うつ病 兆候
始まりは些細なミスだった。
取りに行ったはずのものが思い出せない。
今日やるはずだった仕事を忘れる。
そのうちミスが増えてきた。
落ち込む日も増えていた。
更年期かもしれない、と思った。
そしてある日、毎日のルーティーンである機械の立ち上げ手順がわからなくなった。
明らかに異常事態だった。
頭が重く、何も考えられない。
苦しい。
思いきって仕事を早退して心療内科に行ったが、病院の駐車場に車を停めたまま、中にはいることが出来なかった。
「心療内科」と検索すると
心療内科は、心理的要因から身体症状があらわれる「心身症」の治療を主な対象とするものと定義されています。
と書いてある。
頭は重いが痛いところは思い当たらず、身体症状がないのに、何を話していいかわからなかったからだ。
その頃には食欲も落ち、眠れなくなっていたが、まだ私は自分の体の異常を正常の範囲内だと思いたかった。
夫の一件からすでに5ヶ月が経過していた。
夫は新しい仕事も決まり、すっかり落ち着きを取り戻していた。
あれだけ苛立っていたコロナも日常になり、皆も落ち着きを取り戻しはじめていた。
もう、「マスクは入っているのか?」と聞かれることもなくなっていた。
私は悩みを人に話すことができない。
相変わらず職場の皆の愚痴は聞いていた。
皆の愚痴もコロナ以前のような、同僚や家族についてに戻っていた。
皆、未知の病との闘いが長期戦になったことで、コロナ以前の落ち着きを少しずつ取り戻している。
アフターコロナで変わったことは沢山あったが、少しずつ馴染みはじめている。
私だけ取り残されたように日常に戻れないでいた。
情けなく、孤独だった。
完全に眠れなくなり、食事が思うように取れなくなり、大きな声の人を見かけただけで涙が止まらなくなった。
人が恐ろしかった。
仕事中に何度もトイレにこもり、出られなくなった。
ようやく周りの人にも私のミスが気付かれ始めた頃、私は精神科に行った。
うつ病と診断された。
令和2年、10月22日から休職に入った。
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