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大人になってASD(アスペルガー)だと自覚した人へ

さて本日は、アスペルガー症候群について書いてみようと思います。というのも、最近このような記事を見かけたからです。

「アスペルガー症候群」という言葉は広く知られていますが(未成年世代がどうかは分からない)、個人的な意見として、その具体的な症状について正しく理解している人は意外と少ないと思います。なぜなら、人々がその言葉を用いているシーンを観察すると、当人のことを馬鹿にするような差別的ニュアンスが強調されているように感じるからです。

私はこれまで度々アスペルガー症候群に関する記事を書いてきました↓。(ちなみに「アスペルガー症候群」という名称については、2013年以降「ASD(自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症)」に統一されています)

これらの記事ではいずれも、私がASDであるという自覚を持ち始めた頃のリアルな心境を書いています。また、特性を生かすにはどのような職業が向いているといわれているのかということも整理しています。

それから約3年が経過しました。季節の変化のように、1時間や1日単位では気がつきにくいものの、こうして年単位で振り返ると、自分の精神面も結構変化しているのではないかと思います(なんだか進化した気分!)。今回はそうしたことにも触れていきます。


アスペルガー症候群について簡単におさらい

アスペルガー症候群には大きく分けて「コミュニケーションの困難」「対人関係の困難」「こだわりが強い」という3つの困難があります。

<コミュニケーションの困難>
会話は表面上問題なくできるが、行間を読むことが苦手。言葉をそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の発言を勘違いしやすく、傷つきやすい。
具体的な特徴としては、曖昧なコミュニケーションが苦手だったり、言い方のキツい不適切な表現をしてしまうことがあります。また複数の人がいる場面だと誰に対して発言しているのか分からなかったり、相手や環境の変化に気づかないことがあります。耳から入ってくる情報の処理が苦手なため、会話についていけないといった症状もあります。

<対人関係の困難>
場の空気を読むことや相手の気持ちの理解やそれに寄り添った言動が苦手。そのため、場にそぐわなかったり、自己中心的と思われたり、相手を傷つけたりするような発言をして、周囲の人から顰蹙をかうことがあります。そのような理由から対人関係を上手に築くことが難しくなることがあります。

<こだわりが強い>
一旦興味を持つと過剰といえるほど熱中し、他のことが目に入らなくなったり、自分の興味のあることをずっと喋り続けるといった傾向があります。したがって同時に色んなことを考える必要があるマルチタスクは苦手です。また、法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。その法則や規則が崩れることを極端に嫌うので、マイルールにこだわって、自分が決めた予定が変更になったりすると混乱します。物事の一部分にこだわり過ぎるあまり全体像を把握することが困難な人もいます。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともでき、興味のある物事に関しては、多くの情報を記憶したり、説明したりすることができます。

このような症状により、人付き合いを避け、自分ひとりで好きなことに没頭することを好む人が多いこともアスペルガー症候群の特徴の一つです。

障害により、アスペルガー症候群の人たちの中には生きづらさを感じ、うつ病や不安障害などの二次障害を引き起こすことがあります。二次障害からさらにパニック障害や社会不安障害、統合失調症などを発症する恐れもあります。二次障害は時間の経過とともに悪化することが多いため、できるだけ早く対応することが望ましいとされています。

本人は「周りとうまくやれない」「努力しても報われない」と思いがちですが、それは能力の問題ではなく脳の特性によるものであり、事実としてイーロンマスクのように突出した能力を持つ人も多いです。特に下記の領域では、能力を存分に発揮できるといわれています。

「専門性」 → 研究職や専門職、クリエイティブな仕事
「論理的思考」 → IT、数学、会計、データ分析などの分野
「繊細さ」 → デザイン、品質管理、編集作業など

あなたの能力が低いのではなく、活かせる場が違うだけと考えるべきです。

自分の特性として受け入れるにもエネルギーが要る

冒頭で紹介したいくつかの記事を自分でも読み返したのですが「これまで感じてきた生きづらさの原因が分かって歓喜!」と言いつつも、どこか少し動揺していました。その証拠に、かなり色々情報収集をして、わざわざ記事にまとめています。笑

ポジティブな心理状態でいられるように、症状への理解を深め、自分自身を知る必要があったからです。

前を向くために必要なのは「ありのままの自分を受け入れること」であり「完璧であることを諦めること」です。

そして新たな一歩を踏み出す

アスペルガーだと自覚し安堵したのは事実です。そして今までの3年以上もの間、自分の特性を生かせる環境に身を置くことに全集中しました。これは自己投資です。

株式投資の世界では「一度インデックス投資を始めたらあとはほったらかすだけ」が万人向けの勝ちパターンですが、同じ考え方です。「アスペルガーの人は身の回りの環境を整えて、あとは目の前のことに集中するのみ」です。それだけで、他の人には太刀打ちできないような圧倒的な成果を残すことができます。

自分に合った環境を整える
→ 静かな場所で仕事をする、一人で作業できる時間を確保するなど
周囲に伝えることで理解を得る
→ 自分の苦手なことを正直に伝え、助けを求める
得意分野を活かせる道を探す
→ 仕事や趣味で「好き」を突き詰める

「みんなと同じ」である必要はありません。むしろ積極的に「みんなと違う」戦略を取ったほうが結果的に良いかもしれません。

まずは生き方を問い直すところから

さて、これまで「自分のことを知る」のが大事という論調で話してきましたが、注意点があります。

私の考えとして、大前提、自己評価は全くあてになりません。むしろ、なるべく控えるべき行為だと思っています。理由は下記記事を参照。

自分はこういう人間だ!と断定することは、アイデンティティ確立や自信向上に寄与する一方、自分の未知なる可能性を制限する側面があります(ラベリング効果)。要は、結構ハイリスクだったりするのです。

たしかに発達障害をはじめとして、あらゆる障害で生活に困難を感じている人にとっては、紛れもない経験として体に刻み込まれているはずです。「自分はこういう扱いを受ける側の人間なんだ…」と痛感させられる経験を、嫌というほどしてきましたよね。

しかしそこで、自ら「私はそういう人間だから」と決め込む必要性は全くありません。他者評価は他者評価、それはそれ、です。「言うのは簡単だよね」と思われるかもしれませんが、承知の上で書いています。私も当事者ですから。

ではどうすればよいのか。

「どうしてできないんだろう」と自分を責めるのをやめ、「自分はこういう特性があるから、それに合わせていこう」と考えることです。雨が降ったら傘をさすように、段差があったら足を上げるように、自分の特性に合わせて行動を変えていけばよいのです。その習慣が身についたとき、心はきっともっと楽になります。想像してみてください。

明るい未来しか見えないはずです。


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