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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年1月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第77話

 仕方がないので、(僕は)近くにあるバーに両手で掴まり、おじさんにはわからないようにお尻…

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水深800メートルのシューベルト|第76話

     (5)  パパと一緒に乗った救急車は、外から見るのと大違いでひどく揺れた。ママ…

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水深800メートルのシューベルト|第75話

「パパ……、具合悪いの? お水持ってくるよ」 「おい、いいから……。車の中からスマホ持っ…

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水深800メートルのシューベルト|第74話

「うえっぷ……、くそ……、ちきしょう……」  パパは体を折り曲げて、アラブ人がお祈りする…

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水深800メートルのシューベルト|第73話

 パパは、それ(逃げたリス)を見て慌ててナイフを振り下ろしたが、幹にガツンと音を立てただ…

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水深800メートルのシューベルト|第72話

「お前だってなあ、俺様を馬鹿にしていると、こういう目に遭うんだ」  パパは(そう言うと)…

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水深800メートルのシューベルト|第71話

「パパ、ごめんなさい」  口だけは動いたが、届いた様には見えなった。ナイフは僕の背丈くらいありそうに思えた。柄の部分から三日月のように曲がっていて、先は鋭く何でも切れそうに見えた。震えながらも、刃先から目を逸らしちゃいけないと思って見つめていると、刃のところに赤い垢のようなものがこびりついていた。 「俺様はなあ、こいつを使って、来る日も来る日も、牛の皮を剥いだり、機械じゃ切りにくい足の部分とかを切り落としてきたんだ。俺は……、俺はなあ、働いてきたんだ。毎日ヘトヘトになるまで

水深800メートルのシューベルト|第70話

「なんだとこのクソガキ! ママは働いているからだと? 俺様が働いていないっていうのか!」…

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水深800メートルのシューベルト|第69話

「何を言ってるの、パパ。二三日パパのお家にお泊りする話だったじゃない」(と、僕は言った。…

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水深800メートルのシューベルト|第68話

(液体がホースから出てきたので、僕が)近づいてみると、それはクラムチャウダーのような白く…

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水深800メートルのシューベルト|第67話

 出て行った時と同じように黄緑の車は、扉から反対側の――僕が寝ていたベッドの近く――草む…

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水深800メートルのシューベルト|第66話

 脂のついた指を舐めとっていると、遠くで車が近づいてくる音が聞こえた。きっとママじゃない…

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水深800メートルのシューベルト|第65話

     (4)  ピヨーピヨー、ピピピピ  耳に刺さるような鳥の声で、(僕は)ここがママ…

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水深800メートルのシューベルト|第64話

(僕は、四角い車からコードの伸びたマイクのようなものに息を吹いた)  するとすぐに車の中から女性ロボットのような声が聞こえてきた。 「アルコールは検知されませんでした。エンジン始動します」  ブルル、と車全体が震えエンジンがかかった。パパは、洗濯機のホースを片手で口に当てると、車のドアの窓を全開にしてから、中に乗り込んだ。ホースを口にくわえたままで、ホースの先端を車の外に放り出した。車の中の空気を吸ったらいけないのだろうか? 僕は、お腹の痛みもわすれ、エンジンと、ホースの先端