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無料連載小説|紬 3話 紬

私の高校生活は、一年生の途中までは平凡だけど素晴らしい青春時代だった。入学してしばらくは順風満帆な青春で、部活や勉強、友達、そして恋愛をバランスよく経験していった。勉強は特に優れていたわけではないけど人並みに努力したし、双子の妹とアニメの影響で入った軽音楽部では友達や先輩と楽しく活動ができた。そして先輩の中の一人とは恋人と呼ばれる関係になった。初めての会話でいきなり告白されるっていうのも高校生らいしいのかなと思う。

「紬って何て読むの?」
「つむぎです」

今思えば、不自然な話しかけ方だ。そのあと突然、紬と名前で呼んでいいかと聞かれた。私は先輩に憧れていたから、喜んでうなずいた。その後、彼はぶっきらぼうに続けた。

「好きだから付き合ってほしい」

ありふれた告白だけど、私にとって新鮮だったからはっきりと覚えている。新緑の匂いが混じった校舎の裏、駐輪場でのことだ。彼は校舎の壁にもたれかかり、私は自転車を背に緊張していた。告白されて付き合い始めてからは、その先輩の好きなアーティストを好きになろうとする、よくいる高校生の彼女として私は幸せに暮らした。結局半年くらいで別れることになったけど。誰に話してもつまらないありふれたもの。それが私の初恋だった。

先輩は少し変わった人だった。他の人たちに合わせてテレビで流れている曲を演奏していたけど、海外の古いバンドを好んでいた。こんな話もありがちだと思うけど、先輩とたくさん話をしたかったから海外の古いバンドの曲をたくさん聴いた。私の好きなバンドがアリス・イン・チェインズだと言えば、人によっては喜びながら笑ってくれるんじゃないかって思う。90年代に流行した、グランジという色々あるロックの中の1つに分類される人たち。少なくとも女子高生が聴くようなバンドじゃない。

私は音楽性こそ人とずれていたかもしれないけど、普通の女の子だった。だけど結局首を括り、普通じゃなくなった。そして異常者になった私を奈月は抱きしめた。

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