「お前だってなあ、俺様を馬鹿にしていると、こういう目に遭うんだ」
パパは(そう言うと)、キョロキョロと周囲を見渡し、トレーラーハウスに枝が差しかかっている木の幹に小さなリスが頭を下にして降りてくるのを見つけると、それに向かってナイフを振り上げた。
「えへへ、見てろよ」
ナイフの刃先は上を向いた状態で、ぷるぷると震えていた。
僕は、リスから血が出るのを見たくなくて、パパのズボンを引っ張って「止めて!」と叫んだ。今度はやっと声になったようで、リスは慌てて上に登り、「キキキ」と鳴きながら枝を伝ってトレーラーの屋根の方へと逃げて行った。
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