地球の仲間と連鎖しよう(バイオ・ミミクリー)
生物模倣や生態模倣、バイオ・ミミクリーやバイオ・ミメティクス、と呼ばれるもの。
今回は、これを私らしい文章で解説していく。最後まで楽しく読んでもらえるように、工夫して書いてみる。
バイオ・ミメティクスは、単に、自然界からインスピレーションを受けた製品の開発で。バイオ・ミミクリーは、製品開発を通じて気候変動などの課題解決を目指す、より大きな概念だ。ーー的な解説も存在するのだが。
個人的にはこう思う。
新しいテクノロジーを実装するために、自然のエンジニアリング・ソリューションから学ぶこと。それはエンジニアによって技術的に解釈される場合もあれば、建築家などによってよりインスピレーション的に解釈される場合もある。
(生体工学 = バイオニクスはこれらとは別ものだろう。技術的手段で、生物学的システムを複製することをさすのだから。この用語は、通常、義肢や人工皮膚などの文脈で使用される)
バイオ・ミミクリーもバイオ・ミメティクスも、動植物や自然から学び、技術やシステムの開発に活かそうとすることであると。
私は、そう解釈した方がいいと思う。
私の価値観はこうであることを表した上で、矛盾するようではあるが、話を続ける。
全てのバイオ・インスパイアード・デザインが、バイオ・ミミクリーというわけではない。
バイオ・インスパイアード・デザインの中で私たちがよく遭遇する誤解は、バイオ・モーフィズムとバイオ・ミミクリーをとり違えるというものである。
morph(変形、変態)に ism でモーフィズム。
例)グラス・モーフィズムとは、半透明レイヤーやぼかしを組みあわせて、すりガラスのように見せる表現手法のこと。
伝わるかな。これは絵でしょ、ガラスじゃないでしょ。
視覚的に生命の要素に似ている(自然のように見える)だけなのか。機能に焦点を当てている(自然のように機能する)のか。
さすがに、この違いは見ていきたいところである。
この人たちはこんなにがんばってこれをつくった。何もしてない私が変なことを言って、ごめん。
人間が自然の形態に親近感を抱きがちなこともあり、美しく有益なものになる。本当に、一切、悪いことではない。
けど、やっぱり言うよ。私には私のしたい話があるから。
設計者が生物を参考にしたり天然素材を使用したからといって。その設計が生物模倣的であるとは限らない。
ここからは、バイオ・ミミクリーの実例を見ていく。
世界中にある数多の事例から、歴史的に特に重要なもの・有名なもの・逆にあまり知られていないもの・私が好きなものを書いていく。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、鳥の解剖学的構造と飛行をつぶさに観察した。メモやスケッチを数多く残した。
彼の研究は、後に、ライト兄弟に影響を与えた。
スイス人のエンジニアが愛犬と散歩に出かけた。ゴボウの実が愛犬にくっついて、なかなかとれなかった。
彼がこの日常の小さな出来事に興味をもち、熱心に調べ続けたことから。付けたり外したりが容易であるのに粘着性はない、という便利な商品が生まれた。マジックテープだ。
蚊は、血を吸うために非常に効率的に進化した生物である。物理的・化学的に刺す対象の感覚を鈍らせる、複数の針をもっている。
これを模倣して発明されたのが、注射の痛みを大幅に軽減する3本針だ。
ザトウクジラのヒレのデコボコが、抗力を3割減少させ・揚力を1割増加させることがわかった。
カナダの企業が風力タービンにこの模倣を導入したところ。従来の風力タービンよりも4割以上、効率をアップさせることに成功した。
粘菌は、単細胞生物でありながら非常に複雑な経路をマッピングする。エサを見つけるための情報を伝達することができる。
日本の研究グループは、模型上の日本の主要都市に対応するさまざまな場所に、粘菌のエサを配置した。人間が何年もかけて計画した(最適解と思われる)鉄道網。粘菌はわずか数日でこれを導きだした。
粘菌の高い能力を使って、最適なルートで建設できていたと確認がとれたようなもの。新興国における交通地図の作成などに応用できるだろう。
ナミビアの砂漠にて。過酷な気候の中で発見されたカブトムシの一種。この生き物は、体にある凹凸を利用して → 空気中から水分を集め → 水蒸気を凝縮させ → 口に運ぶという方法で、水を飲んでいる。
米国の企業がこれを応用。(詳細は省く)
