マガジンのカバー画像

映画めも。

345
観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
運営しているクリエイター

記事一覧

【映画】敵/吉田大八

【映画】敵/吉田大八

タイトル:敵 2025年
監督:吉田大八
※監督名を謝って表記していたため修正いたしました。大変失礼いたしました。

評判の割にはちょっとしっくりこなかったのが正直な所で、つまらなくはないけれど全体を通してピンとこなかった。死へと向かう老後の淡々とした生活の中に差し込まれる、スラップスティックな部分が思っていたほどしっくりこなかったのもある。老後に対するイメージが肌感で少し遠い印象が自分の中にある

もっとみる
【映画】すべての夜を思いだす&短編4作/清原惟

【映画】すべての夜を思いだす&短編4作/清原惟

タイトル:
・短編4作
波 2017年
網目をとおる すんでいる 2018年
これが星の歩きかた 2020年
三月の光 2022年
・すべての夜を思いだす 2022年
監督:清原惟

どこかパラレルに繋がっているような感じの短編4作品は、ファンタジックな寓話性を持たせつつ少しばかりビターな後味を残す。ANAの機内放送用に作られたという「これが星の歩きかた」での閉店後のデパート内の物語や、川辺に置か

もっとみる
【映画】アイ・ライク・ムービーズ I like movies/チャンドラー・レヴァック

【映画】アイ・ライク・ムービーズ I like movies/チャンドラー・レヴァック

タイトル:アイ・ライク・ムービーズ I like movies 2022年
監督:チャンドラー・レヴァック

ポール・トーマス・アンダーソン、トッド・ソロンズ、ヴィンセント・ギャロ、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・クローネンバーグといった映画監督の名前や作品が羅列される度に「お前は俺か!」と拗らせ具合に共感というよりも、恥ずかしい部分をくすぐられるような感じ。舞台となった2003年といえば

もっとみる
【映画】小学校 それは小さな社会/山崎エマ

【映画】小学校 それは小さな社会/山崎エマ

タイトル:小学校 それは小さな社会 2023年
監督:山崎エマ

生まれてからどっぷり日本に浸かっている生活なので、日本の学校と海外の学校の差を意識することはないのだけど、規律やルールを重んじる日本人と海外の人たちとの差はメディアを通じて目にすることは多い。インバウンドが増えている事や、テレビに限らずYoutubeやSNSなどでより個人の視点から切り取られてピックアップされたり、話題になることも少

もっとみる
【映画】ミュージック Music/アンゲラ・シャーネレク

【映画】ミュージック Music/アンゲラ・シャーネレク

タイトル:ミュージック Music 2023年
監督:アンゲラ・シャーネレク

徹底して作り込まれた映像の美しさ。全カットスチールに出来るくらい、ここまで徹底された映画も中々他にないと思う。冒頭の長回しなどにシャンタル・アケルマンマンっぽい雰囲気があるが、淡々としながらも劇的に物語が醸成されていく様は中々に圧倒される。
細かい演出や小道具など、特に説明がないまま進むので、おそらく見逃していた部分や

もっとみる
【映画】どうすればよかったか?/藤野智明

【映画】どうすればよかったか?/藤野智明

映画を観て昔のことがフラッシュバックしたので、少しばかりその話をしたい。
僕が幼い頃、共働きの両親の店のお客の中に何人か若い女性がいて、その人たちが僕の子守りをしていた。その中の一人に映画付きのKという女性がいて、よく映画に連れて行ってくれた。スターウォーズやウィローなど子供が見ても大丈夫なハリウッド映画が主だったが、僕が映画好きになったきっかけはKが連れて行ってくれたことだと思う。映画好きなKは

もっとみる
【映画】ペパーミントソーダ Diabolo Menthe/ディアーヌ・キュリス

【映画】ペパーミントソーダ Diabolo Menthe/ディアーヌ・キュリス

タイトル:ペパーミントソーダ Diabolo Menthe 1977年
監督:ディアーヌ・キュリス

大人にはほど遠く、無邪気な子供からは離れつつある13歳という年頃の主人公。高校生の姉は反抗と政治が結びつつあるが、主人公のクラスではまだその萌芽が少し芽生えつつあるような状況である。ほろ苦さは主人公よりも姉の物語の方が色濃く、恋愛模様や政治、ユダヤへのレイシズムなど時代と世代の描写が落とし込まれて

