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作家犬と影武者の僕15 いぬころ病
「ぷう、もうやめよう! 寝ないと!」
「止めてくれるな。おれは寝るわけにはいかないんだ」
高熱と喉に激痛が走るという『いぬころ病』に罹りながら締め切りを倒したぷうと僕の、激動の八月を語りたい。
*
僕が飼っている白いフレンチブルドッグのぷうは、作家犬だ。
犬が書いているとばれては困るので、僕は影武者として、編集者さんとの打ち合わせに参加したり、会合に出席したりしている。
今年のお盆
作家犬と影武者の僕 14友達のはなし
僕の飼い犬、白いフレンチブルドッグのぷうは、ミステリ作家だ。
犬が書いているとバレては困るので、僕はその影武者として、打ち合わせや各方面の連絡をしたりしている。
ぷうの友達のハリネズミが、急に死んでしまった。
つい先日、2月のあたまに、「だいたい4歳ハッピーバースデー」と言って祝ったばかりだった――彼は外国生まれで、誕生日は2月初旬というざっくりとした情報しかなかったのだ。
おととい
作家犬と影武者の僕13 あした、じゅんすた村が始まる
僕が飼っているフレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
犬が書いているのだとばれたら困るので、僕は影武者役として、出版社のひとと打ち合わせなどをしている。
夏も盛り、なんて言ってしまいたくなるほどに、連日暑い。まだ七月の半ばだというのに。
パソコンに向かってぺちぺちと肉球を叩きつけていたぷうが、ふと手を止めた。
「おい。じゅんすたがまた、酔狂なことを始めるようだぞ」
「酔狂……?
作家犬と影武者の僕12 夢
僕の飼い犬、白いフレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
僕はその影武者で、犬が書いているのだとばれないよう、打ち合わせや各方面の連絡をしたりしている。
「ダメだった……」
ぷうが、ベッドの中で丸くなっていた。
「どうしたの。先輩たちとお話、楽しかったんじゃないの?」
「いや。話はとても興味深く、大変刺激になったし参考にもなった。すごく楽しかったのだが……」
そう言いながらも、ぷう
作家犬と影武者の僕11 友達のこと
我が家のフレンチブルドッグ・ぷうは、駆け出しの作家である。
もちろん、作者が犬であることは内緒で、僕は影武者として執筆しているふりをしている。
散歩嫌いのぷうが、桜を見に行こうと言いだした。
ぷうは思っていることがあまり表情に出ないタイプだから――真顔か、眉間にしわが寄るくらいだ――少し心配していたのだけど、深く気分が沈んでいるわけではないのならよかった。
先日、ぷうの友達のハリネズミ
作家犬と影武者の僕10 確定申告
僕の飼い犬、フレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
去年の春、最上川ミステリ大賞を受賞してデビューした。
僕はその影武者で、犬が書いているのだとばれないよう、代わりに打ち合わせに行ったりしている。
ぷうのパソコンを借りること数時間。
うんうんうなる僕を見かねたのか、窓際でひなたぼっこをしていたぷうが、眉間にしわを寄せてやってきた。
「まだやっているのか、確定申告」
「うん……」
作家犬と影武者の僕9 休み失敗
我が家のフレンチブルドッグ・ぷうは、駆け出しのミステリー作家だ。
僕はぷうの影武者として、編集者さんとの打ち合わせややりとりを代わりにしている。
「ぷう、大丈夫……?」
「あと……、あと四時間三十六分……」
ぷうは壁掛け時計を見上げながら、死にそうな声でつぶやいた。
時刻は夜の七時半。
夕食を食べ終えたあと、ぷうはそのまま、ダイニングテーブルの上でくたっとしている。
「なんか、全然休み
作家犬と影武者の僕8 怪我
我が家のフレンチブルドッグは、駆け出しのミステリー作家である。
名前はぷう。四歳。オス。
もちろん、作者が犬であることは内緒だ。
僕は影武者として、ぷうの代わりに打ち合わせに行ったり、編集者さんとやりとりしている。
「お大事にどうぞー」
僕はぷうを抱えて動物病院を出て……五秒後に泣いた。
「ごめんね、ごめんねぷう。大事な前足を怪我させちゃって。僕が、僕があんな、僕が……っ」
「もういい
作家犬と影武者の僕7 マシュマロに答える
お正月限定限定で、ご質問を募集しました。
ぷうが代わりに答えてくれたので、そのまとめです。
マシュマロを投げてくださった方、お読みいただいた方、ありがとうございました!
また来年のお正月もやるかも?
作家犬と影武者の僕6 ぷうの、この半年の激甚な悩みをお見せしよう
僕の飼い犬、白いフレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
去年の春、最上川文学賞を受賞してデビューした。
僕はその影武者で、犬が書いているのだとばれないよう、代わりに打ち合わせに行ったりしている。
(いままでとちょっと設定が違うじゃないかと気づいた方は、真のぷうファンだ!)
ふと横を見ると、ぷうが、何かをやりきったような顔をしていた。
机に前足を乗せて、器用にのびをしている。
「
作家犬と影武者の僕5 イラスト
僕の飼い犬、白いフレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
ネットに投稿していた小説が注目されて、去年の春にデビューした。
もちろん犬が書いているということは内緒なので、僕が影武者役だ。
最近ぷうが、やたらに、iPadを貸して欲しいと言ってくる。
何かと思えば、絵を描いているのだ。
器用に肉球の間にペンを挟み、しゃかしゃかと線を引いている。
ひょいと覗くと、池の周りにたんぽぽが
作家犬と影武者の僕4 人間の神性
我が家のフレンチブルドッグ・ぷうは、駆け出しの作家である。
ウェブ小説で連載していたミステリーが注目されて、去年の春にデビューした。
もちろん、作者が犬であることは内緒で、僕は影武者として執筆しているふりをしている。
ぷうが、パソコンの画面を眺めながらぼーっとしていた。
最近、ツイッターを始めたらしい。
当然友達はいないので、好きな作家さんを密かにフォローして、見ているようだ。
画
作家犬と影武者の僕3 ネット禁明け
僕の飼い犬、白いフレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
細々と投稿していたネット小説が注目されて、去年の春にデビューした。
僕はその影武者で、犬が書いているのだとばれないよう、打ち合わせに行ったりする――気が弱いので、毎回胃が痛い。
からりと晴れた空。天窓を開けると、室内にゆったりとした新鮮な空気が入ってきた。
梅雨の晴れ間。僕は少し気分がよくなる。
隣に座るぷうも、きょうは
作家犬と影武者の僕2 無知への焦燥
僕の飼い犬、フレンチブルドッグのぷうは、ミステリー作家だ。
ウェブ投稿サイトに細々と載せていた小説が注目されて、去年の春にデビュー。
僕はその影武者で、ぷうが犬だと知られないように、出版社へ行ったり書店にあいさつ回りをしている――気が弱いので、毎回胃が痛いのだけど。
ぷうが最近、やたらにむつかしい本を読んでいる。
初夏の日差しが射し込む、のどかで正しいゴールデンウィークの昼下がり。