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水深800メートルのシューベルト|第64話

(僕は、四角い車からコードの伸びたマイクのようなものに息を吹いた)
 するとすぐに車の中から女性ロボットのような声が聞こえてきた。
「アルコールは検知されませんでした。エンジン始動します」
 ブルル、と車全体が震えエンジンがかかった。パパは、洗濯機のホースを片手で口に当てると、車のドアの窓を全開にしてから、中に乗り込んだ。ホースを口にくわえたままで、ホースの先端を車の外に放り出した。車の中の空気を吸ったらいけないのだろうか? 僕は、お腹の痛みもわすれ、エンジンと、ホースの先端から漏れる空気の音に耳を澄ませた。
 やがて、車は急旋回して土埃を巻き上げ、森を左右に分けている道路の向こうへと走り去った。

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