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【映画】The First Slam Dunk/井上雄彦
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タイトル:The First Slam Dunk 2022年
監督:井上雄彦
映画の見どころは、やはりあのマンガの躍動感のままキャラクターが動く事に尽きる。特にスラムダンクの山王戦は、90年代のマンガの中でも屈指の作品だと思うし、基本的にスポ根マンガを全く読まない僕の様な読者でも何度も読み返す度に、緊張感と躍動感に心を突き動かされる。ラストで描かれる、チーム内でも仲の悪い流川と桜木がゴールを決めた直後のタッチのシーンは脳裏にいつまでもこびりついている。
映画で驚かされたのは、原作の主人公の桜木やスター選手の流川を脇に置いて、宮城リョータを主役においた事だろう。さらに今までキャラクターの過去は原作ではあまり描かれなかっただけに、リョータの家族や過去を主軸にした事で山王戦へ至る想いが更に奥行きを持ったものになったと感じられる。監督のインタビューでも、原作を書いていた当時はまだ二十代だったため高校生側の視点しか持ちえなかった事から、年齢を重ねる事でそのバックグラウンドを広げる視点を取り入れる視野を持つ事が出来たと語っていて、それらが無理なく落とし込まれていた。付け足した感が全く無いかというと、そうでもないのだけれど、それほど違和感なく入ってきたし、回想部分がある事でリョータが山王戦に挑む上での心意気は十分感じられた。
そしてこう言った物語を、完結してから四半世紀以上経った今、原作者本人が映画にしたというのも驚きだったと思う。誰かに任せるよりも、本人がクオリティコントロールした事が本作の臨場感とマッチしていて、かつてのテレビシリーズとは全く違う領域まで押し上げていた。例えばAKIRAの劇場版も大友克洋本人が監督しながらも、原作をリブートした様な別物へと昇華させるものはあったけれど、原作がもつ持ち味を最大限に活かしながらアニメに落とし込むスタイルは、今後他のマンガ原作にも波及するかもしれない。
ただし、原作と大きく異なるのがデフォルメやコミカルな要素をバッサリと切り落としている部分で、それも原作の大きな魅力のひとつだっただけに、英断だった感じられた。インタビューにもある様に、マンガ的要素を映画に落とし込むのが難しかったというのも要因ではあるものの、シリアスさを重点に置いても十分にその魅力は失われずに描き切ったのは素晴らしいと思う。
音楽に関しては、ロックよりもR&Bやヒップホップの方がキャラクターに親和性があったんじゃ無いかなとちょっと思ってしまった。まあこの辺りは趣味趣向の問題なのだけども。激しさは出にくいからなあ。