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トラウマを乗り越える力!ジョージ・A・ボナーノ『トラウマとレジリエンス』

近年、トラウマという言葉を耳にする機会が増えました。

しかし、トラウマとは一体何なのか、そしてトラウマを受けた人がどのように回復していくのか、深く理解している人は少ないのではないでしょうか。

私自身も以前、治安が悪い国を旅してるときに、銃撃に巻き込まれたことがあり、しばらくPTSDになりました。

そのときに助けられた本を紹介したいと思います!

ジョージ・A・ボナーノ『トラウマとレジリエンス:「乗り越えた人たち」は何をしたのか』です。

本書のテーマであるトラウマとレジリエンスについて理解を深めるために、まずはこれらの概念を簡単に説明しましょう。


トラウマとレジリエンス:心の傷と回復力

トラウマとは、一般的に、戦争、災害、事故、虐待など、生命の危機や身体の安全を脅かすような出来事を経験した際に生じる、精神的な傷のことです。心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、トラウマによって引き起こされる精神疾患の一つとして知られています。

一方、レジリエンスとは、困難な状況や逆境に直面した際に、それを乗り越え、適応し、成長する力のことです。

心理学の分野では、トラウマからの回復にレジリエンスが重要な役割を果たすことが注目されています。

ジョージ・A・ボナーノ:トラウマ研究の第一人者

本書の著者であるジョージ・A・ボナーノは、コロンビア大学教育学部臨床心理学教授であり、トラウマ研究の第一人者として知られています。

彼は、9.11アメリカ同時多発テロをはじめとする様々なトラウマ的出来事の後、人々がどのように回復していくのかを長年研究してきました。

ボナーノは、従来のトラウマ研究では、PTSDのような精神疾患に焦点が当てられがちであったのに対し、「回復した人たち」に注目しました。

従来の悲嘆に関する理論、例えばキューブラー・ロスの五段階理論にも疑問を呈し、人はどのようにトラウマに対処するのか、独自の視点から研究を深めてきました。

彼は、トラウマを経験した人の多くは、時間の経過とともに自然に回復していくことを示し、レジリエンスの重要性を強調しました。

『トラウマとレジリエンス』:「乗り越えた人たち」は何をしたのか?

本書では、9.11アメリカ同時多発テロやその他のトラウマ的出来事を例に挙げながら、人々がトラウマをどのように乗り越えていくのか、そのメカニズムを解き明かしていきます。

ボナーノは、レジリエンスを「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と定義し、その要因として、柔軟な思考、楽観的な考え方、社会的なサポートなどを挙げています。

本書は、大きく5つのパートに分かれています。

  • プロローグ 自分はなぜ大丈夫なのだろう? 読者の興味を引きつけ、本書のテーマであるレジリエンスについて導入する

  • パートⅠ 三分の二 トラウマ研究の歴史を振り返り、PTSDの概念とレジリエンスの概念を対比する

  • パートⅡ ストーリーと予測 トラウマ体験に対する人々の反応が多様であることを示し、レジリエンスの重要性を強調する

  • パートⅢ ゲームを主体的にプレイする レジリエンスを高めるための具体的な方法を、柔軟な思考や楽観的な考え方などを中心に解説する

  • パートⅣ 基本的な仕組み レジリエンスの神経科学的なメカニズムを解説する

  • パートⅤ リピート・アフター・ミー トラウマを経験した人々が、自分自身と向き合い、回復していくための方法を、具体的な事例を交えながら解説する

ボナーノは、この本の中で、トラウマを経験した人々が、自分自身に語りかけ、感情を整理し、未来への希望を見出すことの重要性を強調しています。

また、社会的なサポートや、トラウマ体験を意味づけることなども、レジリエンスを高める上で重要であると述べています。

柔軟な思考
状況に合わせて考え方や行動を柔軟に変えることができる
楽観的な考え方
ポジティブな側面に目を向け、未来への希望を持つことができる
社会的なサポート
周囲の人々から支えられ、助けを求めることができる
トラウマ体験を意味づける
トラウマ体験を自分の人生の一部として受け止め、そこから学びを得ることができる

本書の意義:トラウマ研究における新たな視点

本書は、従来のトラウマ研究とは異なる視点から、トラウマからの回復について論じた画期的な著作です。ボナーノは、トラウマを経験した人の多くは、特別な治療を受けなくても、時間の経過とともに自然に回復していくことを示し、レジリエンスの重要性を強調しました。

これは、トラウマを受けた人々に、必ずしも専門的な治療が必要となるわけではないという、希望に満ちたメッセージを与えています。

また、本書では、レジリエンスを高めるための具体的な方法が示されており、トラウマを経験した人々だけでなく、その家族や支援者にとっても役立つ内容となっています。

結論:トラウマを乗り越え、成長する力

『トラウマとレジリエンス』は、トラウマという心の傷と、それを乗り越える力であるレジリエンスについて、最新の研究成果に基づいて解説した一冊です。

本書を読むことで、トラウマに対する理解を深め、自分自身のレジリエンスを高めるヒントを得ることができるでしょう。

トラウマは、決して特別な人のみが経験するものではありません。

誰もが、人生の中で何らかのトラウマを経験する可能性があります。しかし、本書が示すように、私たちは皆、トラウマを乗り越え、成長する力を持っています。

ボナーノの研究成果を知ることで、私たちはトラウマを克服するだけでなく、そこからさらに力強く、より豊かな人生を築き上げていくことができるのです。

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