変わったことと言えば、粉ミルクしか飲まなかった赤子が、母親の胸に吸いついている光景だけだった。母親はとても幸せそうで、叔母の言っていたことは杞憂だったんじゃないかという気がしてくる。
後ろから大きな音を立てて、ルース叔母さんが入って来た。
「またこの子ったら、レトロな車で大きな体の上官に送ってもらったのよ」
「上官じゃないです」
僕は、フェリックスの髪をそっと触る。僕に似た金色の髪は、汗でびっしょりと濡れていた。熱がまだ完全には引いていないようだった。
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