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無料連載小説|紬 4話 教授

俺はラブホテルのシャンプーの匂いを漂わせながら医局のロッカーで着替えていた。となりで同期が着替えている。

「奈月、その革ジャン何だよ?黴生えてないか?」
「女を引っ掛けるのに使うルアー」
「革ジャンで女が引っ掛かるのか?」
「雨の日はな」

俺の愛想のなさに同期は気分を害しながら更衣室を出ようとしたところで、俺を手招きした。

「教授が呼んでる。礼儀正しくしろよ」

教授室に入ると、定年間際の教授が頭を抱えていた。これ以上ハゲようもない。何をそんなに心配することがあるんだ。

「桐山君、何で呼ばれたか分かるね?」

分かるか、ハゲ。

「何人の学生に手を出したんだ」

知るかよ。一見さんばかりだからな。

「来月、七月いっぱいで辞めてもらう。歯学部生に手を出すような職員をおいてはおけない」

急だな。どいつが歯学部の学生だったんだ?クビ?こんなに手軽に女が釣れる池はそうないんだぜ?

「残念だけど、歯科医院での勤務は諦めた方がいい。大学を追放された人間を雇うところはない」

ああ、俺は追放されるのか。これまでに追放された人間を一人知っている。二人の女性歯科医に同時にストーキングするという器用な真似をして、ストッキングを盗んだドクター。俺はこのレベルのことをしたのか。俺の方は極めてノーマルなセックスなのにな。

俺は教授に頭を下げて部屋を出た。

職探しといえばネットだ。しかし教授が言う通り、俺がここで歯科医として働ける可能性は低い。ダブルストーキング男も現在は介護士をしている。

ただストーキング先生と俺には違いがある。俺は口腔外科医だ。一般の医科の病院内にある歯科であれば採用される目はある。医科の病院はあまり大学の歯科と関係がないからだ。実際そういった病院からの紹介状を受け取ったことはない。さらに俺たち口腔外科医は病院歯科のプロだ。俺は歯科がある病院をしらみ潰しに探した。すると一件の求人が出てきた。

「四葉病院 歯科医師募集」

詳しく見てみると、四葉病院は精神科のみの病院らしい。いわゆる姥捨山か。ここで何をするんだ?贅沢を言う気はないが待遇も気になる。そこで給与を見ると、無機質なフォントで記載があった。

「年収1000万円」

即座に俺は電話をかけた。

俺は大学を女癖の悪さのせいでクビになったことよりも、引っ掛けられた女の中に紬みたいな女がいたんじゃないかと思ったところで自分の愚かさに気付いた。ただ寂しいだけの女は馬鹿だ。だが、紬はそうじゃない。

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