私たちに気候危機と戦うための1つのストラテジーをもたらしたのは、砂漠に生きる小さな甲虫だ。
サメの皮膚は、真皮歯状突起と呼ばれるウロコでおおわれている。1つ1つに小さなV字状の溝があり、それらが乱流を打ち消す。
SpeedoとNASAがデザインした水泳スーツ(今は使用禁止となっている)は、多くの金メダリストを生んだ。
水の抵抗を考える時。直感的に、逆だと思う人もいるかもしれないが。私は、体をおおう布は少なければ少ないほどいいはずだとは思わない。こんなレベルの布なら。あなたの体のごく一部だけにうぶ毛が生えているのか。違うよね。
オランダの学者が、岩に生息し石灰岩を生成するバチルス菌という菌を発見した。
休眠状態のバクテリアと、エサの元になるポリ乳酸。これらをコンクリートに仕込む。コンクリートにひび割れが生じ、菌が湿気や空気にふれると、それは活動を再開する。
自己修復コンクリートの完成だ。バクテリアの寿命は200年。神話か。話がカッコイイ。
転倒は高齢者の死因の上位をしめている。職業関連死でもそうだ。足と床の摩擦を増やすことができれば、たったそれだけで、大勢の命を救うことができるということ。
MITなどが、素材をカットすることで、グリップ力の高い(35%)靴底を開発した。その切り目はヘビのウロコを模している。
500系新幹線の設計主任は熱心なバード・ウォッチャーで。
カワセミが水中に飛びこむ際、水しぶきがほとんど出ない点に注目。空気抵抗を極力おさえた先頭部分を開発した。フクロウの静かな翼と、アデリー・ペンギンの滑りやすい腹にも着目。コネクターをこれらに似せて開発した。10~15%速く・15%消費電力を削減した・より静かな新幹線が誕生した。
好きこそ物の上手なれ。
私たちはガラスが透明なことを気に入っているが。鳥たちにとっては大迷惑である。
人類は、5000年前にはガラスを発明していたが。自然界は、5000万年以上前にこの問題を解決済である。(自然パイセンすごすぎるッス定期)
巣にかかる対象として、クモは鳥を歓迎しない。クモの巣には紫外線を反射する糸が組みこまれている。これにならって開発されたのが紫外線反射コーティングのガラスだ。このガラスなら、人の目には透明で・鳥の目には見える。
いくらかかってもいいから、全部これにしたらいいと思う。自分で想像してみて。世界には透明な壁がたくさんあるなんて、怖すぎるだろ。誰も外出できないだろ。
ジンベイザメは平たく巨大な口をもっている。さほど動き回らなくても、プランクトンや小型の甲殻類を豪快に飲みこむ。
これを参考にしてできた海洋ゴミを回収するドローンは、16時間/日の稼働で最大200リットルのゴミを食べる。
これは解説が長くなるが。
エアコンの台数や稼働率が増え続けるのは、由々しき事態である。
シロアリの家は非常に風通しがよく、暑い地域でも涼しさを保つことができる。
ジンバブエのエンジニアがシロアリの塚を模倣して、建物の冷却に使用するエネルギーを10%削減した。
だいたいのネットにある情報は、ここで話が終わっている。
ある生物学者によると。シロアリの塚の内部構造は温度調節のためのものではない。(そういう効果があるとして、おまけ的なものである)
それは「呼吸」なのだという。肺のように、内部の通路を使って酸素と二酸化炭素の交換が行われているのだと。
実は、シロアリはこの塚に住んでいない。塚の2mほど下、地中に巣があるのだ。キノコ畑も一緒にある。農業をしながら暮らしているんだね。塚が「呼吸」をしているため、地中で窒息せずに済んでいる。
塚は、彼ら彼女らの拡張した外部器官のようなものなのではないか。
これを題材にして注文住宅のCMが1本つくれそうだ。シロアリは害虫ではないだとか、そんなセリフではじめる。
そのくらい、シロアリという種は素晴らしい。
シロアリは、環境の変化に応じて絶えず家を修復している。ホメオスタシス(恒常性の維持。例は発汗による体温調節)のようなものなのだろう。
また、シロアリの家には設計図などない。建築の最中、風の強さや土の固さを常に感知して、最適な選択を都度行っていく。言いかえると、完成など永遠にない。
これは相当、勉強になる。
一辺の長さが 1 1 2 3 5 8 13 21 (フィボナッチ数列)の四角形を並べると
渦巻き状に並べることができる。正方形の辺を半径とした円を描くと、螺旋が広がるため。
ちなみに。オウムガイの殻もこの黄金螺旋を描いていると言われているが。
