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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2023年5月の記事一覧

保護者が手伝う前提の宿題

保護者が手伝う前提の宿題

最近、小学生の子供を持つ知人からよく聞く話が宿題の量が多い、親が手伝う前提で宿題が出されていて大変というものです。

どうやら全国的にもそうした傾向がみられるようです。

具体的な宿題内容宿題の内容としては私たちの時代からあったプリントはもちろんありますが、それだけでなく音読の宿題が非常に多いようです。

保護者は子供が読んだり、暗唱したりしたものを聞いて、チェック表にサインをして学校に持っていく

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教員になるつもりのない教育実習生の存在

教員になるつもりのない教育実習生の存在

学校のスケジュールとして、入学や新学期の喧騒から落ち着いた雰囲気となる5月の後半から6月にかけては教育実習の時期となります。

私の勤務校や近隣校でも実習時期のようですし、どうやら全国的にも同様のようです。

教育実習生の本音教育実習に行く前に大学では事前指導が行われていますが、その中で強く注意されたことがあります。

内容としては「採用試験を受験しない」、「教員になる予定はない」、「就活をしてい

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「臨時免許」の乱発は教員不足解決の“切り札” となり得るか。

「臨時免許」の乱発は教員不足解決の“切り札” となり得るか。

教員不足が全国的に深刻化する中、「臨時免許」を乱発する自治体が増加しています。

より正確に言えば、これまでも非公式にはかなりの数が出されていたものが、教員経験の無い人間や他校種の教員にも乱発する状況となった、というものです。(これまでも過疎地の学校においては一人の教員が複数の教科を免許外で担当する事例は少なくありませんでした)

しかし、こうしたやり方が果たして教員不足解決の”切り札”となり得る

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古典を学ぶ意義は入試という箱庭から出ることで見出せる

古典を学ぶ意義は入試という箱庭から出ることで見出せる

ここ最近、古典教育に関しての賛否を発信する有名人が増えています。

その中でももっとも有名なアンチ古典教育論者がひろゆきこと西村博之氏です。

彼は教育や古典に関しては当然ながら素人ですが、素人目線、あるいは実社会からの立場から現代の古典教育を否定的にとらえています。

これは記事中にあった、ひろゆき氏がツイートした言葉の引用です。

彼の主張をまとめると以下のようになるでしょう。

古典は現代に

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タブレットがただの連絡帳になっているという批判は的外れ

タブレットがただの連絡帳になっているという批判は的外れ

GIGAスクール構想によって日本中の小中学生にタブレットが配布されました。

これによって日本中の学校でICTを活用した教育が行われるようになると期待されていました。

しかし、その活用具合は自治体単位、学校単位、クラス単位で大きく異なるようです。

授業における積極的な活用リンク先の記事にもありますが、体育の指導において動画を撮影し、そのプレイの様子を確認する、といった活用がされている学校があり

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「データサイエンス学部」は現代における「教養学部」

「データサイエンス学部」は現代における「教養学部」

大学の学部設置にもトレンドがあります。

コロナ前の10年ほどは「国際」の名前がついた学部が流行っていました。

経済や流通がグローバル化し、英語ベースでの取引や英語文化圏の前提知識を持つ人材が求められたことがその理由でしょう。

大学側としても既存の学部の内容に国際系のカリキュラムを増やしただけで志願者が増加したということもあります。
(実際、それまでの既存学部で国際的な学びを行っていないわけで

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勉強時間の見えない蓄積

勉強時間の見えない蓄積

成績の良い生徒の特長に関するまとめ記事は定期的見かけるものの一つで、おそらく世間の人の興味関心の高い内容なのだと思います。

この記事は「「超」勉強法」で有名な野口悠紀雄氏のものですが、ここでは成績が良い生徒は重要なことに集中する、という旨を述べています。

「重要なこと」はどう判断するかこの主張自体は間違いではないでしょう。しかし、問題は「重要なこと」と「重要でないこと」をどう判断するのでしょう

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「修学旅行」という形式と現代社会におけるミスマッチ

「修学旅行」という形式と現代社会におけるミスマッチ

修学旅行の是非に関する話題がABEMAでニュースになっていました。

5月8日から新型コロナの取り扱いが「5類」に移行することで、多くの学校では本年度からは運動会などの行事を通常通りの再開が計画されているようです。

その中でも再開のインパクトが最も大きなイベントは「修学旅行」でしょう。

「修学旅行」の意義「修学旅行」の目的とは何でしょうか。

学校外の遠方、特に文化圏の異なる場所に出かけること

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「とりあえず大学に進学する」という選択肢はあながち間違いではない

