浅原録郎

静岡県焼津市在住。歴史や思想、哲学的な理解に役立つ内容を中心に書いています。機械技師→自営業、京大教授久松真一先生のFAS協会参加。宗教学や近代哲学を学ぶ。宗教学やキリスト教弾圧に因む「光あてられし者」の他6冊著作。小泉八雲研究者。 武蔵工大精密切削理論特別修学コース卒

浅原録郎

静岡県焼津市在住。歴史や思想、哲学的な理解に役立つ内容を中心に書いています。機械技師→自営業、京大教授久松真一先生のFAS協会参加。宗教学や近代哲学を学ぶ。宗教学やキリスト教弾圧に因む「光あてられし者」の他6冊著作。小泉八雲研究者。 武蔵工大精密切削理論特別修学コース卒

マガジン

  • 無意識を意識する 4

    意識や無意識の不思議に迫ります。意識の哲学的意味や生理的働きにも素人ながら分析したものです。素人だから目に鱗的なものがあると思います。

  • 歴史の見方

    機械技師から自営業に転身後京大教授だった久松真一先生の創設した京都FAS協会に参加、宗教学や近代哲学、仏教哲学を学ぶ。機関紙『風信』へ宗教哲学や歴史雑感等多数投稿。Amazonnにて印刷本、Kindleを数冊出版。

最近の記事

宇宙生命と超越論的生命

「哲学の動機は「驚き」ではなくして深い人生の悲哀でなければならない。」 地球からの距離が200億 光年以内の宇宙は、物理 学上では可視的宇宙であり、これより遠い、いわゆる 「宇宙線」のその向こうは、人類の感知 できない世界であるというがそれは私たちの感覚上理解できることだ。 「そこから先は科学の範囲を越えて、純粋に哲学、つまり人間の思惟と想 像の問題になるのだろう。そこに超越論の本質・宗教哲学の世界がある。 私は禅学やその実践を多少かじった者として「真正の自己」に目覚めると

    • 悲しいお知らせ

      2024年11月17日昨日のこと、裏に住む娘家族が飼っていた柴犬の「ゆず」13歳が癌の闘病の末息をを引きとった。子供のころから娘夫婦が飼い可愛がってきた家族同然のペットでした。 雌犬であったが性格はすこぶるおとなしく頭もいいので誰からも愛された犬であった。体調不良が見られた数か月前から医者の診断を受けていていたが薬石投与の効果むなしく旅立った。 家族皆の喪失感は半端なく、今日はペツト葬儀社の手を借りて葬式、チリ焼きを自宅で済ませた。 私も骨片を収めた小カプセルのペンダントをも

      • 世界と歴史における自己と絶対者の問題

        「私たちは先験的、経験的に自己が生じそして帰り行く根源的世界として絶対存在を感じる」。 宇宙の根本真理、古代インド人はこれをブラフマンと言いました。宇宙の真理は、ユダヤ教やキリスト教で言えば神、プラトンならイデア、神やイデアは遠いところにあり人間とは隔絶しています。 人間はそれに向かい少しでも近づこうとするが一体にはならないのです。つまり真理は自分の外の何処かにあると思うからです。 しかし、インド人は、「私」も宇宙の一部だから、私の中にも宇宙の根本原理が宿っていると考えたの

        • 22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語

          人は思いがけず突然に何かを思い出すことがある。 過って私は足首の骨を折って緊急手術を受けた公立の病院から経過治療の目的で私立の病院に移されたことがあった。 コロナ禍の真っ最中、家族の面会は拒否され、移された病院の病棟は認知症患者が多くいる病棟で臭いや叫びが飛び交うところだった。おまけに整形の担当医は、「あなたは、当院で手術を受けたのではないから、何か経過観察の途中で異常が発生したら、当院は責任持てないから元の病院に戻ってもらいたい」と冷たく言われた。 こんな劣悪ともいえる医療

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        • 無意識を意識する 4
          1本
        • 歴史の見方
          15本
          ¥300

