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水深800メートルのシューベルト|第71話

「パパ、ごめんなさい」
 口だけは動いたが、届いた様には見えなった。ナイフは僕の背丈くらいありそうに思えた。柄の部分から三日月のように曲がっていて、先は鋭く何でも切れそうに見えた。震えながらも、刃先から目を逸らしちゃいけないと思って見つめていると、刃のところに赤い垢のようなものがこびりついていた。

「俺様はなあ、こいつを使って、来る日も来る日も、牛の皮を剥いだり、機械じゃ切りにくい足の部分とかを切り落としてきたんだ。俺は……、俺はなあ、働いてきたんだ。毎日ヘトヘトになるまでよお。それなのに……、お前まで馬鹿にするのか?」
 そう言うと、不規則にナイフを振り回し始めた。

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