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映画めも。

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観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
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#note映画部

【映画】ファースト・カウ First  Cow/ケリー・ライカート

【映画】ファースト・カウ First Cow/ケリー・ライカート

タイトル:ファースト・カウ First Cow 2019年
監督:ケリー・ライカート

ロングライドとグッチーズスクール主催の最速試写で鑑賞。中々上映されずやきもきしていたが、A24の世間的な注目の高さもあってやっと公開されたのかもなんて思ったりするが、ともあれ上映が決まったのは喜ばしい。

伊丹十三ディスというわけではないだろうが、「たんぽぽ」のヒットとテーマに辟易としたライカートの発言は面白

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【映画】ター Tár/トッド・フィールド

【映画】ター Tár/トッド・フィールド

ラストシーンのあの光景を観て、昔観に行ったエヴァンゲリオンの音楽をフルオケでやるコンサートを思い出した。そういえば場所も劇中で名前が出てくるBUNKAMURAのオーチャードホールだったし、流石に場所が場所なだけにコスプレはいなかったと思うけれど。アニメやゲームのファンとクラシックファンの違いはあれど、オケの需要という点では差はないのかもしれない。単純に考えれば音を楽しみに来る人々とという所は共通し

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【映画】ゴダールのマリア Je vous salue, Marie/ジャン=リュック・ゴダール

【映画】ゴダールのマリア Je vous salue, Marie/ジャン=リュック・ゴダール

タイトル:ゴダールのマリア Je vous salue, Marie 1985年
監督:ジャン=リュック・ゴダール

マリアの処女懐胎を扱ったという事で、公開当時はキリスト教や信者からの反発がかなりあったとフランス語版のWikiに長文で詳しく書かれている。とはいえキリスト教内でも全ての人が反発したというわけでもなく、中には受け入れる人も少なくなかったという事らしい。色々問題を抱えていたこともあって

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【映画】レッド・ロケット Red Rocket/ショーン・ベイカー

【映画】レッド・ロケット Red Rocket/ショーン・ベイカー

タイトル:レッド・ロケット Red Rocket
監督:ショーン・ベイカー

タイトルが意味する所はレッドネックのロケットというしょうもないタイトルが、まあ監督らしい感じなのだけど、この元ポルノ男優の役柄がどうも憎めない。やってる事も、考えている事も(まあ何も考えてないだろうけど)人として最低なのに、拒絶するべきキャラクターかというとそうでも無い。別居していた妻の実家に転がりこんで、ポルノ男優とい

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【映画】若き仕立て屋の恋 The Hand/ウォン・カーウァイ

【映画】若き仕立て屋の恋 The Hand/ウォン・カーウァイ

タイトル:若き仕立て屋の恋 Long Version The Hand 2004年/2019年
監督:ウォン・カーウァイ

ミケランジェロ・アントニオーニの呼びかけで作られた短編集の一編が、ロングバージョンで公開された。週ごとに映画館をキャラバンしていて、僕が行った日は満席だった。先日リリースされた2046のブルーレイ特典に収録されていたもので、昨年の映画祭では上映されなかった一作。昨年に続き今で

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【映画】最近観た映画2023年4月

【映画】最近観た映画2023年4月

4月はなんといっても去年に続いての待望のシャンタル・アケルマン映画祭。とりあえず「東から」以外の今回上映作4本を鑑賞。前売りを買ってあったのと、招待券を貰っていたのでヒューマントラストシネマに行っては、予約し、次に行っては予約…という数珠繋ぎみたいな状況で忙しかった。前情報は殆ど入れずに挑んだのだけど、昨年の「ジャンヌ・ディエルマン」以上にハードコアな作品ばかりで、中々他の映画ではあの体験はできな

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【映画】午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit/ミカエル・アース

【映画】午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit/ミカエル・アース

タイトル:午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit 2022年
監督:ミカエル・アース

ミカエル・アースの映画の中で描かれる自然光や街の灯りが好きだ。「サマーフィーリング」での燦々と降り注ぐ太陽のひかりや、夢見心地なニューヨークの街の灯り。「アマンダと僕」も悲劇的な出来事と対照的な太陽の日差しと、パリの街街並みは主人公たちと同じくらい物語を雄弁に物語っている。

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【本】気狂いピエロ Obsession/ライオネル・ホワイト

