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こころを読んで
「こころ」は漱石の明治という時代に対する遺書のつもりで書いたと思います。
常に一人称の私という語り部が物語をつづります。3部構成になっていて上【先生と私】は推理小説みたいな展開になっています。
私わたくしはその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間をはばかる遠慮というよりも、そのほうが私にとって自然だからである。
冒頭はリズミカルな文章でこのように始まります。最初の文章で読者の興味をひく事はとても大切です。先生はどんな人物か気になってきませんか?
しかしそれだけではなくちょくちょく文中で違和感のある描写に出会います。漱石が時世に対する自分の考えを表現する描写です。
私が由比ヶ浜に海水浴に行った時、
日本人が水着を着てその肌を隠しているのに、その西洋人はふんどし一枚だけつけて、白い肌を日にさらして裸で腕組みをして海を見ていたのが不思議だったという描写があります。
この西洋人は先生の近くにいて、私が先生を見つけるきっかけになった人物ですが、いつの間にかいなくなってしまいます。
日本人は裸を隠そうとする=自分達の文化が西洋文化に比べて劣っており恥ずかしいと思っています。それに対してふんどし一枚で自分の白い肌を太陽にさらして堂々としている西洋人が登場しています。
漱石の時代は、ヨーロッパやアメリカから軍事力を背景に不平等な条約を押し付けられ、それを解消する為、日本は西洋と対等な国にならなければなりませんでした。だから急激に西洋の文化を受け入れたのが明治の日本でした。
た。
日本の文明は西洋文明に劣っていると思い、すぐに西洋の文化の猿真似をしようとする日本人を漱石は皮肉っています。
スマホを片時を離さず、スタバでコーヒーを楽しみ、アマゾンで買い物をする、西洋文明に囲まれて生まれた現代の日本人にはよく分からない気持ちです。
中【両親と私】では両親との関係について
私の父が死にゆく様を描いてます。
悲しい話ですがホームドラマの様な展開です。
下【先生と遺書】
私の推理の謎解きであり、漱石の思想が描写されています。
友人Kとは何の暗喩でしょうか?
僕は、Kが韓国(Korea)の事を指していると思います。
日清戦争の後、日本の支援により今まで清と冊封国だった李氏朝鮮が独立して大韓帝国が生まれました。だが、日露戦争後にその大韓帝国を日本が併合してしまいます。
作品の中のKの描写を見てみましょう。
最初は叔父や両親に見放されてボロボロになったKを見兼ね、お金を援助して先生と一緒の下宿に住まわせます。
だんだんKが元気を取り戻し、お嬢さんに恋をする。
だんだんKにお嬢さんをとられるのかも知れないと疑った先生は仮病を使い奥さんと二人きりになり、お嬢さんを下さいとお願いして聞き入れられる。
その後、Kは自殺する。
最初はKをを支援したのに最後には裏切る所が明治末期の日本の朝鮮に対する政策と重なると思いませんか?結局、朝鮮のアインデンティーは日本に殺されてしまったのです。
そう言えば先生はKを尊敬すると言いながら常にKに対して上から目線でした。
結局先生は、お嬢さんにほのかな恋心があったけど結婚したいとまでは思っていなかったのです。Kがお嬢さんが好きと分かってKにとられるのが嫌だったから結婚を申し込んだのです。
Kも先生の嫉妬に殺されたと言えます。
明治の精神=教育勅語で教育を受けてきた漱石
にとって日露戦争から日韓併合は倫理的に受け入れられないはずです。
作品の中で
「正しい事をしようと道を踏み外してしまったばかもの。」それは明治時代の日本の進んでいった歴史の事を言っていると思います。
そして漱石は乃木希典大将の自殺をうけ「こころ」を書きます。
私は新聞で乃木大将の死ぬ前に書き残して行ったものを読みました。西南戦争の時敵に旗を奪られて以来、申し訳のために死のう死のうと思って、つい今日まで生きていたという意味の句を見た時、私は思わず指を折って、乃木さんが死ぬ覚悟をしながら生きながらえて来た年月を勘定すると35年です。その35年間、死ぬ機会を待っていたらしいのです。私はそういう人に取って、生きていた35年が苦しいか、また刀を腹へ突き立てた一刹那が苦しいか、どっちが苦しいだろうと考えました。
侍の精神を持っていても切腹はなかなかできるものではありません。刃の先がチクッとお腹に当たった時点で僕だったらは怖気付いてしまいます。乃木希典の絶望はきっと死ぬより苦しかったのでしょう。
※このnoteはfufufujitaniさんの投稿を参考にして書かせていただきました。