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#読書感想文

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文芸書から自己啓発書まで、読書感想文として書き留めています。ご参考になれば幸いです。
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2022年7月の記事一覧

ミア・カンキマキ(2021)『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』の読書感想文

ミア・カンキマキ(2021)『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』の読書感想文

ミア・カンキマキ、末延弘子さん翻訳の『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』を読んだ。2021年7月に草思社より出版された本である。

本書は清少納言に魅了された38歳のフィンランド人女性が、仕事と人生に飽き飽きして、「清少納言を調べる」という理由で一年間休職し、京都へ行ってしまう、という話である。大胆な決断で、なかなか真似できるものではない。

ノンフィクション(エッセイ)であり、学術書では

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クーリエ・ジャポン編(2021)『新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 』の読書感想文

クーリエ・ジャポン編(2021)『新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 』の読書感想文

クーリエ・ジャポン編集の『新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 』(講談社現代新書)を読んだ。

なかなか豪華な面子が揃っている。

2021年1月に出版され、新型コロナウィルスによって社会に急激な変化が起きているさ中に行われた世界的著名人に対するインタビュー集である。わくわくしながら賢人たちの言葉に耳を傾けるべきなのだが、2022年7月22日は、日本の新型コロナ新規感染者数は20万975人で過

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カズオ・イシグロ(2011)『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』の読書感想文

カズオ・イシグロ(2011)『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』の読書感想文

カズオ・イシグロの『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』を再読した。文庫本は2011年2月にハヤカワepi文庫より出版されている。翻訳は土屋政雄さん、解説は中島京子さんである。

はじめてこの本を読んだとき、ゲラゲラ笑いながら読んだ。滑稽さとおかしみがあって、その軽妙洒脱な文体に驚いたことを記憶している。

今回、再読して感じたことは、切なさであった。

「老歌手」と「夜想曲」は別れようとす

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鬼頭政人(2022)『資格試験に一発合格する人は、「これ」しかやらない 忙しい社会人のための「割り切る勉強法」』

鬼頭政人(2022)『資格試験に一発合格する人は、「これ」しかやらない 忙しい社会人のための「割り切る勉強法」』

鬼頭政人さんの『資格試験に一発合格する人は、「これ」しかやらない 忙しい社会人のための「割り切る勉強法」』を読んだ。PHP研究所から、2022年3月に出版された本である。

わたしは今、FP3級の勉強をしている。簡単だとか、独学でも十分だと言われたりもしているが、その人の背景によって勉強量、勉強時間は大きく違ってくるだろう。わたしは青色申告や確定申告の経験はあるので、まあ、ここは間違えないだろうぐ

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ケン・ローチ,是枝裕和(2020)『家族と社会が壊れるとき』の読書感想文

ケン・ローチ監督と是枝裕和監督の『家族と社会が壊れるとき』を読んだ。2020年12月にNHK出版新書から出された本である。

ケン・ローチの近年の作品には、『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』といったものがあり、現役で活躍中の監督である。1936年生まれで、なんと今年(2022年時点)で86歳! 70代、80代でも、耄碌せず、作品の質が下がらないのは、とんでもなくすごいことだと思う。

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村上春樹(1982)『風の歌を聴け』の読書感想文

村上春樹(1982)『風の歌を聴け』の読書感想文

村上春樹の『風の歌を聴け』(1982年に講談社文庫から出されたもの)を再読した。言わずと知れた村上春樹のデビュー作でもある。

何度か読んだことがあるはずなのだが、内容はあまり覚えていなかった。ただ、村上春樹がデビュー作で自分の文体を確立させていたことに驚く。これはすごいことだ。凡百の作家たちは、独自の文体を持たぬまま、書き続けることになる。読めば、村上春樹だとすぐにわかるし、この文体の模倣犯が、

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笹山尚人(2017)『ブラック職場~過ちはなぜ繰り返されるのか?~』の読書感想文

笹山尚人(2017)『ブラック職場~過ちはなぜ繰り返されるのか?~』の読書感想文

弁護士の笹山尚人さんの『ブラック職場~過ちはなぜ繰り返されるのか?~』を読んだ。光文社新書より2017年11月に出された本である。

本書は電通の社員の過労死事件から始まる。驚くことに、裁判になっている電通の過労死事件は3件もあるのだという。最悪の事態が3件もあるということは、自己都合退職に追い込まれた人もたくさんいるのではないか。

国の事業を請け負い、下請けに丸投げをして、中抜きが盛んな電通さ

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レベッカ・ブラウン(2004)『体の贈り物』の読書感想文

レベッカ・ブラウン(2004)『体の贈り物』の読書感想文

レベッカ・ブラウンの『体の贈り物(原題:The Gifts of the body)』を再読した。新潮文庫から2004年9月に出されており、翻訳は柴田元幸さんである。

何度も読み返してきた本ではあるが、年を取ってから読むと、また違う味わいが出てきた。中年の入り口に読むのと、二十歳前後で読むのは、やはり全然読後感が違う。

(数年前、疲れ果てているときに読んだら、JRのホームでなぜか号泣してしまっ

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