もっとみる
【映画】Strangers/池田健太

【映画】Strangers/池田健太

タイトル:Strangers 2024年
監督:池田健太

風になびく樹々音が劇中でやたらと繰り返され耳に残る。この音が妙に孤独感を呼び起こすのは、恐らく人気のない広々とした公園や空間の中にある樹々の音に、独りでいるときだけ耳にするからだろう。雑踏や人気のある場所では、どうしても樹々以外の音が耳に入ってくる。この作品でどこか孤独感を感じるのは、そういった記憶が呼び起こされるような気がする。登場人物

もっとみる
【映画】ロボット・ドリームズ Robot Dreams/パブロ・ベルヘル

【映画】ロボット・ドリームズ Robot Dreams/パブロ・ベルヘル

タイトル:ロボット・ドリームズ Robot Dreams 2023年
監督:パブロ・ベルヘル

色々な感情が込み上げる。虚しさから始まり、楽しさや悲しさ、何度も夢見る希望と繰り返される絶望。別れから来るいない事の寂しさは、見果てぬ再会を求めるが過ぎゆく時間の中でしか解決できない。その先にある音楽を介したある種の再会の切なさは、形作られてしまった新たな出会いを壊す事なく進む。
そんな事を頭の中でぐる

もっとみる
【映画】ディア・ピョンヤン | 愛しきソナ | スープとイデオロギー/ヤン・ヨンヒ

【映画】ディア・ピョンヤン | 愛しきソナ | スープとイデオロギー/ヤン・ヨンヒ

タイトル:ディア・ピョンヤン 2005年
監督:ヤン・ヨンヒ

タイトル:愛しきソナ 2009年
監督:ヤン・ヨンヒ

タイトル:スープとイデオロギー 
監督:ヤン・ヨンヒ

人種や国籍、住んでいる場所と祖国とは一体何なんだろう?関西弁の会話だけを聞けば大阪に住む関西人だし、日本で暮らす日常は在日の人だろうと日本人と暮らしぶりはそう変わりはない。食文化の違いといっても、昨今は韓国料理も日常で簡単に

もっとみる
【映画】エターナル・サンシャイン Eternal Sunshine of the Spotless Mind/ミシェル・ゴンドリー

【映画】エターナル・サンシャイン Eternal Sunshine of the Spotless Mind/ミシェル・ゴンドリー

タイトル:エターナル・サンシャイン Eternal Sunshine of the Spotless Mind 2004年
監督:ミシェル・ゴンドリー

タダ券があったので、渋谷に向かったらハロウィン当日というのを忘れてて駅周辺は大混雑。ル・シネマが駅前だから苦もなく到着できたけど、シネクイントだったら劇場に着くまでが大変だったかも。そういえば日韓ワールドカップの時も、混雑する渋谷の人々を傍目で見

もっとみる
【映画】ECMレコード サウンズ&サイレンス/ペーター・グイヤー&ノーベルト・ヴィードマー

【映画】ECMレコード サウンズ&サイレンス/ペーター・グイヤー&ノーベルト・ヴィードマー

タイトル:ECMレコード サウンズ&サイレンス Unterwegs mit Manfred Eicher 2009年
監督:ペーター・グイヤー&ノーベルト・ヴィードマー

ECMのバイオグラフィーを辿る映画と思いきや、2009年当時のレコーディング風景を捉えたドキュメンタリーに仕上がっていて、タイトル通りレーベルオーナーであるマンフレード・アイヒャーとの旅を記録したロードムービーの趣きもある。
E

もっとみる
【映画】国境ナイトクルージング Breaking Ice/アンソニー・チェン

【映画】国境ナイトクルージング Breaking Ice/アンソニー・チェン

タイトル:国境ナイトクルージング Breaking Ice 2024年
監督:アンソニー・チェン

冒頭の氷を口に頰張り噛み砕く時の静かさの親密さと、それを打ち崩す友人の掛け声で静寂が崩れていく。この映画がどういう作品なのかが冒頭から伝わってくる。しかしながら中国語と韓国語が入り混じり、結婚式は韓国式に挙げられていて、中国人観光客を乗せたバスに連れられていくのは餅つきとキムチの作り方の実演で、サム

もっとみる
【映画】Super Happy Forever/五十嵐耕平

【映画】Super Happy Forever/五十嵐耕平

タイトル:Super Happy Forever 2024年
監督:五十嵐耕平

ぱっと見でなんでこんな陽気そうなタイトル?と思わせるが、見終わった後にこれ以上のタイトルは無いと感じる。SHF(Super Happy Forever)というどうみてもカルトなセミナーの存在と、凪のカップラーメンを食べる時の「ずっとめちゃめちゃ幸せでいられる」というフレーズ。物語の前半後半それぞれでタイトルに由来する

もっとみる