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より良いキャリアを築く「働く場」の選択(13) ~各業界分野の取り組み⑥  消費者ビジネス業界~

6回目の今回は、IT技術の進化がもたらす「消費者ビジネス」について紹介します。本稿での「消費者ビジネス」とは、個々人を対象としてビジネス(物販、サービス)を行う事業行為のこととしています。所謂、小売業や個人向けサービス事業業界における取り組みと理解して下さい。


1回目同様、本稿における記載表現は、「実業企業者の立場」からとしています。「実業支援企業の立場」に就職したい人は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に対して、「~を支援」という言葉を付加して読んで下さい。

1.消費者ビジネスを取り巻く環境

既に消費者の多様化、価値観の変化が謳われ、「十人十色」、「個々人への対応が当たり前」と言われる時代になっているのはご承知の通りです。さらに昨今は、「一人十色」時代であり、個々人のTPO *1に合わせた対応が求められています。そこでは、如何に個々人の「状況、意識、行動」を把握し、タイムリーにコンタクト *2を取ることがキーとなるでしょう。
また、ビジネスチャネルにおける「リアル世界とネットワーク世界」のシームレス化が進み、それぞれの特性を活かした取り組み作りが求められています。リアルチャネルを主としてきた企業において、今や、ネットワークチャネルはリアルチャネルの補完という発想を棄て去る時代になっています。

【消費者ビジネス分野を取り巻く環境の変化と課題】

消費者を取り巻く「IT環境」の変化は、消費者ビジネスを行う企業にとって、非常に良い環境が整ってきていると言えます。特に、これまで「消費者(顧客)情報を取得、活用する」ためには、顧客に「情報収集のための媒体 *3」を持ってもらうことから始めなければなりませんでしたが、スマホの普及、定着により、今やその必要性から解放されました。 
さらに、自社の利用顧客情報だけでなく、SNS情報をはじめとした顧客自ら発信した情報を含め、社会的情報(ビッグデータ)の活用も可能となり、情報精度面での向上が期待できる時代になっています。今、まさに「IT利活用」の成否が、ビジネスの命運を握っているとも言えるでしょう。

■24時間/365日、多様な手段での「接点(チャネル)」がある時代
・自前のモバイル(スマホ)機器を所有してくれている
・いつでも「手」に持ってくれている(すぐ気づいてくれる)
・いつでも、どこでも、即対応できる

■豊かさに対する価値観の変化
・プチ贅沢感
・所有感より利用感(シェア)
・投資(お金の使い道)感の変化(モノよりコトへ)
・SDGs *4

■リアル世界における情報の取得可能へ
・ネットワーク世界と同様の「行動履歴」が入手可能

■「得られる情報、活用しえる情報」の多様化
・ビッグデータ(オープンデータ)の活用が可能に
・新たなビジネスモデル、サービスモデル創出の拡大

*1 TPO  :時(Time)、所(Place)、場合(Occasion)
*2 コンタクト:
      アプローチ(企業→消費者)、アクセス(消費者→企業)
*3 必要な媒体:カード類(クレジット、ポイント等)、携帯機器 など
*4 SDGs:
      Sustainable Development Goals (No.5:ジェンダー平等)

以上のような環境変化の中、本分野における皆さんへの「取り組み狙い」について以下に示します。

【皆さんへの期待】
「オムニチャネルを”真”に実現することで、消費者ビジネス」を変える !

