無料連載小説|紬 7話 閉鎖病棟
私は20歳の12月に首を括り、救急病院を退院してからは半年と少しの間は何もない個室に閉じ込められていた。布団しかない四畳半。そこでミトンと呼ばれる手袋をつけられ、手も自由に動かせない状態で転がされていた。どれだけ泣き喚いても無駄だと思い、途方に暮れたところで落ち着いてきた。やっと話ができるようになり、解放された。解放されたといっても出入り口に檻がある病棟の個室だったけど。
出入り口に檻があると聞けば、閉じ込められていると感じると思う。だけど案外そうは感じない。むしろ外の世界で味わってきた地獄の苦しみを遮ってくれているように感じる。それに私がいる閉鎖病棟は落ち着いていれば院内の売店に行くことや、ちょっとした散歩をすることだってできる。だから私は大好きな飴である純露を片手に一日一回、院内をうろうろしている。そしてお気に入りの窓辺の長椅子に座り、外を眺める。最近は雨が続くせいで憂鬱なことばかり考えてしまうけれど、今日は高校生の時のことを思い出している。麻穂のことを思い出すとやりきれないけれど、大学生になってからの異常者になった私のことを思い出すよりマシだ。
奈月、汚い私でごめんなさい。昔は綺麗だったんだよ?奈月も自分のことを同じように言うよね。人生で一番愛する人と出会ったときに、汚れきってるなんて悲しいね。奈月は手を繋ぐとき必ず笑顔を見せてくれるけど、私はいつも思う。その笑顔にどんな顔を返したらいいか分からないよ。