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空想お散歩紀行 物語の道

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空想の世界の日常を自由に描いています。
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2023年8月の記事一覧

空想お散歩紀行 探偵VS怪盗 密室魔法勝負

空想お散歩紀行 探偵VS怪盗 密室魔法勝負

「さて、私がついていけるのはここまでだ」
恰幅のいいヒゲの中年男性が隣に立つ男に声をかけた。
ヒゲの中年男性はこの地域を管轄とする警察署の所長である。彼は身長180センチの大男だが、そんな彼も隣に立つ男の目を見るためには少し見上げなければならない。
その男は、鹿撃ち帽とコートで身を包み、手にはパイプを持って煙をくゆらせている。
まるで小説の中に出てくる探偵のような出で立ちだが、そのものずばり男は探

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空想お散歩紀行 天職への転職

空想お散歩紀行 天職への転職

窓の無い部屋。壁はコンクリート打ちでひんやりとした空気が常に感じられる。
部屋の中にある物は、机や本棚など、仕事に必要なものが最小限あるだけで、生活感は皆無だ。
これが地下にある私の仕事場である。ここで誰にも邪魔されず一人で仕事をするのが何よりも落ち着く時間なのだ。
私は最近新しい道を歩き始めた。
今にして思えば、前の仕事はそれなりにおもしろかったが、ストレスの多いものだった。
私はいわゆるデザイ

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空想お散歩紀行 私が一番欲しいもの

空想お散歩紀行 私が一番欲しいもの

私は富豪・・・らしい。
なぜなら、私の家はいわゆる大豪邸だからだ。
家の中を一通り歩くだけで、ウォーキングの
運動になってしまうくらいだからだ。
そして、そんな私の家には様々な物がある。
最新の家電から、古い美術品、大きな車から小さな宝石まで、私の家に無い物は無いと言っても過言ではないかもしれない。それぞれに専用の部屋があるくらいだ。
そう、私は大富豪・・・なのは確からしい。
なぜここまで自信がな

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空想お散歩紀行 エンドレス推しループ

空想お散歩紀行 エンドレス推しループ

勇者アンリは、男顔負けの剣の腕と、卓越した魔法の技術を持った女性であり、今まさに使命を胸に旅を続けていた。
その使命とは、魔王にさらわれた、リルネリア姫を助け出すこと。
人々は世界の命運をその若き勇者に委ねた。
しかし、当の勇者は実はあまりそのことを気にしていない。彼女の心の中にあるのはただ一つ、
「絶対姫を助ける。そして握手してもらって、できれば顔と名前を覚えてもらいたい。推しに名前呼んでもらえ

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空想お散歩紀行 安心できる場所

空想お散歩紀行 安心できる場所

都会の喧騒から離れるようにその店はあった。
そのカフェは何でもない雑居ビルの一フロアにある。
だが、誰でもそこに行けるわけではない。
そこには否認の術が掛けられているので、一般人は辿り着くことができない。
店に入ることはできるのは、術を認識できる、同じ能力者たちだけだ。
つまりこのカフェは、様々な能力を持った人間たち専用の店だ。
都会の中に彼らのような能力者は意外と多い。
だがそれでも、全体から見

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空想お散歩紀行 夏の空、遠くに見える街

空想お散歩紀行 夏の空、遠くに見える街

夏は続いているが、確実に過ぎ去っていく。
今年も、ただ青い空と緑に輝く田んぼと畑を見て、少年の夏は終わりに近づいていた。
彼が見つめる先にあるのは青い空ではない。
その下にある物だ。
そこには空を衝くように巨大な建造物があった。
まるで話に聞いたことのある、遠い異国にあるというピラミッドという建物のように、上に昇るほどに先が細くなっている三角形のそれは、少年が住んでいる土地よりずっと離れているとい

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空想お散歩紀行 夏にとどめを

空想お散歩紀行 夏にとどめを

蝉の鳴き声は相変わらず耳を貫いてくる。
今日も余裕で30℃を超す気温の中、それでも日陰に入ると多少は涼しさを感じることができた。
そんな小さな清涼地を奪い合うように二人の男女が座り込んでいた。
男の方はこの暑さにもかかわらず黒のスーツとサングラスで身を固めていた。
女の方は、男よりも大分小柄で、こちらは逆に白のワンピースで肩や腕を露出し幾分かは涼しそうだ。
見た目はかなり対照的な二人だが、二人とも

