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水深800メートルのシューベルト|第76話

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 パパと一緒に乗った救急車は、外から見るのと大違いでひどく揺れた。ママの運転する車の方がずっと静かだった。僕は、車内で車輪付きベッドに縛られて横たわっているパパに沿うように置いてある、細長い椅子に座らされた。森の中で、車が砂利を踏む度に、昨日叩かれたお尻に震動が伝わってきた。痛みに堪えきれず、お尻を浮かせると、
「おとなしく座ってろ!」
 と水色のシャツを着て腕が僕の体より太そうな髭面のおじさんに体を押さえつけられ、その痛みで思わず悲鳴をあげた。

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