水深800メートルのシューベルト|第65話
(4)
ピヨーピヨー、ピピピピ
耳に刺さるような鳥の声で、(僕は)ここがママのアパートじゃないことを思いだした。
怒られる! その理由は分からないけれど、ベッドから飛び起きた。
部屋は暗いままで人の気配はなかった。トレーラーのベッドを見たが、しわくちゃのシーツが隅っこに固まっているだけで、僕が寝ていた跡が少し凹んでいた。
まだ帰っていないのかな? 僕はおそるおそる窓を開けて首を出してみる。車は一台も停まっていなかった。近くにある木に青い鳥が停まっていて、ピピピとさっきから耳に障る声を放っている。
叩かれる心配はなくなったと安心すると、お腹が空いているのに気づいた。冷凍庫を覗くと、テレビディナーの箱。開けてみると、昨日と同じビーフシチューと豆でがっかりした。それを戻して、テーブルを見ると袋の開いたポテトチップス。手を突っ込んで何枚か掴んで口にいれる。思ったより柔らかくて、油臭い嫌な臭いが鼻に広がった。