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真夜中の深呼吸。

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私のままで生きるために、深呼吸をするように綴った文章たち。
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#言葉の力

あなたと一緒に、仕事がしたい。"働く理由" はそれしかなかった。

「みなさんに、退職のご報告があります。」

部長の口からその言葉が飛び出したとき、辞めるのは彼ではないと知っていたはずなのに、大きく心臓が波打った。

実際は、部下の退職報告を代わりにしたというだけの話だ。けれどわたしはそのとき、不意をつかれて思わず息を呑んだ。

そして、考えた。

もし、彼が今、本当に会社を辞めてしまったら。
わたしは一体、どうするのだろう?

しばらくの間、放心状態になってし

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新婚生活で自分を見失っていた私は、旅先でもらった言葉に救われた

新婚生活で自分を見失っていた私は、旅先でもらった言葉に救われた

「こんなはずじゃなかったのにな……」

新婚生活が始まって1週間が経った、ある夜のこと。

真っ暗な寝室のドアを開け、ひとり静かにベッドに潜り込む。

隣ですうすうと寝息を立てている彼の気配を感じながら、わたしの心は水を含んだ布団のように重く、濁っていた。

いまのわたし、全然自由じゃない。

新しい仕事も、生活も、彼との関係性も。何もかもがうまくいかなかった。

正確に言うとうまくいかないのは一

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私はきっと「そのままでいいんだよ」って言葉がほしかったんだ

私はきっと「そのままでいいんだよ」って言葉がほしかったんだ

「岡崎さんは、生きてるだけで尊いんだよ。」

それは、あまりにも唐突なできごとだった。わたしは上を向いたまま、一瞬フリーズしてしまう。

あと2,3日後には満月になりそうな、おおきな月がぽっかり浮かぶ、夏のはじめの夜だった。

その輝きに夢中になっていたわたしは、ふと我に返って声がする方を向く。

言葉の主は、まっすぐな瞳でこちらを見つめて、真剣な表情をしていた。

その人は、さっきまで眺めていた

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わたしの世界を変えたのは、全部きみの言葉だったよ

わたしの世界を変えたのは、全部きみの言葉だったよ

彼からもらった言葉を、どこかに残しておきたい。
そう思ったのは、年が明けて数日経った、ある日のことだった。

残しておきたい。

そう思ったのは、昨年のわたしが「今年はいい1年だったなあ」と思えていたのは紛れもなく、彼の言葉たちのおかげだったと気づいたから。

やさしい言葉ばかりじゃない。

時には、目を背けたくなるような現実を突きつけられたこともあった。

だけどそれも含めて、彼の言葉には無視で

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関西弁に、恋してる。

関西弁に、恋してる。

関西弁が好きだ。

いつから好きなのかなんて思い出せないくらい、
物心ついたときにはもう、すっかりその言葉の響きに
魅了されていた。

気づいたときにはすでに、関西弁に恋していた。

わたしは生まれも育ちもほとんど関東で、方言と
いえば、おばあちゃんとお母さんの使う茨城弁か、
岡崎家のルーツである山形弁くらいしか、人生で耳に
してこなかった。

関西の人にはじめて出会ったのはたぶん、ブラジルに

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「書く」ことは「診る」こと

「書く」ことは「診る」こと

毎日noteを始めて、今日で10日目。

続けてみて思ったのは、「文章を書くことは、
健康診断に似ている」ということだ。

毎日何かしら書かなきゃいけない、ということは、
その日自分が考えていたことや感じていたことを、
整理して言葉にして、自分の身体から外に出す
ということ。

その作業を行ったあと、書きあがった文章を見て
「今日の自分、こんなことを考えていたのか」とか
「最近なんか暗いな」「今日

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変わり続ける父を追う

変わり続ける父を追う

「性格は、変えようと思えば変えられるんだよ」

これは父の口癖であり、わたしの人生に最も影響を

与えた父の教えのひとつだ。

小さい頃は、大人しくて真面目でいい子ちゃんな

自分が嫌いだった。

誰かに何かを頼まれると断れず、我の強い友達に従って

行動するお人好しな自分が嫌だった。

ずっと、それを変えたいと思っていた。

わたしは今まで父に自分の悩みを話したことはないし、

いい話しかしなか

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