より良いキャリアを築く「働く場」の選択(8)~ 各業界分野の取り組み① 生産分野(農業)~
これまで7回にわたり(No.9からNo.15)、「どのような「場」で働くか」ということについて、企業特性、採用特性、業界、職種等について、分類、定義をしてきました。
今回から、6回にわたり以下の「業界主要6分野」を取り上げ、その分野における「取り巻く環境や課題」、そこで期待される「技術、ノウハウ」について紹介していきます。就活の際の参考にして下さい。
ご紹介する6分野について、以下に示します。
1回目は、「生産分野(スマート農業)」について紹介します。
尚、本稿における記載表現は、「実業企業者の立場」からとしていますので、「実業支援企業の立場」に就職されたい方は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に対して、「~を支援」という言葉を加えて読んでください。
1.農業を取り巻く環境
生産分野は、第一次産業として生活の基本を担う分野であり、ITというより「自然環境に左右され、人の経験を重要視」してきた分野でした。
しかし、昨今の担い手不足の顕在化や、温暖化による異常気象の多発、グローバル化による機会拡大への対応と同時に低価格輸入品対策などへの対応が急務になっています。
本分野においても、このような環境変化に対して「如何に生産性を高め、効率化を実現する」かが求められています。
その対応策の一つとして、今「ITの利活用(Agri Tech)」が加速している分野であると言えます。
【農業分野を取り巻く環境の変化と課題】
■ グローバル化/効率化が求められる生産環境の変化
・TPP に対応したグローバル化・効率化した生産の仕組の確立
・後継者不足(高齢化)・耕作放棄地/分散耕作地増加
・異業種からの参入増加
■ 温暖化による異常気象対策など、これまでに経験がない地球環境変化
・観測衛星データの活用(早期発見、早期対応)
・生産工業化の拡大(生産工場)
・変化している気象に対応した、継続的な新品種の開発
■ 消費者ニーズの変化、海外需要(輸出)増への対応
・「求められる産品(ブランド化)作り」、「付加価値(差別化)」を高める取り組みの強化
・日本の農産物への注目の高まりに伴う、輸出管理と日本品種維持への対応
・生産者と消費者とのダイレクト取引の拡大(ネット活用)
■ ITの進展と利活用環境の変化
・IT技術適用可能性拡大(技術進化とコスト低減の進展)
・自然情報(データ)のBIGDATA化進展(気象、地質情報などの活用)
・品質センサー、無線システム、解析システムの進展
・自動機器(ドローン)、モバイル機器の軽量化、ユニバーサル化進展
・クラウドサービスの進展(システム利用容易化)
*1 TPP:Trans-Pacific Partnership Agreement
環太平洋パートナーシップ協定
以上のような環境変化の中、本分野における皆さんへの「取組期待」について以下に示します。
2. 取り組み観点
IT利活用への取り組みは、一次産業の存続(維持・拡大)に向けても、今や不可欠であると言っても過言ではないでしょう。
今後、本分野でどのようなことが求められているか、利活用すべき技術観点について、以下に示します。
2.1 新たなIT利活用による変革領域
本分野におけるこれまでのITといえば、経営面における「税務申告系」くらいでの利用が中心でした。(税務処理面)
しかし、これからのIT利活用は、他の産業(二次・三次)同様、「生産から、流通・加工、販売」までの全工程における「人・モノ・金・環境 」情報を収集、活用すること、特に、「生産・マネジメント面」において工業製品作りと同様の発想で活用、推進することが求められると考えています。
*2 人・モノ・金・環境(情報)
・人 : 耕作(生産)に関わる活動情報、行動情報
・モノ : 種、苗、発育、肥料、農薬散布、病害虫、餌、固体 など
・金 : 原価(各種コスト)、生産額、販売額 など
・環境 : 圃場の土壌、水質、温度、日照、湿度 など
*3 SCM : Supply Chain Management
2.2 磨いてほしいIT技術
今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示します。特に、生産の場における「工業化」を推進することに必要な技術が、キーとなるでしょう。
これまで、生産分野は「ITとは縁遠い世界」であり、「アナログ的、労働集約型の典型的な世界」と見なされてきましたが、今やITの利活用が不可欠の世界になっています。就活先としての選択肢は低かったと思いますが、これからは有望な分野として考えられてくるでしょう。
次回は、「製造分野」について紹介します。
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