「とりあえず大学に進学する」という選択肢はあながち間違いではない

進路指導を行う上での基本は志望動機をしっかりと持たせる事です。

何を学びたいか、何になりたいか、あるいはどの様な生活環境を望むかといったことをきちんと調べ、比較し、検討した上で進路を決定する事が理想的な進路選択でしょう。

絵に描いた餅こうした進路選択は理想を言えばの話です。

都会に生まれ、生活圏に多種多様な職業やライフスタイルが視界に入ってくるのであれば、そこから選ぶ事は難しくないでしょう。

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教員免許は専門性が無い紙切れか

教員免許は専門性が無い紙切れか

学校の教員なんて誰でもできる、という言い方をする人は少なくありません。

これは自民党の教員に対する奨学金の返済免除に関するニュースへのツイートです。さらにこれに以下のような連ツイがされています。

教員の筆記試験的な学力そもそも教員の能力に関して、これは十把一絡げに論ずることは難しいでしょう。

多くの学歴至上主義者や偏差値万能論者は、上のツイートの意見に近い考えを持っているのではないでしょうか

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教員に「精神疾患の親を持つ子ども」をケアさせようという要求は無理筋

精神疾患の親を持つ子供に気づき、寄り添ってほしいという教員への要望とそうした事例の啓発動画のネット記事を見かけました。

教員の職務こうした生徒の精神的なケアをすることは教員が抱える多くの職務のうちの一つではあります。

しかし、あくまでも「生徒の」精神的なケアであり、それもメインの業務なわけではありません。

そもそも教員は生徒を評価しなければならない立場であり、その意味では本質的に生徒とは対立

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教員給与の上乗せ2.5倍案はニーズを無視した老人のロジック

教員給与の上乗せ2.5倍案はニーズを無視した老人のロジック

教員不足が全国的に広がっています。

県によってはすでに採用試験がほぼ1倍となっているところもあり、学校によっては担任不在のまま新学期を迎えるといったクラスもあるようです。

そんな中、教員不足改善案として与党の試案が上がっています。

具体的な内容以下、記事の引用です。

一般の教員に関わる内容としては以下の3点です。

教職調整手当を基本給の10%以上に引き上げ

学級担任手当の創設

残業時

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「得意科目」を作ることは勉強のコツだが、こだわりすぎないことも重要

「得意科目」を作ることは勉強のコツだが、こだわりすぎないことも重要

生徒面談の中で話題になることの一つが「得意科目」、「苦手科目」に関してのものです。

「得意科目」が無い生徒の悩みや、「苦手科目」の克服に関する話は多くの受験生が抱える大きな問題です。

「苦手科目」つぶしよりも「得意科目」を伸ばす方が効果は高い受験勉強において最も不安になることの一つは「苦手科目」の存在です。

特に英語や数学といった配点の高い科目の場合、全体に与える影響も大きいことから、苦手を

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日本は私立大学が多いため貧しい人が大学に行けない、という大ウソ

日本は私立大学が多いため貧しい人が大学に行けない、という大ウソ

先日、日本は私立大学が多いために貧しい人たちが大学に行けないのだという記事を見かけました。

記事の中身を見てみましたが、明らかに間違い、誤り、勘違い、あるいは意図的な誘導が目につくため、記事を読んでの私の個人的な考えや感想をまとめておきます。

日本は私立大学が多いという真実まずは記事の中における正しい部分を確認していきます。

記事の主題である私立大学の数に関していえば、これは間違いなく諸外国

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