作家犬と影武者の僕4 人間の神性
我が家のフレンチブルドッグ・ぷうは、駆け出しの作家である。
ウェブ小説で連載していたミステリーが注目されて、去年の春にデビューした。
もちろん、作者が犬であることは内緒で、僕は影武者として執筆しているふりをしている。
ぷうが、パソコンの画面を眺めながらぼーっとしていた。
最近、ツイッターを始めたらしい。
当然友達はいないので、好きな作家さんを密かにフォローして、見ているようだ。
画面をのぞき込んでみると、フォローの面々は、気鋭の若手作家さんや、ぷうと同時期にデビューしたひと、ぷうと同じ出版社から出している人気作家さんなどだった。
「ぷう、こんなにフォローしてて、焦ったりしない? たくさん仕事をしていたり、次々新しい本を出していたり……僕だったら、自分と比べちゃってへこみそうだなあ」
本気で心配したのだけど、ぷうはぽかんとして僕の顔を見つめたあと、短い首をきゅーっと曲げて言った。
「何を言っているんだ……? 犬が、人間さまと自分を比べるなんて、おこがましいだろう」
「はい?」
「君はなんだ、『自分は神様と比べて空も飛べないし、ダメな人間だなあ』などと思ってへこむのか?」
「いや、ならないけど……」
ぷうは、いぶかしげな視線をよこした。
「ツイッターは、神々の観察だ。というか、この世界に出版されている本は全て人間が書いたものだから、犬であるおれの小説より優れているのが当たり前なんだ。へこむわけないだろう。へこむことすらできん。比べるなんて畏れ多――」
「分かった分かった。ごめんよ、変な質問をした僕が悪かったよ」
ぷうは真顔で元の方向へ向き直り、ぱちぱちと入力を始めた。
『はじめてつぶやきます▽・w・▽ ツイッター面白いです▽・w・▽』
……いや、キャラがブレてる!
(了)