        記事

          枕草子にみる日本人の情緒性

          日本の古典文学、それには季節や自然に対する日本人の情緒表現が数多く見られる。そのような観点から私は殊に枕草子を好む。 特に古典に親しみ、学問の対象としたこともないが、日本人の自然から受け取る心情を書いた清少納言の文学が、日本の山野や自然を駆け巡った日々の私の行動やその思い出が私の基層を形作っているのだろうとつくづく感じる今日この頃である。 宮廷文学の代表作である「枕草子」を巡りながらいろんな日本人の各世代に共感できる話を紐解いてみたい。 私は少年時代から山野を駆け巡るのが好

          枕草子にみる日本人の情緒性

          忠臣蔵を考察 その5

          最終回 赤穂浪士が吉良邸へ討ち入りした事件から16年。そのなかのひとり寺坂吉右衛門は、大石内蔵助より真実を後世に伝え、浪士の遺族を援助するという大役を与えられ生き残っていた。 最後の遺族を捜し当て京都に向かったある日、彼は討ち入り前日に逃げた孫左衛門と再会。吉右衛門は、孫左衛門にもある密命が与えられていたことを初めて知る。 これは役所広司主演の忠臣蔵異聞である。勿論創作である。 池宮彰一郎の同名小説をテレビドラマ「北の国から」の杉田成道が映像化した時代劇。“忠臣蔵”として有

          忠臣蔵を考察 その5

          忠臣蔵の考察 その4

          赤穂浅野家と火消し 画像は当時の大名火消しの装束 赤穂浅野家は、代々消防に力を入れていました。初代の浅野長直(あさのながなお)は防火・消火の研究に熱心で、大火の際には自らが陣頭指揮をとり、燃えている家屋の上へ飛び乗って消火したといいます。 孫の長矩(ながのり:内匠頭[たくみのかみ])も、江戸在留中の元禄4年(1691年)に本所[東京都墨田区の一地区]の火消大名に任命されています。 元禄11年(1698年)の江戸の大火で吉良上野介(きらこうずけのすけ)の邸が全焼しましたが、こ

          忠臣蔵の考察 その4

          忠臣蔵を考察 その3

          事件があった元禄14年、江戸幕府の将軍綱吉は、溺愛していた母の桂昌院を従1位にすべく朝廷に働きかけていた。 吉良は綱吉と朝廷の仲介する高家肝煎として、公家の接待を仕切っていたゆえ桂昌院に贈位する要となる吉良の瑕疵をなるべく問いたくないという心理が働いた。 また吉良に綱吉から直接見舞いの言葉があったのは、吉良が幕府創設者神君家康の縁の松平三河の地を領有している親戚筋に当たるためともいわれる。 当時の武士社会の慣習からいえば、「喧嘩」が起こった際には「喧嘩両成敗」の法が適応され

          忠臣蔵を考察 その3

          忠臣蔵を考察 その2

          元禄14年3月14日・新暦1701年4月21日・江戸城内の松の廊下において、播州赤穂藩主・浅野内匠頭長矩が、幕府高家筆頭・吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)を小刀で切りつけた江戸城松の廊下事件が起きた。 当日は、朝廷から派遣された勅使(天皇の使者)と院使(上皇の使者)が、5代将軍・徳川綱吉に年賀の答礼を行う儀式の最終日でした。 赤穂藩主・浅野内匠頭は勅使饗応役(接待役)を努めており、その礼儀作法の指南者が高家筆頭・吉良でした。 武家諸法度に定められた武家同士の喧

          忠臣蔵を考察 その2

          忠臣蔵を考察 その1

          関ヶ原から百年、天下分け目の戦いを経て徳川政権は薄氷を踏む想いで均衡と安定を成し遂げた。徳川幕府の創生は、裏切りの連続と血の抗争の果てであり、それは現代日本で繰り広げられるような政治家たちの政権取りの様相に似ていなくもない。そのような抗争の緊迫感は反動として近世の到来を断絶させる如くの封建制度への移行の時代でもあった。 家康が死に秀忠家光親子の死んだ一代後の元禄バブルの徳川政権が、やがて長期低落へと向かう節目の時期に、5代将軍・綱吉のお膝元、江戸で事件”は起こった。 播州赤穂

