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#292「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(5月3日〜5日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


5月3日(月) 日本の2大通信社は電通の大株主!?

1991年のUNESCO総会決議に基づき、1993年12月の国連総会で制定された「世界報道自由デー」です。

報道
いわゆるメディアとしてのテレビ局、新聞社については以前取り上げて、インターネット広告が伸びる中、苦戦している様子をご紹介しました。
今回は、報道、ということで、よく見かける「通信社」について調べてみました。

そもそも通信社、とは何でしょうか?

通信社は記者を抱え、取材を行い、そこで得た情報で記事を作成し、契約しているメディア(新聞社やテレビ局、ラジオ局、最近ではネットメディア等)に配信しています。

当然、新聞社やテレビ局も自前で記者を抱えていますが、世の中全部のニュースをカバーできるほどではありません。特に大手ならともかく、地方紙や地方局などは限られた記者などは地元の情報を手厚くカバーするために使って、その他の情報については通信社の情報を使用する、というような使い方をするわけです。

要するに、通信社は情報収集専門の組織、ということで、自社では最終的な読者や視聴者へ届ける手段を持たない点が最大の特徴です。情報のBtoBみたいなイメージでしょうか?

そんな通信社ですが、日本には「共同通信」と「時事通信」の2大通信社が存在します。どちらも耳にしたことがありますね。

ともに1945(昭和20)年の設立ですが、実は「同盟通信」という組織の解散を受けて設立されたのでタイミングが一緒になっているのです。
もっと遡ると最初の通信社とも言える組織は1901(明治34)年の「電報通信社」まで行きつきます。現在の電通もこの組織から派生した組織で、実際、共同通信社は電通株の6.74%、時事通信社は同5.69%を保有し2位と3位の大株主でもあります(下表:電通HP)。

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では、共同通信社の株主は?というと、実は株式会社ではなく一般社団法人なのです。出資者はNHKをはじめとしたメディア各社で、実際、共同通信社の理事にはNHKをはじめとした新聞社各局がずらりと並んでいます(下リンク先参照)。


一方の時事通信社は株式会社ですが、株は社員が持つ形で運営され外部に株主はいません

両社の違いですが、設立当初は再度合流する思惑もあったようで、時事通信社は経済ニュースに特化することで競合を避ける配慮があったようですが、それでは経営的に厳しいこともあって、今では競合となっています。

次に両社の売上等を見てみましょう。数字はともに2020年3月期です。
すでにご案内の通り、共同通信社は社団法人で開示項目が少ないです…
規模では圧倒的に共同通信社の方が大きいことがわかります。

☑️ 共同通信社
総資産 1,193億円
売上高 422億円

☑️ 時事通信社
総資産 423億円
売上高 171億円
純利益 6.8億円


最後におまけなのですが、個人的な驚きとして、本頭の体操でもよくお世話になる矢野経済研究所が、共同通信社のグループ企業だったのです。知らなかったです…

→通信社。顧客となっているメディア各社は広告収入が厳しい状況だが、通信社は今後、どうなっていくだろうか?


5月4日(火) 「デジタル名刺市場」はほぼ1社独占!?

日本名刺研究会が制定した「名刺の日」です。
May(メイ)四(し)で「めいし」の語呂合せ。

名刺。
感染症下でオンラインの面談が多くなり、交換する機会も減ったのではないでしょうか?

紙の名刺の市場規模データがないか調べてみたのですが、ちょっと見つかりませんでした。
代わりに矢野経済研究所の「一般印刷市場に関する調査」から国内の印刷市場規模推移をみるとやはりペーパレスなどから市場は縮小傾向であることがわかります(下図)。

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さらに、2020年4〜5月については単月売上高が3割から5割減という印刷企業が多く、特にチラシやパンフレットなどの販促需要は激減しているとのこです。

矢野経済研究所では、2020年度について、リーマンショックと同程度の1割ほどの減少が予測されるが、新たな需要(注意喚起チラシなど)もあることから、前年度7.1%減の3兆1,940億円と予測しています(昨年10月時点)。

飛び込み営業含む対面の営業活動は大幅に減少していることから、名刺の需要もかなり減少していることが予想されます。

この状況下でも伸びているのが、名刺管理サービスです。

シード・プランニングによると、この名刺管理サービス市場2012年の10.8億円から2015年32.6億円、2019年130.5億円と拡大しています(下図)。

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最大手はシェア8割を超えるSansanで、2位がハンモック、3位がキャノンエスキーシステムとなっています(下図)。

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Sansanは2020年の6月には「オンライン名刺」機能を自社のEightだけでなく、Microsoft Teamsに連携してリリースしています。

