水深800メートルのシューベルト|第886話
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水に落とされることもなく、大きな失敗をすることもなく、上陸許可を受け取ることができた。今回の上陸期間は72時間。僕は、同期でやはり先に一等水兵に昇格したオリーブ色の巨人、セペタに車で送ってもらいアパートメントに向かうことにした。任務後に返却されたスマホで連絡していたので、いつものように出迎えてくれるかと思っていた。しかし、車が派手にガスをふかしても、砂利が車のタイヤに食い込む音がしても、玄関ポーチには誰一人見当たらないので不安になった。頭の中で、メリンダのママが銃撃された夜のことが浮かんで怖くなり、僕はすぐに頭を振ってその可能性を打ち消す。