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空想お散歩紀行 別れの言葉

空想お散歩紀行 別れの言葉

急な話ですが、本日をもって私は皆さんとお別れをしないといけません。
皆さんと過ごしたこの数年間は実に実りの多い物でした。
皆さんから実に多くのことを学ばせてもらいました。
人の、時に弱く儚げでも、その中にある強さや美しさ。逆境に追い込まれても、諦めず、そこから這い上がろうとする姿勢。
私が皆さんに学ばせてもらったように、もし皆さんも私から何かを得たというのであれば、私もここに来た意味があるというも

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空想お散歩紀行 思い伝わり、強くなる

空想お散歩紀行 思い伝わり、強くなる

今から数年前、とある科学者が一つの発明品を完成させた。
それは、人の思いを伝播させ、周りに影響を与えるという装置だった。
「これを使えば、世界を平和にすることも可能なはずだ」
科学者はそう考えていた。
人々が平和を思えば、その思いは拡散され、
さらに多くの人の心に平和を願う火がつくことになる。
その火はさらに広がり続け、最終的には世界中の人々が平和を愛するようになるはずだ。
しかし、科学者とは理想

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空想お散歩紀行 純粋な魔法

空想お散歩紀行 純粋な魔法

二人の旅人が程よく手入れがされた街道を歩いていると、遠くの山の上に何やら赤い色が見えた。
山の木々の深い緑の色の中では、それは小さくともはっきりと目で捉えることができる。
だがどうやら、それは旅人が今いる所よりもずっと遠くのようだ。
「あれって何ですかね?」
旅人の一人が何気なしに尋ねた。
「何だ知らねえのか?あれはキルワイズの館だよ」
「何でしたっけそれ?どこかで聞いたような」
「あれだよ。世界

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空想お散歩紀行 まだ知らない夏

空想お散歩紀行 まだ知らない夏

今日も青すぎるほど青い空に真っ白な雲が浮かんでいる。
太陽の光は木の葉の緑をより濃く輝かせている。
蝉の声を聞こえるが、それは窓のガラスに阻まれてかなり抑えられている。
そう、私はこのガラス越しにしか夏を見たことが無い。
清潔で常に空調が適切に効いた部屋のベッドの上、私の居場所はそこしかない。
病気で外に出られない私にとって、南側の壁の一面に貼られたガラス窓から見る景色が夏の全てだ。
たった一枚ガ

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空想お散歩紀行 人とは歩く一冊の本である

空想お散歩紀行 人とは歩く一冊の本である

気が付いたらここにいた。
どこで道を迷ったのか、朧気で全く思い出せない。
だけど、窓の外に見える景色は夏の日差しが地面をこれでもかというくらいに焼いている。
ここは冷房が効いていて居心地がいい。しばらくはここにいよう。
どうやらここは図書館のようだ。いくつも並んだ本棚は、どこも隙間なく本が詰められている。
しかし一つ不思議なことがあった。この図書館はどれくらい大きいのか、それが分からない。
奥の方

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空想お散歩紀行 全てが主人公

空想お散歩紀行 全てが主人公

人生とは、一人一人が主役の物語だと、誰かが言っていた気がする。
そしてそれは正しい。
僕は小さい頃からそれが分かっていた。
なぜなら、僕の目には全ての人々が何かしらの物語の主役であることが分かるという、特に役に立つわけでもない能力があるからだ。
分かると言っても、その人の未来が見えるわけではない。
仕事なのか、スポーツなのか、それとも芸術なのか、何となくどの分野で主役となるのか。
さらに、順風満帆

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空想お散歩紀行 人生の岐路にあるカフェ

空想お散歩紀行 人生の岐路にあるカフェ

彼の生活はようやく落ち着きを取り戻していた。
突然の父親の急死。葬儀やら何やらの激流のような時間が過ぎ、最初の休日。彼は散歩に出ていた。
傘を雨が叩く音を聞きながら歩いている。
歩きながらも、特に何か考えることがあるわけではない。いや、むしろ考えることが多すぎて何も掴めない状態なのかもしれない。
半ばぼおっとした頭で散歩を続ける。
ふと気づくと、普段は歩くことの無い路地に入ってしまったのか、視界の

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