対数螺旋ではあるものの。螺旋にそって中心から遠ざかる際、中心からの直線距離がより早く大きくなる程度を表す「ピッチ」が異なっており、必ずしも黄金螺旋ではないーーとの指摘もある。
自然界はフラクタルというパターンをこよなく愛している。
一部をぬき出しても全体と似た形になる「自己相似性」のことだ。
ロマネスコは明確なフラクタル図形をした野菜。右向きで8本・左向きで13本などの、螺旋状となっている。フィボナッチ数列の数だ。
どの部分をどの縮尺で見ても、三角形でつくられている。
これは海岸線。どれだけ拡大しても、複雑に入り組んだ形状が現れる。世界中の海岸線にこれと同様のことが言える。
直感的には理解できるものの。フラクタルの特徴を数学的に定義するのは簡単なことではない。
マンダラ。サンスクリット語で円(サークル)を表す言葉。
以下、マンダラの例。
胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)は、悟りの世界を表すマンダラだ。別名・大悲胎蔵曼荼羅(だいひたいぞうまんだら)。
胎蔵:母が胎内で子を守り育てること。
大悲:命あるものの苦しみを救う、仏のあわれみの心。
森羅万象が中央に座する大日如来から生じるという。
金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)は、智慧の世界を表すマンダラだ。
金剛:ダイヤモンド。
大日如来の智慧は、ダイヤモンドのように確固たるもので何ものにも屈しないと。
構図に、(フィボナッチ数列にも関連する)フラクタルとの近似性を感じずにはいらなれない。
全体の中に部分があり・部分の中に全体がある。それが繰り返され世界は構築されている。すなわち、全体と部分は調和している。
人類は、はるか昔から世界の本質を見ぬいていたのかもしれない。
マンダラってこんなにオシャレに表現できるんだ、と感心していた歌。信じない人はMVを観直して。こんなに円(サークル)を強調している映像はなかなかないでしょうが。
関連回の紹介をはさむ。
チョムスキーは言った。言語は雪の結晶のようなものだ、と。
雪の結晶は、気温や気圧などの条件への瞬時の反応として成立する。全体としては六角形でありながらも複雑な形に変わっていくため、全てが唯一無二の形なのである。
このように無限のバリエーションをもつが。その形成の過程が自然法則に則っていることは、絶対である。
推敲という過程を経ることもできる、書き言葉とは違い。話し言葉はナマモノである。その意味もあわせて、生成文法の本質を見事に表現している。→「言語は雪の結晶のようなもの」
話している内に自分の本当の気持ちに気づいた。泣くつもりなんてなかったのに話していたら涙が出てきた。そんなこともあるだろう。聞いてくれたり・反応してくれたりする相手によって結果が違ってくる。なんてこともあるだろう。
相互に影響しあうものだからね。
願わくば、雪解けのようにゆっくりと誰かの心をあたためたいものだ。
彼からもう1つ引用。
自然界には、廃棄物という概念そのものが存在しない。循環経済の考え方もバイオ・ミミクリーの事例と言える。
青い車が地球のことに聴こえてくる。おいてきた何かを一緒に見にいくと、心の落書きも踊りだすかもしれないらしい。いい歌だね。
「自然はこの問題をどう解決しているのか」という問いからはじまるが。ゴールなんてずっとない。シロアリの塚のように、ないのだ。
生態系は常に均衡を保っているように見えるが、その実、撹乱と変動の連続状態にあるからだ。
これは悲しい話ではない。真偽や善悪など越えたところで、語られる話かもしれない。
バイオ・ミミクリーの応用は無限大に近いかもしれないが。それは、私たちが抽出したり・収穫したり・家畜化したりできるものではない。
何十億年にもわたる「研究開発」の中。失敗したものは化石となった。残っているものに生きるコツがある。生態系には、私たちが生き残り繁栄するために必要な知識がたくさん隠されている。
再発明するのではなく。すでにあることから学び、真に理解すること。
世界を相互に深く結びつくものとしてとらえる時、私たちは、全ての種の未来を支えることができるかもしれない。
みんなで連鎖していこう。
私は動物と植物が好きだ。人間も好きだということだ。
あきらめたって無駄。このフレーズを3回は書いてきたと思う。あきらめることは本当に無駄なんだ。人間以外、誰も採用していない選択肢なのだから。
ちょうどスピッツで、もう1曲あうのがある。