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水深800メートルのシューベルト|第67話

 出て行った時と同じように黄緑の車は、扉から反対側の――僕が寝ていたベッドの近く――草むらに停まっていた。早足で近寄ってみると、運転席の窓は少し空いていて、昨日洗ったホースがだらんとドアの把手の所までぶら下がっていた。
 パパは中でホースを口に当てたまま、突っ伏していた。顔が見えないので怒っているのかどうかわからず、僕は顔を上げてくれるのを待つことにした。中で咳き込むような背中の跳ね上がり。ホースも動き、先から液体が出てきた。

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