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人類学の異端児!デヴィッド・グレーバーの遺作をすべて紹介します!

私たちは、普段の生活の中で、多くの「当たり前」に囲まれています。

国家、貨幣、仕事、民主主義…

これらは、私たちにとってあまりにも身近な存在であるがゆえに、その起源や意味、そして問題点について深く考える機会は少ないかもしれません。

しかし、もしこれらの「当たり前」が、実は歴史的に構築されたものであり、別の可能性を秘めていたとしたら?

もし、私たちが当たり前だと思っている社会の仕組みが、不平等や抑圧を生み出す原因になっているとしたら…?

そんな疑問を投げかけ、私たちを既存の枠組みから解放してくれるのが、人類学者であり、活動家であり、アナーキスト思想家でもあったデヴィッド・グレーバーです。

今日は、グレーバーの主要な著作を振り返りながら、彼が私たちに遺したメッセージを読み解いていきます。

彼の思想に触れることで、あなたの日常に潜む「当たり前」を疑い、より良い社会を創造するためのヒントが見えてくるかもしれません。


デヴィッド・グレーバー(1961-2020)

アメリカの人類学者、活動家、そしてアナーキスト思想家。彼は、生前、イェール大学、ゴールドスミス・カレッジなどで教鞭を執り、世界中の社会運動に積極的に関わってきました。

彼の著作は、学術的な厳密さと社会運動の実践経験に基づいた鋭い洞察力を兼ね備え、現代社会における様々な問題を根底から問い直すものであり、多くの読者に影響を与え続けています。

グレーバーの関心は、経済人類学、政治人類学、社会運動論、アナーキズムなど多岐にわたります。

彼は、マダガスカルでのフィールドワークを通して、価値や交換の概念を人類学的な視点から考察し、文化や社会における価値の多様性を明らかにしました。

その後、アナーキズムの思想と人類学の研究を結びつけ、国家や権力に依存しない社会のあり方を模索するようになりました。

彼は、従来の人類学の枠組みを超え、歴史学、経済学、哲学など様々な分野の知見を総合することで、独自の視点から現代社会を分析しました。

彼の著作は、学術的な貢献だけでなく、社会運動にも大きな影響を与え、特に2011年の「ウォール街を占拠せよ」運動では、中心的な役割を果たし、「99%対1%」というスローガンを生み出すなど、運動の思想的な支柱となりました。

ここからは、日本語で出版されている彼の著作をすべて紹介していきます。

『価値論 人類学からの総合的視座の構築』

マダガスカルでのフィールドワークに基づき、価値の概念を人類学的な視点から考察し、文化や社会における価値の多様性を明らかにした作品。マルセル・モースやクロード・レヴィ=ストロースなどの古典的な人類学理論を批判的に検討しながら、独自の価値論を展開しています。

『アナーキスト人類学のための断章』

アナーキズムの思想と人類学の研究を結びつけ、国家や権力に依存しない社会のあり方を模索した論文集。権力、暴力、国家の起源、社会における自由と平等など、幅広いテーマを扱っています。

『資本主義後の世界のために──新しいアナーキズムの視座』

資本主義の限界を指摘し、アナーキズムに基づいたオルタナティブな社会のビジョンを提示したインタビュー集。グローバリゼーション、新自由主義、環境問題など、現代社会が直面する課題を分析し、アナーキズムの視点から解決策を模索しています。

『負債論──貨幣と暴力の5000年』 

貨幣と負債の歴史を人類学的な視点から分析し、現代社会における負債の問題点を明らかにした大著。貨幣の起源、負債と暴力の関係、国家と貨幣制度の結びつきなどを詳細に考察し、現代の金融危機や債務問題の根源に迫ります。


『デモクラシー・プロジェクト──オキュパイ運動・直接民主主義・集合的想像力』

オキュパイ・ウォール街運動の経験を踏まえ、直接民主主義の可能性と課題を論じた作品。運動の現場で生まれた新しい形の民主主義の実践を分析し、今後の社会運動の方向性を展望しています。

『官僚制のユートピア──テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』

 官僚制のメカニズムを分析し、現代社会における官僚主義の弊害を批判した作品。官僚制が、非効率性、不平等、抑圧を生み出すメカニズムを明らかにし、官僚主義を超えた社会のあり方を模索しています。

『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』

 現代社会に蔓延する無意味な仕事(ブルシット・ジョブ)の増加とその原因を分析し、大きな反響を呼んだ。なぜ人々は、無意味だと感じながらも、そのような仕事に従事し続けるのか、その心理的、社会的メカニズムを解き明かしています。

『改革か革命か 人間・経済・システムをめぐる対話』

経済学者との対話を通して、資本主義の矛盾と克服の可能性を議論した作品。資本主義の現状を分析し、環境問題、社会的不平等、民主主義の危機など、様々な課題を克服するために、どのような改革や革命が必要なのかを議論しています。

『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』

人類史の通説を覆し、人類の進化における自由、平等、協調の重要性を論じた意欲作。考古学、人類学、歴史学の最新の知見を総合し、従来の人類史像を批判的に検討することで、人類の未来に対する新たな視点を提示しています。

まとめ

デヴィッド・グレーバーは、人類学者、活動家、アナーキー的な思想家として、現代社会の「当たり前」を問い直し、オルタナティブ な社会のあり方を模索し続けた人物です。

彼の研究は、価値論、アナーキズム、社会運動論など多岐にわたり、マダガスカルでのフィールドワークからウォール街占拠運動まで、幅広い経験に基づいています。

グレーバーは、貨幣と負債の歴史、官僚制の弊害、無意味な仕事の増加など、現代社会の様々な問題点を鋭く指摘しました。

そして、資本主義の限界を克服し、直接民主主義や自由・平等・協調に基づいた社会を実現するための道を模索しました。

彼の著作は、学術的な厳密さと社会運動の実践経験に基づいた鋭い洞察力を兼ね備え、私たちに批判的な思考を促し、より良い社会を創造するためのヒントを与えてくれます。

ぜひ、一度読んでみてください!


【編集後記】
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