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きのう、なに読んだ?

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日々読んだ本や長文記事などの、読んだ部分について紹介と感想をメモします。
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『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(山口周) | きのう、なに読んだ?

『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(山口周) | きのう、なに読んだ?

山口周さんの『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』は、経営学の基礎的な理論を20個挙げ、それぞれから個人の人生への示唆を引き出した書籍だ。

『イノベーション・オブ・ライフ』にインスピレーションを得た

経営学の知見から生き方の示唆を導く書籍といえば、クレイトン・クリステンセンの "How Will You Measure Your Life?" (日本版は『

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『経営の力と伴走支援~「対話と傾聴」が組織を変える~』(角野然生) | きのう、なに読んだ?

『経営の力と伴走支援~「対話と傾聴」が組織を変える~』(角野然生) | きのう、なに読んだ?

『経営の力と伴走支援~「対話と傾聴」が組織を変える~』は、中小企業庁長官を務めた角野然生氏が、自身の福島の復興支援の現場で培った経験を基に、対話と傾聴を通じた「伴走支援」という手法を解説した一冊です。最大の特徴は、単に経営課題の「解決策」を提示するのではなく、中小企業の経営者自身が課題の本質に気づき、主体的に変革を起こすための「プロセス」を支援する、それには対話と傾聴が鍵だった、という点にあります

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経営とは対話である | 『企業変革のジレンマ』(宇田川元一) | きのう、なに読んだ?

経営とは対話である | 『企業変革のジレンマ』(宇田川元一) | きのう、なに読んだ?

宇田川元一さんの『企業変革のジレンマ』は、いわゆる「倒産の危機からのV字回復」のような劇的な改革ではなく、「なんとなくうまくいかない」「もっと良い職場にしたい」といった、多くの企業が抱える“慢性的な問題”にフォーカスした一冊です。宇田川さん自身、「これは急性疾患に対する手術ではなく、慢性疾患に対するアプローチだ」と明確に位置づけています。

私が見たレビューでは、この“慢性疾患”や“構造的無能化”

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 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』  | 好き(自分の実存)を仕事にする価値観の危うさ|きのう、なに読んだ?

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 | 好き(自分の実存)を仕事にする価値観の危うさ|きのう、なに読んだ?

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 。
「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」。
タイトルと帯文が「私に話しかけてますね…?」と思うほど刺さりまして、他の本を差し置いて読んでしまいました。

本書は明治時代から現代まで人々が「働く」と「読書」をどう捉えてきたか、変遷を分析したうえで現代の状況を捉え直しており、非常に面白かったです。読書論というより「働き方」論、社会論の趣です。

著者の三宅

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SNSを捨てよ、制作に向かおう | 『庭の話』宇野常寛 | きのう、なに読んだ?

SNSを捨てよ、制作に向かおう | 『庭の話』宇野常寛 | きのう、なに読んだ?

宇野常寛さんの『庭の話』は、SNSを中心とするプラットフォームが大きな影響力を持つ社会において、その先に在りたい個人の可能性を、「制作」という行為を軸に考察する著作です。「制作」を可能にする条件はどんなものか、「庭」というメタファーを手がかりに探っているのです。ガーデニングの本ではありません。

全14章、多くの思想書その他の文献と取材を紹介しながら、「だとしたらこうでは?」「そうだとすると、こん

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日本語と英語、日本社会とアメリカ社会 | 『不機嫌な英語たち』(吉原真里)イベント | きのう、なに読んだ?

日本語と英語、日本社会とアメリカ社会 | 『不機嫌な英語たち』(吉原真里)イベント | きのう、なに読んだ?

旧友の吉原真里さんの著書『不機嫌な英語たち』刊行記念イベントのモデレーターをつとめました。めちゃめちゃ刺激的で面白かった!せっかくなので印象に残ったところを簡単にメモしておきます。

吉原さんはハワイ大学教授で専門はアメリカ研究、日本エッセイストクラブ賞を受賞した『親愛なるレニー』の著者です。学生時代からの旧友でして、今回のモデレーター役も大喜びでお引き受けしました。

『不機嫌な英語たち』は、日

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25年前に見えていた資本主義の未来|「文化資本の経営」|きのう、なに読んだ?

25年前に見えていた資本主義の未来|「文化資本の経営」|きのう、なに読んだ?

『文化資本の経営』は1999年に世に出た本だ。著者の福原義春さんは、1997年まで10年間、資生堂の社長をつとめ、その後も同社の会長、名誉会長であった。本書は絶版になっていたが、このたび復刻出版された。(私も推薦の言葉を寄せた。)

25年前の経営者が書いた本にいま、私たちが注目すべき理由はなにか?

