョンにはゴーレムが出現する。
ゴーレムとは主に岩石の体を持つ魔法生物である。
だが、このダンジョンのゴーレムは特別だった。それがここに冒険者が集まる理由でもある。
このダンジョンはどこかに金の鉱脈があるらしく、その金を自身の体の材料にしたゴールデンゴーレムが出現するという非常

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空想お散歩紀行 神々の炎上

空想お散歩紀行 神々の炎上

畳の部屋にいつもは置かれない長机と座布団がいくつも置かれている。
座布団の大きさは全部同じだが、その上に座っている体は様々だ。
座布団から体がほとんどはみ出てしまっている者もいれば、座布団の真ん中にちょこんと座っている者もいる。
だが、ここではそれは珍しいことでも何でもない。
何せここにいるのは人間ではなく、神たちだからだ。
高天ヶ原、八百万の神々が暮らす世界。
そこに最近作られたのが、この「研修

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空想お散歩紀行 ダンジョンに潜る前に

空想お散歩紀行 ダンジョンに潜る前に

「準備はどう?」
いつもの作業。出発前は必ずこうやって最後の確認をする。めんどくさく感じる時もあるが、これが生きて帰ってくる秘訣と言っても過言ではない。
「最後の確認よ。今回挑戦するダンジョンのタイプは?」
「中型規模。7割は水エリアで占められている。歩いて行けるエリアにも寒暖差の激しいエリアはあるが、今回はそういう所にはいかないから大丈夫」
ダンジョン攻略に必要なもの。それは事前情報と、目的の明

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空想お散歩紀行 神に愛された男

空想お散歩紀行 神に愛された男

死んだ後の世界というものは、どういう所なのかというのは一度は誰もが考えたことがあると思う。
だが実際、死んでから来てみて思うことは案外普通だなという感想だった。
私はここに来たわけだが、生前に特に未練は無い。
はっきり言うが、私の人生は成功に満ち溢れていた。
子供の頃から才能に恵まれ、それは成長するに従ってより勢いを増していった。
勉強、スポーツ、ビジネス。少なくとも人間が生きる上で通る道で私はこ

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空想お散歩紀行 自分の死を見ているようで

空想お散歩紀行 自分の死を見ているようで

ペットを飼うということは、その命に責任を持つということだ。
と、言うのは今さら言われるまでもないことだ。
子犬だろうと、子猫だろうと、最初はどんなに小さくて可愛い存在だろうと、最後には必ずお別れの時は来る。
責任を持つということは、必ず来る予定に対して覚悟をするということだ。
それは分かっていたつもりだった。
しかしそれはあくまでペットの場合の話。
今、俺の目の前にある棺。その中に横たわって目を瞑

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空想お散歩紀行 マジックプレート

空想お散歩紀行 マジックプレート

まいったな。
心の中でさっきから同じ言葉が繰り返される。
「やっぱだめそう?」
ファルがさっきから声を掛けてきてくれるがそこに心配しているような色はない。
所詮彼女は剣士だ。事の重大さが分かっていない。
「うーん、だめね。これは、一度教会に行くしかなさそう」
一番近い街は、ドゥコーモか。立ち寄る予定は無かったんだけど仕方ない。
「魔法って便利なようでいざという時不便だよな」
「仕方ないでしょ。魔法

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空想お散歩紀行 ゴーストパーク

空想お散歩紀行 ゴーストパーク

さあ、今宵は祭りだ、パーティだ。
いや、確か昨日も一昨日もその前も同じ様に騒いだっけ?
まあどうでもいいか。きっと明日も明後日もその次もきっと同じく騒いでいるのだから。
ここは閉鎖された遊園地。
されどここに集まるのは、この世の鎖から解き放たれたものたち。
一体誰が決めつけた?お化けが暗いものだと。
一体誰がささやいた?お化けは冷たいものだと。
確かにそういうやつもいるが、違うやつもいる。
死んで

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空想お散歩紀行 星の海のダンジョン

空想お散歩紀行 星の海のダンジョン

そこは今でも当時の形をほとんど残していた。
全長1000キロにも及ぶ大型宇宙船。
数えきれないほどの多くの人を乗せて、その船は旅立った。
船全体に張り巡らせられたソーラー発電機が船内の空調を自動でコントロールし、常時メンテナンスロボが設備を保守しているため、驚くほど中は清潔さを保っている。
しかし、それら管理コンピュータやロボたちが仕えるはずの存在はどこにも見当たらない。
今、この船の中にはかつて

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空想お散歩紀行 ダンジョンボディ

空想お散歩紀行 ダンジョンボディ

世界にはダンジョンがいくつもある。
共通しているのは、地上に入口があって、地下に潜っていくという形だが、その内部はまさに千差万別である。
床や壁の素材。生息している動物や植物。一人か二人が進むのがやっとなくらい狭い通路のものもあれば、町が一つ入ってしまうのではと思えてしまうくらい広い空間を持つものもある。
そんなダンジョンたちを日々、多くの冒険者たちが攻略のために潜っている。
内部の調査をする研究

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空想お散歩紀行 お悩みストレート解決

空想お散歩紀行 お悩みストレート解決

「・・・はい、確かに」
契約書の中身に不備が無いか、スーツの男はしっかりと目を通し確認した。
「では念のため確認ですが、あなたは死ぬことに合意しますね?」
「・・・はい」
小さくも力強く返事が返ってくる。男の右側に座っているのはまだ10代の少女。男からは横顔を見ている形になる。
この少女は死を望んでいた。所謂希死念慮というものを持っている。
「分かりました」
男はその返事に特に何も感じることはない

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空想お散歩紀行 冒険の後始末

空想お散歩紀行 冒険の後始末

冒険者とは常に未知の最前線に立ち、未踏を切り開く、その心のことを言う。どんなに体力、腕力、頭脳があったところでその心が無ければ意味がない。
だが、一度鍛えた体は中々衰えることは無いかもしれないが、心は一瞬で折れることもある。
彼、元冒険者のリッキーもそんな男だった。
冒険に対する興味が萎えた彼は、一線から身を引いた。
しかしだからと言って何もしなければ生きていくことはできない。
彼のように冒険者と

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空想お散歩紀行 死が集めるものは生

空想お散歩紀行 死が集めるものは生

「お願いしまーす!」
冬の朝の駅前に大きな声がこだまする。
その姿がはっきり見えない距離でも、元気な声だけで若いことが伝わってくる。
横一列に並ぶのは若い、中学生か高校生の男女5人。
それぞれが紐付きの箱を首からぶら下げ、
「お願いしまーす!」
と、同じ言葉を朝の駅前を行き来する主にサラリーマンたちに呼びかけている。
行き行く人々も、そんな時期かと学生たちの顔を見ながら歩いて行く。
これはこの地域

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空想お散歩紀行 まずは当店でご準備を

空想お散歩紀行 まずは当店でご準備を

商売の秘訣?そりゃ、どこも同じだと思うけどよ、お客を第一に考えるってことだろうな。
客が何を求めているのか、商品の質、量、値段を適切に見極めなきゃならねえ。
良い商品を仕入れても、手が届かない値段じゃ話にならねえからな。
まあ、偉そうなこと言ってるが、そんなに大した目を俺は持ってるわけじゃねえよ。
ここは大都会の店みたいに、常に流行りを追って、臨機応変に文字通り手を変え品を変えて経営していく必要が

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