Medjed1222

時は春、 日は朝、 朝は七時、 片岡に露みちて、 揚雲雀なのりいで、 蝸牛枝に這ひ、…

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時は春、 日は朝、 朝は七時、 片岡に露みちて、 揚雲雀なのりいで、 蝸牛枝に這ひ、 神、そらに知ろしめす。 すべて世は事も無し。

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論文が書けないあなたのための論文の書き方

はじめに 世の中には、論文の書き方についての本が多数出版されている。これら「論文の書き方」本は、二つの系統に大きく分けられる。一つは、スタイルや全体の構成に関するもので、例えば、自然科学系の論文は、要旨、導入、材料と方法、結果、議論、参考文献うんぬんで構成され、各項目の書き方はコレコレといったものである。もう一つは、文章または語句についてのもので、論文に適切な書き言葉としての言い回し(フレーズ)や単語(ワード)を集めた辞書の類である。確かに、従来の「論文の書き方」本は、初め

    • 実験を日々のルーティンにしてしまうのだ

      はじめに 研究初心者や学生が研究活動をはじめるにあたり、一番はじめに克服するべきものは「めんどくさい」という気持ちです。情報を検索したり論文を読んだりというデスクワークは、大学での授業と似ているので、これまで散々やってきたと思います。しかし、実際に手を動かして行う実験は、WETであれDRYであれ、学部での実習とは異なり試行錯誤の連続です。研究初心者や学生が研究が進まない原因の一つは、考えるばかりで手を動かさないことです。「なにも考えずに、まず手を動かせ」と言っているのではあり

      • 「手加減なし」の研究室に受け入れられない理由

         【注意】 毒強め 【注意】 「「君はこの研究室にはむいていない」と言われたら」のnoteで「忖度なし」と書きましたが、すいません、理由3については、かなり忖度してました。  以下、「「君はこの研究室にはむいていない」と言われたら」に納得できない方のために、理由3について「手加減無し」で解説しています。場合によっては、あなたの感情を傷つけるかもしれません。それでも内容を知りたい方は、覚悟してお読みください。なお、国内外の事例をフィクションを織り交ぜて解説しています。 理

        • ペンギンに空を飛べと要求すること

           学生を指導する立場になって、いわゆる「できない」学生に血管が切れそうになりながら指導していたのだが、ある時期から、こう思うようになった。「もしかして、能力外のことを求めている、こちらが間違っているのではないか?」  指導者側としては、大学院生に対して、研究者になるためのトレーニングとして真っ当なことを要求しているつもりだった。曰く、 実験開始時間には遅れない 実験ノートをきちんと取る 原稿の提出締切は守る 予定が変わったら事前に連絡する 実験プロトコールを勝手に

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        論文が書けないあなたのための論文の書き方

          「君はこの研究室にはむいていない」と言われたら

           迷わず新しい研究室を探しましょう。それ一択です。受け入れてくれるよう交渉するよりも、むしろ、受け入れてくれる別の場所を速攻で探しましょう。理由を聞いても納得いかないか傷つくだけです。あえて、忖度なしで考えられる理由をいくつか挙げてみましょう。 理由1:希望する研究テーマはその研究室ではできない これは、希望する研究テーマと研究室のプロジェクト・リソースとの不一致が理由です。極端な例ですが、植物の研究室で動物の研究はできないでしょう。ここまで極端ではなくとも、害虫に対する植

          「君はこの研究室にはむいていない」と言われたら

          10人の妊婦がいても1ヶ月で赤ん坊は生まれない

           ソフトウェア開発においてブルックスの法則という法則がある。「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」というものである。フレデリック・ブルックスの著書、『人月の神話』(にんげつのしんわ、The Mythical Man-Month: Essays on Software Engineering)において紹介されたものだ。  ブルックスの法則の詳細についてはWkipediaや書籍を参照していただきたいが、例えとして「10人の妊

          10人の妊婦がいても1ヶ月で赤ん坊は生まれない

          研究初心者が陥りがちな罠〜研究室の選び方

          はじめに 大学院進学にあたり、どのような研究室を選ぶべきかについては、体験記も含めnoteには多くの記事がありますので、そちらを参照ください。このnoteでは、研究初心者や学生が研究室を選ぶ上で陥りがちな罠について解説します。例のごとく、どんな研究室に行っても成り上がっていける「優秀」な方むけではなく、研究に興味はあるが研究者としてやっていけるかどうかは自分でも自信がない・決めていない「普通」の方むけへの記事となっています。  博士号を取った後のポスドクが研究の主体となる

          研究初心者が陥りがちな罠〜研究室の選び方

          プロフィール的なこと

           生命科学系の研究者です。育ちは分子生物学と行動遺伝学、専門は電気生理学と構造生物学ですが、現在は病態神経学をやっています。その他、神経解剖学、発生学、疫学、データサイエンス、サイエンスコミュニケーションとなんでもやります。画像とアイコンは古代エジプト神話の神メジェド(「打ち倒す者」の意)です。いろんな理不尽を打ち倒したいです。

