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ショートエッセイ#11【幼い】
先日、新人の頃に担当して以来のお客様に入ることになった。
首肩がものすごく硬くて、新人の頃に「思いっきりやって!」と言われたことがずっと記憶にあったのでとても緊張してしまった。
「私、〇〇さんを担当するのすごく久しぶりなんですが、よろしくお願いします」
「あら!ほんと久しぶりね!あの頃新人さんだったものね」
「はい、もう5年目なのですが、今日はしっかりほぐしていきますね」
「もう5年も経
ショートエッセイ#9【撮影】
それは躁状態が最も酷かった2013年の夏の話である。
仕事は勢いでとっくに辞めて無職になっていた。
チャッ〇レディをやったり、ガールズバーでバイトをしたりしてその日暮らしをしていたのだ。
そんな中、なぜか急にセクシー女優になりたいと思いついた。
躁の症状の一つに「性的逸脱行為」というものがある。
もしかするとその症状のせいなのかもしれない。
当時の私の容姿は体重45キロ、身長168セン
ショートエッセイ#6【焼肉】
そのお客様を担当したのは、今のサロンで仕事をするようになって一年ほど経った頃だった。
ガリガリに痩せ細った身体が痛々しく、元気がないご様子。
今日はどちらがお疲れですか?と話しかけると、ご主人が癌で亡くなられてから、何も食べられなくなってしまったと話してくれた。
10代の頃から付き合ってきたご主人が末期の癌で余命半年と言われたときのこと。
延命のための抗癌剤治療はしないと決め、結果亡くなら
ショートエッセイ#5【ネガティブ】
僕はネガティブな人が嫌い。
人の悪口を言ったりしない。
だから僕と同じように人の悪口を言わない人と付き合いたい。
どんな人がタイプですかと質問したら返ってきた答え。
私だって人の悪口を言うのは嫌だ。
でも、マイナスに物事を捉えがちである。
だから言ってしまった。
不安からくる不満をぶちまけてしまった。
その人が最後に言ったセリフ「ごめん、ムリ」
あれからもう1年経つ。
いまだに
ショートエッセイ#4【本部長】
そのデザイン会社に入ったのは、東京から戻って来てすぐの頃だった。
社員数10名にも満たない小さな会社なのに、上司は『本部長』と皆に呼ばせていた。
昔バリバリのヤンキーでバンドをやっていたと自慢する、見た目は見るからに昔ヤンチャしてそうなコワモテ。
入社してすぐに、この会社は長く続かないなと思った。
まず、朝の挨拶の声の大きさで怒られる。
普通の音量では小さいと怒鳴られるのだ。
皆、おはよ
ショートエッセイ#3【鼻血】
三十歳の頃、町のスーパーの中に入っているケーキ屋さんで売り子のアルバイトをしていた。
基本的に店頭にはひとりで立っていた。
普段は暇な店なので、スーパーに訪れる客をぼーっと眺めながら店番をしていたのだが、たまに珍客が来ることがあった。
ある日、店の中に小さな女の子が迷い込んできた。顔をよく見たら、鼻血を流している!
「ここに入ってきたらダメだよ〜?お母さんは??」
「おかーさんは家で寝てる
ショートエッセイ#2【焼きそば事件】
20代の頃、7年付き合った元彼の話で忘れられない出来事がある。二人の運命を変えることになった『焼きそば事件』だ。
焼きそばは焼きそばでも『ホンコンやきそば』である。
みなさんご存知のエスビー食品から発売されている袋入りインスタント焼きそばなのだけど、私はこの焼きそばが苦手だった。
一緒に暮らしていた彼にとっては大好物のようで、よくフライパンでジュージューと音をさせながら焼いていた。
それは
ショートエッセイ#1【メガネ男子】
その昔、私はとあるコールセンターの会社に勤めていた。いくつもの部署が大きなフロアをシェアしていて、別部署の人たちと顔を合わせることがよくあったのだ。
そこに背が高くてスラッとした眼鏡の私好みのイケメンリーダーが居た。
俳優で例えると、トイレの洗剤のCMに出ていた眼鏡をかけた平岡祐太にそっくりである。
たまにコピー室で一緒になると、もう息ができないくらい緊張した。
しかし、他部署のリーダーには