マガジンのカバー画像

読書感想文

23
日々綴る読書感想文をまとめてみました
運営しているクリエイター

#夏目漱石

こころを読んで

こころを読んで

「こころ」は漱石の明治という時代に対する遺書のつもりで書いたと思います。

常に一人称の私という語り部が物語をつづります。3部構成になっていて上【先生と私】は推理小説みたいな展開になっています。 

私わたくしはその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間をはばかる遠慮というよりも、そのほうが私にとって自然だからである。

冒頭はリズミカルな文章で

もっとみる
「三四郎」あらすじ解説【夏目漱石】4・金銭関係

「三四郎」あらすじ解説【夏目漱石】4・金銭関係

前回はこちら

金銭貸借ドラマ「鏡像構成」の折返し点で、人間関係が金銭関係に変換されました。

元来が「三四郎」というタイトルの数値ドラマです。いよいよ本題に突入します。本題は経済問題です。漱石は無駄に込み入った話を用意しました。以下ダラダラとした説明になります。

元来広田の大家は高利貸しで、金に汚くむやみに家賃上げてきます。書生の与次郎が怒って退出を宣言しました。なんとか家は探しましたが、敷金

もっとみる
「夏目漱石」読み解き一覧

「夏目漱石」読み解き一覧

「坊っちゃん」は下敷きが「ファウスト」と認識されず、「草枕」は冒頭のみ有名で、「二百十日」は人気がなく、「野分」はしばしば意味を逆に取られ、「虞美人草」は完読する人すら少なく、「坑夫」は提言の重要性を受け止めてもらえず、「夢十夜」は全体構造踏まえた鑑賞をされず、「三四郎」はタイトルに数字使うも経済ドラマとは認識されず、「それから」は「ニーベルングの指環作品群」に含まれると思われず、「門」は時間が主

もっとみる
「三四郎」あらすじ解説【夏目漱石】5・絵画

「三四郎」あらすじ解説【夏目漱石】5・絵画

前回はこちら

素性不明の人物・原口画家の原口のみ金銭やり取りの中に入っていません。その原口は美禰子と親しく話します。つまり冒頭集約の列車の、お灸の爺さんに該当する人物です。列車の中に登場する以上、作中有数の重要人物です。しかしなぜか姓のみで名前がなく、素性もよくわかりません。

わかっているのは里見兄妹には亡くなった長兄がおり、原口はその彼とヨーロッパ留学していたことだけです。存命中の里見家次兄

もっとみる
それから…

それから…

夏目漱石の「それから」を読みました。

僕の独断と偏見で漱石の小説とは、人の心の深淵を覗き込むような描写にジリジリする感覚を楽しむ心理サスペンスだと思っています。

漱石の前期三部作の二作目です。「門」は読みましたが、何故かまだ「三四郎」は読んでいません。多分心のどこかでハツラツとした漱石の青春小説を読みたくない気持ちが心のどこかであるかも知れません。

さて今回読了した「それから」も僕の期待を裏

もっとみる
文鳥

文鳥

我が家にも文鳥がいるので親近感がわき夏目漱石の「文鳥」を購入しよんでみました。
短編だから1時間もあれば読めましたが、しかし…

なんという悲しく切ない話なんだろう!

あらすじは、主人公は小説家で弟子の三重吉が文鳥を飼うことを勧め、最初のうちは可愛がって世話をしていました。文鳥の「千代、千代」という鳴き声を聞くうちに昔主人公が帯の上や鏡で顔に光を当てたりして悪戯をした女性を思い出して懐かしんでい

もっとみる