25年前に提言されていたパーパス、ESG、人的資本いま本書に注目すべき理由、それは、パーパス、E

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クリエイティブになるには、3種の読書を1000日続けよ | きのう、なに読んだ?

クリエイティブになるには、3種の読書を1000日続けよ | きのう、なに読んだ?

このツイート見てから10日くらい、毎日このこと考えているので、いったん書き出してみます。

レイ・ブラッドべリ:クリエイティブになるにはツイートにはレイ・ブラッドベリ(「華氏451度」著者)の講演の一部を切り出した動画がついています。聞きながらざっと訳をつけてみました。

【動画の粗訳】

つまりクリエイティブになるには、フィクション、詩歌、ノンフィクションと、偏らずに幅広く良質な作品を大量にイン

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身体、心、考え、言葉 | 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子) | きのう、なに読んだ?

身体、心、考え、言葉 | 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子) | きのう、なに読んだ?

三國真理子さんは人気のニットデザイナーだ。編み物の本を出版したり「気仙沼ニッティング」の商品デザインを手掛けている。その三國さんのエッセイ集「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」の内容は、ニットとほとんど関係ない。新潟で育った子供の頃のエピソード、家族のこと、そして最近の暮らしのことまでがつづられているが、自伝とも違う。

三國さんは、記憶にある場面をショートフィルムのように読み手に見せて

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「弱さ」が言語化力と聴く力を育む(群像2022年10月号) | きのう、なに読んだ?

「弱さ」が言語化力と聴く力を育む(群像2022年10月号) | きのう、なに読んだ?

「群像」2022年10月号を手に取った。鷲田清一さんが寄稿した中井久夫さんの追悼文を勧められたからだ。休日の午後、思いがけず集中して読んだ。鷲田さんの文章も良かったうえに、特集「『弱さ』の哲学」が私の関心と重なっていた。

私の関心は:
●「聴く」こと、そして「言語化」すること、それ自体への関心。
●人が成熟し、それから人と組織の関係が良くなっていくのに、「聴く」と「言語化」が欠かせないと信じてい

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「FLAMIN' HOT」:用務員からグローバルブランドの役員へ | きのう、なに読んだ?

「FLAMIN' HOT」:用務員からグローバルブランドの役員へ | きのう、なに読んだ?

「FLAMIN' HOT 逆境に打ち勝つ「弱き者」の成功法則」は、小学校6年生以降はロクに学校にも行ってなかったメキシコ系移民の著者が、ドリトスとか作っているフリトレー社の用務員から重役にまで上り詰めた経験と、そこから学んだことを伝えてくれる本だ。

編集を担当された朝海さんをご紹介いただいて、英語版と日本語版の初稿を読み、推薦させていただくことになった。

底辺サラリーマン(というより、時給で働

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プロフェッショナルとは?のケーススタディー(「取材・執筆・推敲」) | きのう、なに読んだ?

古賀史健さんの「取材・執筆・推敲」を読んだ。これね、すごい本ですよ。(このnote は facebook 初出内容を再掲したものです)

古賀さんはベストセラーにしてロングセラーの「嫌われる勇気」の著者であり、瀧本哲史さん「ミライの授業」の構成・ライティング担当。他にもたくさんの本を手がけてきたかた。その古賀さんが「ライターの教科書」というコンセプトで書いたのが本書です。

ですが、本書はライター

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人生100年時代の社会に対する創意工夫  ("The New Long Life" 『LIFE SHIFT 2』リンダ・グラットン) | きのう、なに読んだ?

人生100年時代の社会に対する創意工夫 ("The New Long Life" 『LIFE SHIFT 2』リンダ・グラットン) | きのう、なに読んだ?

リンダ・グラットン&アンドリュー・スコットの新著「The New Long Life」を読みました。2016年に出版された「ライフ・シフト」(The 100-Year Life) の続編です。

「人生100年時代」というフレーズは、もはや目新しくもないほど、頻繁に耳にするようになりました。その発端となったのが、リンダさんたちの前著「ライフ・シフト」でした。リンダさんは2017年には安倍首相の諮問

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この状況は私たちに何を問うているのか(「夜と霧」) | きのう、なに読んだ?

この状況は私たちに何を問うているのか(「夜と霧」) | きのう、なに読んだ?

緊急事態宣言が出るのか出ないのかヤキモキしていた2020年3月末から4月上旬にかけて、「夜と霧」を読んだ。

ちゃんと読むのは初めてだ。これまで、本書の内容についてきく機会は数多くあったが、何となく手にとらずにいた。新型コロナウイルスの影響で外出を自粛するようになり、初めて自分ごととして読もうという心構えができたのだろう。

本書の前半では、収容所の過酷な様子、収容された人々が身体的・精神的に追い

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