2.取り組み観点

2.1 新たなIT利活用による変革領域

IT技術の進化により、今後ますます消費者の生活全般にわたる多くの情報が得られる時代になっていくでしょう。そこでは、個社情報の「囲い込み(秘密主義)」から「共用活用」への発想転換が重要であると考えています。情報は、存在そのものに意味があるのではなく、利活用しようとする意志を持った企業、人が登場した時に初めて「意味」を持つものであり、所有を競うのではなく、利活用分野での競争促進を図るべきだと考えています。 
今後は、「活かすべき情報」と「その活かし方」によって、「企業差」が生まれると言っても、過言ではないでしょう。「情報」を活用し、如何に先に「仕掛ける *5」かが重要だと考えています。

【ITの活用で変革すべき領域と取り組み】

■「消費者ビジネスモデル」の変革
・シェアードビジネスの強化(「所有」から「利用重視指向」)
・注文チャネル最短化、簡便化の拡充(選択されやすい仕組み)
・ソーシャル型ビジネスの拡大(社会的課題解消への取り組み)
・ショールーミング化 *6への対策

■「リアル世界におけるデジタル活用」の拡大
・行動履歴の獲得範囲拡大(リアルとWeb上のシームレス化)
・コンタクトチャネル多様化への対応(オムニチャネル対応)

■「既存ビジネスモデル」の常識変革
・サブスクリプションビジネス
・ドロップシッピングビジネス *7
・アフィリエイトビジネス *8
・クラウドファンディングビジネス *9
                      
■「本人確認(個人認証)、プライバシー保護技術」の強化
・媒体レス本人認証技術の適用拡大(生体認証)
・対面レスでの契約方式拡大(フェイク(なりすまし)対応技術)
・個人情報の匿名化技術(統計情報としての活用)
   

*5 仕掛ける:
「顧客意識(多様化)の変化」に対応し、「選ばれる」ための施策作り。「モノからコト」、「買うから利用」、「買うなら簡単で」、「便利さと安全の両立」作りなど。「モバイル機器(スマホ、タブレットなど)」向けアプリケーションの「ダウンロード促進施策力」強化。

*6 ショールーミング:
商品を購入する前に実店舗で価格や性能などを確かめ、購入はオンラインで行う購買行為。

*7 ドロップシッピング:
自社サイトなどで受注を受け、受注時点で発注(仕入)、商品は、メーカーや卸業者から直接送付してもらうビジネス方式。(発注以降はブラックボックス) 類似系ビジネスとして、「無在庫転売」という形態もある。

*8 アフィリエイト:
自前のブログやサイトを開設し、ページ内で商品紹介や広告を掲載して利益を得るビジネス。紹介ビジネスや仲介ビジネスのひとつ。

*9 クラウドファンディング:
事前に販売したい商品、サービスをネット上に公開し、購入者を募るビジネス方式。受注生産方式と同様、購入希望者が事前にわかるため、小リスクでビジネス可。(予定数にならなければ販売しないというノーリスク化も可)
また、新規企画開発や再建計画などへの取り組みに対し、広く「個人投資」を募るということも。

2.2 磨いてほしいIT技術

今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示します。参考にして下さい。

【習得しておきたい技術】

■個人使用機器活用技術
・自社、サービスアプリケーション開発
・パソコン、スマホ、タブレット、ウェアラブル活用技術 など

■ネットワーク技術
・WiFi、NFC *10、Web全般   など

■セキュリティ技術
・個人認証(生体認証)、漏洩防止、不正使用防止、フェイク対応 など

■情報解析技術
・各種ビッグデータ(オープンデータ)活用技術
・データサイエンティスト技術
・生成AI適用技術             など

■その他
・VR、GPS、マッピング、画像解析、SNS、ロボット、各種(音波、電波)センサー活用技術  など

*10 NFC :Near Field Communication 

今まさに、真の「One To One Marketing」の実現が期待できる時代になったと言えましょう。ただ、マスマーケティングが不要になったということではなく、それぞれの特徴を活かした「使い分け」が重要であると考えます。

以上、これまで6回にわたり主な業界における取り組みについて紹介してきました。本稿で紹介した6分野に関わらず、ほぼ全ての業界・業種・業務において「IT技術の利活用」は、不可欠となっていくでしょう。 

ご自身がどのようなキャリアを磨き、それらをどのような業界、企業で活かし、貢献されたいか、今後の選択の一助になれば幸いです。

さて、次回からは、企業はどのような人材を期待しているかということについて、紹介したいと思います。

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