マガジンのカバー画像

連載中無料小説|紬(長編恋愛小説)

37
バンド仲間の死を契機に投げやりな生活を送っていた桐山奈月。大学病院の口腔外科で歯科医師として勤務していたが、女癖の悪さから学生に手を出しクビになる。奈月は流れ着いた精神病院の歯科…
運営しているクリエイター

記事一覧

無料連載小説|紬 0話 プロローグ

人間は、死ぬよりも正気を残して壊れてしまった方が辛いようだ。精神が破壊されたことによる苦…

白瀬隆
1か月前
1

無料連載小説|紬 1話 女

大学病院の口腔外科に勤めていた頃、六月の雨除けにはレザージャケットを使っていた。昔ライブ…

白瀬隆
1か月前

無料連載小説|紬 2話 ロングアイランドアイスティー

便利な酒と不便な酒がある。テキーラをショットで飲ませて女を潰すためには、何かしらのゲーム…

白瀬隆
1か月前

無料連載小説|紬 3話 紬

私の高校生活は、一年生の途中までは平凡だけど素晴らしい青春時代だった。入学してしばらくは…

白瀬隆
1か月前
1

無料連載小説|紬 4話 教授

俺はラブホテルのシャンプーの匂いを漂わせながら医局のロッカーで着替えていた。となりで同期…

白瀬隆
1か月前
2

無料連載小説|紬 5話 高校一年生

入学してすぐの私は女の子らしく、弾き語りに挑戦しようと思っていた。妹の麻穂はピアノを習っ…

白瀬隆
1か月前
2

無料連載小説|紬 6話 精神科病院

四葉病院の院長と理事長を前に、俺は応接室のソファで善人を演じている。 「桐山先生みたいな好青年が来てくれたら、入院患者さんが押しかけるかもしれませんね」 「とんでもない。でもたくさんの患者さんが来てくれたら嬉しいですね。失礼ながら医科の入院患者さんというのは口腔内の衛生状態が悪い方が多いですから、やり甲斐があります」 嘘だ。患者なんて来ない方が楽でいい。だが二人はうなずいている。 「それでは、先生のご希望通り八月から勤務していただきたい。いかがでしょうか?」 「ぜひお願

無料連載小説|紬 7話 閉鎖病棟

私は20歳の12月に首を括り、救急病院を退院してからは半年と少しの間は何もない個室に閉じ込め…

白瀬隆
4週間前
2

無料連載小説|紬 8話 大麻

仕事が決まったらまず友達に報告しなければならない。祝いをせしめるためだ。しかし私生活が狂…

白瀬隆
4週間前
4

無料連載小説|紬 9話 中古車

精神科病院というところは郊外にあることが多い。あまり人目につかない方が患者も通いやすいだ…

白瀬隆
4週間前
7

無料連載小説|紬 10話 ベランダ

閉鎖病棟には共用のベランダがある。雨の音を聞くのは好きだったから、一日のほとんどをそこで…

白瀬隆
4週間前
10

無料連載小説|紬 11話 歯科診療室

電子カルテの使い方は覚えた。主要な精神科疾患の文献も読んだ。「ご家族のために」と書いてあ…

白瀬隆
4週間前
2

無料連載小説|紬 12話 流行

八月になると暑さも本格的になってきて、ベランダにいるメンバーも減っていった。私を含めて3…

白瀬隆
4週間前
1

無料連載小説|紬 13話 観光

「奈月先生って呼んでいいって言われたの!」 「いいなー!私そこまでグイグイいけなかったよ」 2人は観光旅行気分で行った歯科受診の感想で盛り上がっている。次の話題は予想がつく。私の診察だ。美優さんに聞かれた。 「紬ちゃんは?」 返答に困ったけれど、何か言ったら大変だ。 「口の中をお掃除してもらって帰ってきました」 2人の中では大人の女に魅力を感じる歯医者さんという結論が出ていた。現実は違うけれど。 美玖が鬱陶しそうにため息をついた。 「奈月先生、今日は3人も患者が入ってますよ