【本】気狂いピエロ Obsession/ライオネル・ホワイト

・原作「気狂いピエロ Obsession」

22年の5月にゴダールの「気狂いピエロ」の原作が本邦初訳で出版された時、あれに原作なんてあるんだっけ?と不思議に思った。シナリオ無しで即興で撮影に取り組んだなど、半ば伝説的に語られている節もあって、ノヴェライズなのかとも思ったけれど、そうではなくこの小説を元に映画が作られたという事が真相の様だ。訳者のあとがきにあるように、願書が日本では手に入りづらかっ

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【映画】最近観た映画2022年12月

【映画】最近観た映画2022年12月

あけましておめでとうございます。
今年も色々映画を観ていこうと計画を練っています。本題に入る前に少し小話を。

この数年、ミニシアター系の作品がソフト化される時にブルーレイとDVDがそれぞれちゃんとリリースされない事が増えてきてる。最近だとジャック・リヴェットとエリック・ロメール、二月に出るシャンタル・アケルマンの作品はバラ売りはDVDのみで、ブルーレイはボックスのみ。ブルーレイを買うならボックス

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【映画】The First Slam Dunk/井上雄彦

【映画】The First Slam Dunk/井上雄彦

タイトル:The First Slam Dunk 2022年
監督:井上雄彦

映画の見どころは、やはりあのマンガの躍動感のままキャラクターが動く事に尽きる。特にスラムダンクの山王戦は、90年代のマンガの中でも屈指の作品だと思うし、基本的にスポ根マンガを全く読まない僕の様な読者でも何度も読み返す度に、緊張感と躍動感に心を突き動かされる。ラストで描かれる、チーム内でも仲の悪い流川と桜木がゴールを決め

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【映画】ヴァージン・スーサイズ Virgin Suicides/ソフィア・コッポラ

【映画】ヴァージン・スーサイズ Virgin Suicides/ソフィア・コッポラ

タイトル:ヴァージン・スーサイズ Virgin Suicides 1999年
監督:ソフィア・コッポラ

90年代を締め括った映画であり、00年代から10年代へのマイルストーンとして結果的に布石を打ったような作品でもある。大傑作かというと甚だ疑問は出てくるし、音楽が前景化しすぎてる粗さも感じられる。エールのサウンドトラックをもっと執拗に繰り返して、物語の中の倦怠感をもっと煽る事も出来たと思う。しか

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【映画】ケイコ 目を澄まして/三宅唱

【映画】ケイコ 目を澄まして/三宅唱

タイトル:ケイコ 目を澄まして 2022年
監督:三宅唱

「やめる理由を聞くと、『コミュニケーションがうまくとれなくて、寂しい』と。」
聴覚に障害を持つプロボクサーという映画の原作となった小笠原恵子さんのインタビューの中で語られていた言葉を読んで、映画の中のケイコが抱えていたもののひとつが、くっきりと浮かび上がったような感覚を覚えてはっとした。映画の中のケイコが”寂しい”とこぼしたわけではない。

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【映画】MEN 同じ顔の男たち MEN/アレックス・ガーランド

【映画】MEN 同じ顔の男たち MEN/アレックス・ガーランド

タイトル:MEN 同じ顔の男たち MEN 2022年
監督:アレックス・ガーランド

「エクス・マキナ」、「アナイアレイション」とSFが続いたアレックス・ガーランドの新作。「エクス・マキナ」に続いて再度A24とのタッグで、アリ・アスター的なオカルトっぽい雰囲気も感じさせるホラー調の作品。ミッドサマー以降、ホラーやオカルトはA24の十八番になってきているものの、そこはアレックス・ガーランドだけに一筋

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【映画】台北暮色 強尼・凱克/ホアン・シー

【映画】台北暮色 強尼・凱克/ホアン・シー

タイトル:台北暮色 強尼・凱克 2017年
監督:ホアン・シー

台湾ニューシネマの巨匠ホウ・シャオシェンをエグゼクティブ・プロデューサーに迎えた、ホアン・シーのデビュー作。ウォン・カーウァイの影響も感じさせるカラフルな色合い(村上春樹っぽい不条理さも含め)が台北の街並みをリリカルに描く。とにかく間や映像の中のアトモスフィアと、エレクトロニカっぽいアンビエント調のサウンドトラックが調和していて、全

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