          プロフィール的なこと

          研究者の生き方はプロスポーツ選手に近い

           大学や公的な研究機関で研究者として働いていると、時給の感覚に無頓着になる。たとえ週40時間の契約であったとしても、必要とあらば夜遅くまで実験するし、休日出勤もする。企業の研究者とは異なり、大抵の研究室にはタイムカードなどないので、契約を超えた時間の労働は、持ち出し(タダ働き)である。それでも、「残業代が出ない」という文句は(ほとんど)出ない。知り合いの研究者は、休日に研究室に実験に行くと「給料に反映されないのに、なぜ休日にまで働くの?」と、パートナーに文句を言われるそうだ。

          研究者の生き方はプロスポーツ選手に近い

          大学院修士・博士課程は自動車学校と同じであるべきだ

           私が某国立大学の大学院生だった頃、所属していた研究室の指導にとても不満があった。比較的「放牧」型の研究室で、研究テーマは自分の興味に合っていて問題なかったのだが、実験方針が行き当たりばったりで、系統だった指導を受けることはできなかった。むしろ、指導者が提案する素人目にも見込みのない実験を躱すのに労力が割かれる始末だった。結局、自分で「なんとかする」以外なかったのだが、いつも「なんで授業料を払ってまで、こんな理不尽な目に合わなければならないのか」と思っていた。少なくとも、実験

          大学院修士・博士課程は自動車学校と同じであるべきだ

          研究へのモチベーションが自分の外にある人は基礎研究には向いてない

           某国立大学の基礎生命理学系の研究室に所属していた時、強く印象に残ったことがある。大学院の修士課程の学生が、「こんなことをやって、何の役に立つんだろう、と思っちゃうんですよね」と、研究へのモチベーションがわかないことを悩んでいた。結局、その学生は修士課程から医学部に編入し、卒業後、医師として活躍している(らしい)。それ以降、研究者・学生の研究へのモチベーションはどこからくるのか、と観察するようになった。  研究者には、研究(仕事)へのモチベーションを自分の外に求めるタイプと

          研究へのモチベーションが自分の外にある人は基礎研究には向いてない

          研究初心者が陥りがちな罠〜研究と実験のデザイン

          はじめに 前回のnoteでは、テーマ選択について研究初心者が陥りがちな罠とその対処療法的な解決方法について述べました。今回のnoteでは、研究テーマを選択した後の、研究と実験のデザインについて述べたいと思います。  このnoteは、ある程度自主的に物事を進めることができる「優秀」な研究初心者や学生向けではなく、系統的な研究指導・教育を受けることができない「放牧」型の生命科学系研究室に入ってしまった「普通」の方向けへの解説となっています。ちなみに、経験的・感覚的なものですが

          研究初心者が陥りがちな罠〜研究と実験のデザイン

          人文学系研究者の頭の中:『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』

           まず、はじめに断っておくが、『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(阿部幸大著)は、素晴らしい本である。私は理系の研究者なので、科学論文のアカデミック・ライティングについては、多少の経験がある。しかし、人文学系の論文の書き方については、これまで漠然としか把握できていなかった。『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』を読んだ後では、人文学系の論文・著作の執筆についての解像度がとても高くなった。また、「論文とは、アカデミックな価値をもつアーギュメントを

          人文学系研究者の頭の中:『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』

          研究初心者が陥りがちな罠〜テーマの選択

          はじめに 国立大学が法人化される前の古きよき時代、大学のたいていの研究室は、(少なくとも生命科学系では)ある程度自分で研究テーマを決めることができ、自力で研究を進めていく、いわゆる「放牧」型の研究指導を行っていました。現在研究室を構えている60代以上の研究室主催者は、そのような「放牧」型の環境で育った方が多いのではないでしょうか。「放牧」型の研究室では、学生の自主性に任せる割合が多いため、優秀な学生はどんどん研究が進めることができる一方で、普通の学生は試行錯誤しながら、比較的

          研究初心者が陥りがちな罠〜テーマの選択

          研究をはじめる際に気をつけたいこと

          研究仮説の立て方  研究の仮説はどのように立てたらよいでしょうか?研究のすすめ方の本などには、Yes/Noがはっきりわかる実験デザインを計画することができるような云々、とよく書いてあります。ですが、最初から白黒がはっきりつくような仮説を立てることは、あまりおすすめできません。というのは、もし、その作業仮説を否定する結果が得られた場合、何も手元に残らないからです。正確に言うと、その作業仮説は間違っていたという結果だけが残ります。一般に、否定的なデータは発表論文として成立しにくい

          研究をはじめる際に気をつけたいこと

          研究にとりかかる前に考えたいこと

          その作業仮説でよいですか? 研究にとりかかる際に、「その作業仮説は何か?」と聞かれることがあります。これは、何も決めずになんとなく実験を始めてしまうと、どこから手を付ければよいかわからないので、「とりあえず」の仮説(作業仮説)を立てて、その真偽を問う形で研究または実験をデザインすることから始めるわけです。このやり方は、仮説駆動型デザイン(Hypothesis Driven Design) または仮説駆動型アプローチ(Hypothesis Driven Approach)と呼

          研究にとりかかる前に考えたいこと