先月公表された直近のSansanの決算(2021年5月期第3四半期)をみてみましょう。

2020年6月から2021年2月までの9ヶ月の実績では、売上高117.5億円(前年同期比21.5%増)、営業利益8.2億円(前年同期比324.5%増)と大変な伸びとなっています(下表)。

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同社は法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と名刺で取り込んだ情報を活用するSNSのようなサービス「Eight」の2つが大きな柱になっていますが、その内訳は以下のようになっており、Sansan事業の割合が大きいことが分かります(下表)。

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決算説明資料を見ていて印象的なのが、特にSansan事業での「ストック収入」の安定感です。直近ではその割合は実に94.3%となっていてほとんどがストック収入です(下図)。

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ストック収入で怖いのは解約ですが、12ヶ月平均解約率はなんと0.65%と極低位(下図)で、いわゆるネガティブチャーン(解約による収入減より既存契約による収入増加が上回る)を実現しています。

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さらに、契約数を順調に積み上げるだけでなく、契約あたりの月次売上も増やすことに成功しています(下図)。

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あとは、市場が飽和してしまうことが成長が止まる要因ですが、従業員1,000人以上の大企業に限ってもSansanのカバー率は15%、それ以下になれば3%程度でまたまだ拡大余地がある、としています(下図)。

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→元々は紙の名刺の情報整理(スキャンした名刺情報をOCRと人力(!?)でデータ化する)からスタートしたサービスだが、この状況下で電子化した名刺そのものを提供するサービスまで提供することになった。今後、同社はどのようなサービスを提供することができるだろうか?それはどのような相乗効果があるだろうか?


5月5日(水) 通勤に自転車が最も使われる自治体は○○市!?

自転車月間推進協議会が1998(平成10)年に制定した「自転車の日」です。
自転車月間の中の祝日を自転車の日とした。

自転車。
いわゆる「密」を避けるため、自転車が売れている、ということが報道されていましたが、実際のところはどうなのでしょうか?

一般社団法人自転車産業振興協会の「自転車国内販売動向調査年間総括(2020年)」の「1店舗当たり平均総販売台数」によると、例年梅雨の時期にあたり需要が減る6月7月に販売台数が増えていることがわかります(下図)。

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ところが、通年で比べると、昨年から 2.8%しか増えていないのです。ちょっとイメージと異なりました。しかも、地域別で見ると、北海道・東北が13.7%増、関東3.6%増であるのに対し、中国・四国・九州は3.9%減、近畿は2.6%減と減少しているのです(下図)。

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関東は電車通勤からのシフトで、と思うと、近畿はなぜ減っているかわかりませんし、従来から車通勤が多いであろう北海道・東北がなぜ増加が大きいかも分かりません…

次にもう少し違う側面から自転車を見てみましょう。

国土交通省では自転車の活用推進に向けた有識者会議を2017年から行なっています。2020年9月の同会議資料「自転車の活用に関する現状からいくつかデータをご紹介します。

まず、自転車の保有台数の推移です。2019年時点の自転車の保有台数は6,761万台(約2人に1台)で、2000年ごろから横ばいです(下図)。

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次に自転車の利用状況ですが、移動における各交通手段の「分担率」という概念があるそうで、それによると、自転車の分担率は13%となっています(下図)。

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都市別で差があって、最も高いのは大阪市で28%、東京23区では14%とほぼ平均で、沖縄市は2%となっています(下図)。

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次にあってはならないですが、自転車による事故について。
交通事故による死者数は平成4年から7割減っているのに対して自転車乗車中の事故死者数は6割減と減少ペースが低くなっています(下図)。

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自転車対歩行者、自転車同士、自転車単独の事故が平成27年頃から増加していることがその原因のようです(下図)。

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最後に、CO2削減、という観点から自転車をみたデータをご紹介します。同有識者会議の「自転車の活用の推進に関する指標についてによると、5キロ以内の通勤で過半を占める自動車から今後10年間で3割を自転車にシフトすることを目指しています(下図)。

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→自転車。報道では売れている、ということだったが地域差があることが分かった。なぜこの地域差は生まれたのだろうか?



最後までお読みいただきありがとうございました。

「報道」。よく聞く共同通信とか時事通信というものの正体がわかりました。電通の大株主とはねぇ。そしてあの矢野経済研究所も関係していたとは…

「名刺」。これも数年後に振り返ったらあの時が転換点だったということになりそうです。Sansanの今後にも注目ですね。

「自転車」。密を避ける通勤、レジャーという側面だけでなく、増えれば事故という負の側面があることを気づかせてくれました。また、CO2削減の面からも期待される役割があるんですね。


このような頭の体操ネタ、昨年7月から続けています。
以下のマガジンにまとめていますので、よろしければご覧ください。必ず「へぇ〜」があると思います。


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