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空想お散歩紀行 星の海のダンジョン

そこは今でも当時の形をほとんど残していた。
全長1000キロにも及ぶ大型宇宙船。
数えきれないほどの多くの人を乗せて、その船は旅立った。
船全体に張り巡らせられたソーラー発電機が船内の空調を自動でコントロールし、常時メンテナンスロボが設備を保守しているため、驚くほど中は清潔さを保っている。
しかし、それら管理コンピュータやロボたちが仕えるはずの存在はどこにも見当たらない。
今、この船の中にはかつての住民たちが一人も残っていないのだ。
ここは宇宙空間に浮かぶ巨大なダンジョンと化していた。
この宇宙船が母星を飛び立ったのがおよそ500年前、これまでの調査によりいまだに目的地には辿り着いていないらしい。それどころか、その目的地と思われる星がどこにあるのか誰にも分からないのである。
一体この船はどこに向かっているのか、なぜいたはずの人々は消えてしまったのか。
広大な船内にはロックされている区画も多く、まだ全容は解明されていない。
その謎を解き明かすため、または単に貴重な何かを手に入れて金持ちになるため、または単なる観光で、このダンジョン宇宙船は連日人が行き交っている。
人が集まれば商売が始まり、そしてまた人が集まる。船内の一部は小さな町と言ってもいい。そしてその町の中に、時折まるで違う時代の人のような服を着た人間が歩いているのを見たという目撃情報が決して少なくない。
星の海を行くこの船の深奥にあるのは、希望か、それとも・・・
多くの未知と欲望を乗せて船は今日も静かにそこにあった。

その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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