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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年7月の記事一覧

職務上の過失で個人に賠償責任を負わせるという悪しき前例

職務上の過失で個人に賠償責任を負わせるという悪しき前例

毎日暑い日が続いています、我が家でもビニールプールが活躍する時期となっています。

さて、この時期学校のプールの水を止めていなかった、という話題が目に付くようになります。

プールの管理に関する「過失」こうしたミスは過去にも、そして全国的に頻繁に起こっているようです。

Googleで検索をかけるだけでも相当な数の事例が上がります。

Yahooコメントなどでは「蛇口をひねることもできないのが教師

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ICT教具論者はICT導入に学力向上の夢を見る

ICT教具論者はICT導入に学力向上の夢を見る

前回からの緩い続きになります。

ICT導入反対論者の論拠に多いのが、「教育効果が低い」、「教育効果が向上するエビデンスが得られていない」といったものがあります。

今回はこれについて考えていきます。

ICTによる教育効果とは文字通り、ICT機器を用いた授業や学習によって得られる学力の伸びのことです。

ICTを導入することで、生徒の興味をひいたり、授業の効率化が図れるとする教員の意識調査にも表

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「ICTを使えない」という言い訳を許さない強い意志を持とう

「ICTを使えない」という言い訳を許さない強い意志を持とう

ICT環境がこの数年で教育現場にも整備されました。

他業種と比べて遅すぎた感もありますが、GIGAスクール構想などの前倒しの効果は絶大で、日本中の学校でICT機器を導入できたことは社会全体の環境改善として大きな一歩と言えます。

私は勤務校でICT推進に携わっており、授業での活用だけでなく日常利用に関しての実験を行うなどICT教育の普及に取り組んでおり、校内においての利用も大きく進んでいます。

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なぜ進学校の教員は浪人を勧めないのか

なぜ進学校の教員は浪人を勧めないのか

私は私立高校の教員をしています。私の勤務校でもそうですし、いわゆる「自称進学校」と呼ばれる学校の先生の多くは生徒が現役で進学することを勧める傾向があります。

こうした傾向に対し、YouTubeやSNSなどで「生徒の気持ちを分かっていない」、「視野が狭い教員だから地元の国立しか知らない」、「予備校に手柄を取られたくないのだろう」といった批判が多いようです。

しかし、浪人を勧めないという理由はそう

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「リモート面談」が捗り過ぎる

「リモート面談」が捗り過ぎる

私の勤務校では夏休み期間に課外授業が行われます。

昨日、終業式が終わり、課外授業は来週からというこの数日は主に面談を実施するために使われています。

夏は山だ、海だ、三者面談だ夏と言えば三者面談の時期です。

高校生のこの時期の三者面談は、高1の場合は初めての高校生の夏休みの時間の使い方や先取り学習を中心に話します。

高2の場合、受験に向けての具体的なスケジュールと数学と英語の範囲学習や文法語

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「カルト宗教全否定」という教育の敗北

「カルト宗教全否定」という教育の敗北

安倍元総理の暗殺事件以降、様々な憶測が錯綜しています。

与党の中に特定の宗教団体と深いつながりのある人物がいる、支援を受けているなどの話があふれています。

そんな中で「○○教が与党を支配していたことがわかりました。」、「すべてのもやもやがすっきりしました。」といった感想を書いている人が結構な数います。
(Twitterの教員アカウントにもかなりの数がいるようです)

そのことに関しての警鐘的な

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「教員のにおいがしない」学校行事

「教員のにおいがしない」学校行事

ここ最近よく歌を聞いている歌手の方がいます。

「早希」さん、という女性ボーカリストです。

シンガーソングライターでもあります。

ソロ活動だけでなく、ソニーミュージックの若手アーティスト集団「ぷらそにか」にも所属するほか、「Love Harmony’s, Inc.」というアカペラグループでも活動をされています。

その早希さんが出演する彼女の高校時代の文化祭の生徒作成動画の出来が非常の良いので

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日本の教育に新風を吹き込む(かもしれない)学校

新指導要領や小学生の英語必修化、PBLやアクティブラーニング、入試改革など日本の教育制度を変えようとする動きが盛んです。

もちろん、日本中の地域の小中高校でも名もない学校が独自の取り組みや改革に挑戦しているのは想像に難くありません。

しかし、そんな中でも非常に特色のある教育を行っている学校が近年は増えています。

教員を職業とする人間として、あるいは就学前の子供を持つ保護者として興味深い新設(

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 超進学校に見る「社会的学習理論」をいかに普通の学校に持ち込むか

超進学校に見る「社会的学習理論」をいかに普通の学校に持ち込むか

超進学校という存在が世の中には存在します。

私の住む九州では「久留米附設」などがその代表例でしょう。

全国で言えば、「灘」、「開成」、「筑駒」、「日比谷」、「北野」など私立、公立を問わず超進学校と呼ばれる学校は数多く存在します。

東大や京大、医学部などの合格者を多数輩出する学校でもあります。

では、どうしてそういった学校は優れた進学実績を誇っているのでしょうか。

「カリキュラムが優れてい

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「正しい勉強法」は存在しない

「正しい勉強法」は存在しない

高校教員の仕事をしていると、最も生徒から相談される内容は「正しい勉強法」についてです。

巷にあふれる勉強法の書籍世間には勉強法の本があふれています。

有名どころで言えばやはりこの名著は欠かせないでしょう。

受験数学を「暗記数学」と言い切ったという点において非常に評価の高い著作です。

自身の受験勉強の体験だけでなく、指導者としての経験を踏まえた上で書かれた点から客観性と再現性の高い内容です。

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「ICT教具論」からの脱却

「ICT教具論」からの脱却

一斉休校からのGIGAスクール前倒し実施により、日本中の小中学校ではすでにICTが導入され、一人一台が実際に実現しました。

しかし、学校における実質的なICTの活用状況は道半ばといった状況のようです。

その原因の一つが根強い「ICT教具論」の存在です。

「ICT教具論」とその欠点「ICT教具論」はICTの設備や機器の利用に関して、主に授業において教員の管理下で利用しようという考え方です。

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「カリキュラム・マネジメント」不在とそこから生まれる「共通テスト批判」

「カリキュラム・マネジメント」不在とそこから生まれる「共通テスト批判」

2回目の実施を終えた共通テストの評価分析報告書が最近になって公開となり、それに伴ってネット言論上には試験直後と同じようにテストの批判を見かけるようになりました。

もちろん共通テストの欠点も存在します。

従来と異なる得点帯型で設計されたにも関わらず、従来型の得点方式でそのまま利用しているため、得点分布に偏りが見られるなどはその典型例です。
(おそらく構想段階では得点分布帯での利用であり、CEFR

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「学校が楽しくない」という生徒

「学校が楽しくない」という生徒

「学校が楽しくない」という相談を受けることがあります。

直接本人から相談されることもあれば、保護者から間接的にそういった話を聞かされることもあります。

もちろん、楽しくないというのが暴力やいじめに類する行為であれば、しかるべき処置を速やかに行います。

しかし、これらの相談の多くはそうではないように感じます。

「学校が楽しい」という幻想ドラマやアニメ、漫画から、あるいは充実した学校生活を送っ

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