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教員になるつもりのない教育実習生の存在
学校のスケジュールとして、入学や新学期の喧騒から落ち着いた雰囲気となる5月の後半から6月にかけては教育実習の時期となります。
私の勤務校や近隣校でも実習時期のようですし、どうやら全国的にも同様のようです。
教育実習生の本音
教育実習に行く前に大学では事前指導が行われていますが、その中で強く注意されたことがあります。
内容としては「採用試験を受験しない」、「教員になる予定はない」、「就活をしている」、「内定している」といったことを実習先では決して口にしないようにというものです。
当時は教員過多だったこともあり、万が一のリスク(採用担当者の耳にどこから入るかわからない)という事情もあったのかもしれません。
実習先の学校や指導担当者は時間を割いてくれているのだから失礼にあたる、といったことを言われた記憶もあります。
どうやら教員の間でもそうした認識は不文律として存在するようです。
【速報】
— なぎ(仕事の虫と化しました…) (@rGGA7iCmYrAifB3) May 25, 2023
我が校に来た教育実習生、
実習初日に教員になるつもりがないことを公表し、ベテラン教員を黙らせる。
これは先日見かけたツイートです。
どうやら現代においても教員になるつもりである人しか歓迎されないようです。
実習先や指導担当者に失礼なのか
まず、教員の間で共有されている「失礼」ということに関して考えます。
教員免許は教員として教壇に立つ、教科指導を行うことに対して必要な免許です。
しかし、一方で教員免許を取ったからといって教員にならなければならない理屈はありませんし、免許取得者に対して教員という職業を斡旋しているわけではないですし、そもそも教科によっては募集をかけないものも存在します。
つまり、教育実習はあくまでも教員免許を取得するために行うものであって、教員になるために行うものではない、ということです。
また、指導担当者に関して考えると、業務量が増加するのは事実です。しかし、教員免許の制度が現場に実習を丸投げしている以上はあくまでも業務にあたります。
実習生が教員になるつもりがあるかないか、ということは無関係で、実習指導は仕事なのです。負担が増えることに対しての問題は自治体や法人がその分の手当をもって対応すべきことであって、実習生側に嘘を強要することではありません。
実習生側としても受け入れ先に対して社会人としてのマナーや常識、礼儀をもって対応することは当然ながら求められます。
しかし、教員になりたいと自分の意思や状況を偽ることが礼儀にあたるとは思えません。
(もちろん自分から吹聴するのはどうかと思いますが、聞かれたときには正直に答える分には失礼とは言えないでしょう)
免許更新制度の反省を踏まえていないのは現場の人間かもしれない
加えて、現在の教員採用状況からも分かるように教員志望者は減少し続けています。
こんな状況の中で本当に教員を志す学生はどれほどの数存在するでしょうか。
さらに現代社会は特定の企業に終身雇用で一生務めるというモデルが崩壊しつつあります。
そうであれば、仮に現在は教員になるつもりのない人材であったとしても、今後10年、20年を見据えて教員免許取得者を増やすことは教育の継続性を考える上で極めて重要です。
教員免許更新制度の最も大きなミスは教員への負担ではなく、潜在的に教員になる可能性のあった免許取得者を教員労働市場のマーケットからはじき出し、市場規模を縮小させたことです。
教員自身が終身雇用を前提とした硬直化した思考しかできず、なおかつ教員免許更新制度に関して主観的な批判のみで客観的、俯瞰的な制度への理解が不足しているために、実習生の生の意見に対して忖度を要求してしまうのではないでしょうか。
教育実習は必要か
とはいえ、そもそも教育実習という制度が果たして必要かどうか、個人的には疑問に感じています。
もちろんインターンシップなどと同様に業界の仕事内容や実際の現場を見ることは学生にとって大きな刺激になり、学びにもなるでしょう。
しかし、それは本当に免許取得のための要件とすべきことでしょうか。
教員は4月に初任者として赴任してすぐに教科を担当し、クラスを担任するということが少なくありません。
一方で民間企業で入社すぐに客前に一人で立たせ対応させるような業種はほとんどありません。
これは教員界隈が現場での指導を放棄し、新人を使い潰していることの顕著な例であり、その基本的な指導を教育実習というシステムに依存しているために可能としています。
しかし、本来こうした実習は雇用先が責任をもって賃金を支払いながら行うものであって、免許を餌に無料でさせるべきことではないものです。
そろそろ教育実習の制度ややり方、あり方に関しても精査すべきなのではないでしょうか。