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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2024年4月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第897話

「あらそう。この子が次に母乳を飲んでくれるようなったら、食事に招待したいわね」  トリー…

吉村うにうに
7か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第896話

変わったことと言えば、粉ミルクしか飲まなかった赤子が、母親の胸に吸いついている光景だけだ…

吉村うにうに
7か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第895話

 妻は玄関で、赤子を抱いた状態で待っていた。 「おかえりなさい。ごめんね、やっと授乳がで…

吉村うにうに
7か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第894話

「では、なれそめは次回訊くことにしよう。アシェル、子どもに思う存分子守唄を演奏してやりな…

吉村うにうに
7か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第893話

 自分の家のバルコニーを見つめた。時折、彼女が出迎える代わりに姿を見せることがあるからだ…

吉村うにうに
7か月前
9

水深800メートルのシューベルト|第892話

「今日は、虫の居所が悪いんだってさ」  そう言うと、彼は肩をすくめた。 「おいおい、今日…

吉村うにうに
7か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第891話

「私、アシェル君の上官を務めております」  彼はまじめな顔つきで、叔母さんに敬礼をしてみせた。 「はいはい、セペタさんでしょう? 嬉しいわ。最近の海軍では、部下を家まで送って下さるのね。で、アシェル・スコットは船を沈めませんでしたか?」  彼女は、笑って彼の冗談に合わせていた。彼女が妻の叔母だということに納得すると、セペタは周囲をキョロキョロと見回した。 「今日は、沈みませんでしたよ。ところで、アシェルの奥様は?」  彼は、叔母さんのノリの良さに笑いを堪えながら言った。

水深800メートルのシューベルト|第890話

 曖昧に笑っていると、叔母さんは、僕の袖を引き、車を停めて降りて来たセペタに訊かれないよ…

吉村うにうに
7か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第889話

「おかえりなさい。ごめんなさいね、あなたの愛しい奥さんが迎えに来なくて。誘ったんだけど」…

吉村うにうに
7か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第888話

アパートメントに続く舗装を入れた道は狭く曲がりくねっていて遠回りだと言って、彼はいつも公…

吉村うにうに
7か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第887話

   セペタの薄い黄色の古いオープンカーであるキャディラックは、いつもエンジンの音がプス…

吉村うにうに
7か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第886話

     (45)  水に落とされることもなく、大きな失敗をすることもなく、上陸許可を受…

吉村うにうに
7か月前
3

水深800メートルのシューベルト|第885話

 ハッチから頭を引っ込める最後の瞬間、新鮮な空気を目一杯肺に入れた。塩分混じりの湿気を含…

吉村うにうに
7か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第884話

自分の適性検査の結果は知らないが、自分が艦長の立場だったら、すぐに過換気を起こし、ドジばかり踏むような乗組員は採用しないだろう。ゲイルさんは気を回したのだろうが、どうせなら、危険のない陸上勤務が良かったなと思う。きっと彼は、自分の目の届くところに僕を置いておきたかったのだろう。 「休暇の間に、君のアパートメントに寄せてもらうよ。いいかな?」  僕とすれ違いざまに、彼は表情を崩さないまま、潮風に紛れるほどの小声で言った。確かめたことはないが、彼が僕のママの再婚相手だったことは