          忠臣蔵を考察 その1

          大乗非仏論と弁証法 その4

          最終回 この章では以前問題にした大乗仏教非仏論の問題となった唯識に触れていきます。 心とは何にか?。なぜ我々は映像を見ることが出来るのか? ゆうなればそれは心の働きがなせる業であり、言葉があるからである。 大乗仏教の唯識の識は現代的に言えば心であり、人間の識別判断の機能のことを指します。 そして識別判断は言葉の働きによって可能になるのです。 言葉は存在するものの代りをする働きを持っています。 識は言葉を使い、感覚したものを言葉に置き換えていくのです。これが識別判断です。

          大乗非仏論と弁証法 その4

          大乗非仏論と弁証法 その3

          意識・精神は、弁証法の流れにそって、発展していくとすれば、その目標となるのが「絶対知」です。 では「絶対知」とは、なにを意味し、どういう状態をさすのか。絶対知の状態では、弁証法の動きが、いっさい止まっています。それは、結論ではなく、過程にあるのです。そこにいたる過程が大事なわけです。 精神が、たどってきた過程をふりかえることで、達成感・満足感を得られるという。最終結論ではなく、過程に注目すると、ヘーゲル哲学は理解できやすいというのです。 では、仏教の禅的なものを哲学に高

          大乗非仏論と弁証法 その3

          大乗非仏論と弁証法 その2

          ゴータマ・シッダッタ(釈迦)の死後、部派仏教の時代に最有力となった説一切有部の教団は権威主義化し、自分たち男性出家者の利権を守るため、原始仏典の教えを改竄して、ゴータマ・シッダッタを神格化し、仏弟子から在家と女性を排除するなどの差別を設けた。そのため、本来のリベラル仏教に帰ろう、と主張する大乗一派がうまれ大乗経典を書いたとされる。 このような歴史的経過から一部で盛んであった大乗非仏論は、実在者釈迦の死後文字のなかった当時から現在に至るまで様々な論議を生んできたが、この点を深く

          大乗非仏論と弁証法 その2

          大乗非仏論と弁証法 その一

          結婚前、東京でサラリーマン生活を送っていた時、鬱々とした気分に時々襲われた。それは仕事の適正であり、技術者としての自分の能力であり、根底の定まらない日常生活への反省でもあった。 同期で入社した友達や先輩たちとの交流はそれは楽しいもであったが、如何に生きるべきかとか自分とは何かと言った一種の脅迫観念のようなものに取りつかれていたようにも思われる。 好きだった女性との突然の別れやその後配達された彼女の手紙に驚きもしたが、それを読むことなく破り捨てむしろ田舎に帰って再出発する切っ掛

          大乗非仏論と弁証法 その一

          大乗起信論と西洋哲学

          大乗起信論は大乗仏教のドグマについて書かれたものである。 私は仏教学者でもなく、哲学徒でもない。単なる歴史愛好家であるから深みのある論理展開もできないが、その点がかえって、素人めいた理解の中にその核心に触れるというか、しっぽを触るかのように真理に至るものがあると信じこのNoteに関連テーマを書き綴ってきた。 釈迦の没後、数百年を経て紀元前後に生まれたのが「大乗仏教」です。それまでの古代仏教では、完全な悟りを開けるのは「出家者」だけとされていましたが、大乗仏教は出家・在家に関

          大乗起信論と西洋哲学

          量子力学を一般人が理解しようとして考えたこと

          私たちの生きる世界のすべてを理性的に捉えるのは難しい。殊に時間や空間の意味を深く掘り下げようとするとこの問題に突き当たる。従来の時空は、直線的な一方向の流れであり空間はそれを連続して排出するものであるとする。 更に付け加えれば時間は1秒、1時間、1日と抽象化して考えられた流れの記憶として認識するに他ならない。 しかし、量子力学などの描く時空の世界観は「瞬間にすべてが畳み込まれている」というものなのです。 普通空間と時間をわけて考えている私たちの思考からは、なかなか理解の難しい

          量子力学を一般人が理解しようとして考えたこと