丸山眞男著『日本の思想』第一章を読む(2)
「日本の思想史は時代の知性的構造や世界観の発展、あるいは知的関連をたどる研究が甚だ薄弱だった」と丸山はいう。
それは日本史を通じ思想全体の構造に深く根差した性質で、日本の思想の内部構造を立体的に解明する事が困難なのは、あらゆる時代の観念や思想に否応なく総合連関性を与え、すべての思想的立場が自己を歴史的に位置付けるような中核、あるいは座標軸にあたる思想的伝統が形成されなかったためだという。
多くの文学者や歴史家によって、近代日本人の意識や発想が、無常観やもののあわれや