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記事一覧
「この世ならざる音」を求めて/日本の電子音楽と大野松雄。
〇科学の時代の音楽〜電子音楽とミュージック・コンクレート
1930年代後半。ヒトラーの冗長な演説を途切れることなく録音、放送するため、ナチスドイツにおいてテープレコーダーの技術が完成した。
続く1940年代。テープレコーダーをはじめとする音を記録する科学技術の成熟とともに「テープ音楽」と分類される音楽がヨーロッパで生まれた。それには大きく分けて2種類の音楽が含まれる。一つは、発振器で発生させ
鳴りやまぬ警鐘/「メトロポリス」フリッツ・ラング&ジョルジオ・モロダー
「メトロポリス」はご存知で?
(戸田奈津子構文)
1927年公開、近未来の超巨大都市を舞台に労働者と資本家の軋轢と、それによって起こる暴動を描いたSF作品であります。
さらっと言いましたが、スケールの大きな階級闘争を真っ向から描いていて娯楽映画としては実に深刻なものだったりします。監督はドイツ映画の父、フリッツ・ラング。1927年といえば海外ではビートルズのメンバーは誰も生まれておらず、
初めて映画で使われた電子音楽/「禁断の惑星」とバロン夫妻
1947年、アメリカで世界初のUFO目撃事件が話題となり、人々の関心は空へと向けられた。空を飛ぶ宇宙からやってきた謎の物体、それは冷戦下の核の恐怖の裏返しであったが、来るべき宇宙時代への憧れもそこにはこめられていた。それと呼応するかのようにSF文学も成熟期に入り、クラークやハインライン、P・K・ディックといった現在でも読み継がれている作家たちの作品が次々と発表された。
1950年代に入ると映画
悪魔とドライヴ/ロック史に潜む悪魔の影
【注】本記事は「悪魔/悪魔主義」がロックに及ぼした影響をいくつかの事例で紹介する内容であり、オカルト的に考察するものではありません。悪しからず。
エルビス・プレスリーの登場以来、ロックは一部の良識的な人々から「悪魔の音楽」と批判され続けている。そして、「ロックは悪魔の音楽」と自称した人々もいた。自らの神秘性を高めるために称した者や、無邪気に悪魔的なイメージを演じた者が大半であったが、ある者は血
ロックンロール・ハイスクールの必須科目/「ブルース・ブラザース」
個人的な話だが、昔、レンタルビデオ店でバイトしてたときや、バンドリハーサルスタジオで働いていた時、誰もが好きという映画が2本あった。一つは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、そしてもう1本が今回紹介する「ブルース・ブラザース」だ。観たことがない、という人はいたが、この映画が嫌いという人に会ったことがない。自分は親が洋楽好きでレイ・チャールズなどのリズム&ブルーズや、そこにルーツを持つローリング・
もっとみる夢見てちゃダメ。夢になりなさい。/よいこのための「ロッキー・ホラー・ショー」入門。
「ロッキー・ホラー・ショー」はもっとも有名な「カルト映画」だ。
恩師のもとへ結婚の報告に向かうドライブの途中、車がエンストしてしまったカップルが、近くの屋敷に電話を借りに訪れる。その屋敷はパーティの最中で、2人は成り行きで参加することに。現れた主人、フランクン・フルター博士はビスチェにガーター、網タイツにハイヒール、オバサンパーマにドギツイ化粧というとんでもない姿のトランスヴェスタイト。しか
「ゴジラ」を生んだ音響と音楽/伊福部昭・三縄一郎・下永尚
日本特撮映画の原点、ゴジラ。
もはや説明不要、水爆実験の放射能によって怪物化した古代生物の生き残り。都市を蹂躙し、口から吐く白い炎は街を炎上させ、歩いた後には瓦礫の山しか残らない。登場から60年以上経過した現在でも人気を保ち続けている、まさに怪獣の王である。第1作目「ゴジラ」は昭和29年に公開。後に黒澤映画の第二班監督も務める本多猪四郎の戦災の記憶を基調とした手堅い本編演出と、この世には存在し
恐怖のホラー改革/ゴブリンとダリオ・アルジェント
現在では、ホラー映画にロックが流れるのはおかしいことではない。なにせ、ホラーとロックは食い合わせがいい。タランティーノ的なアプローチで既製のロックの名曲を「ここぞ!」というところで流したり、ヘヴィロック系の旬のアーティストに曲を書き下ろさせ、秒単位で湯水のように音源を使いまわしたりと色々だ。いいアーティストをつかまえられれば、サントラの売上も見込めるので製作者としてもウハウハだろう。
ところが