実験を日々のルーティンにしてしまうのだ
はじめに
研究初心者や学生が研究活動をはじめるにあたり、一番はじめに克服するべきものは「めんどくさい」という気持ちです。情報を検索したり論文を読んだりというデスクワークは、大学での授業と似ているので、これまで散々やってきたと思います。しかし、実際に手を動かして行う実験は、WETであれDRYであれ、学部での実習とは異なり試行錯誤の連続です。研究初心者や学生が研究が進まない原因の一つは、考えるばかりで手を動かさないことです。「なにも考えずに、まず手を動かせ」と言っているのではありません。なにごとも初めてやるときは慎重になることと思います。ですが、「慎重」と「怠惰」を履き違えてはいないでしょうか?
研究センスより大事なこと
もちろん研究センスは大事です。しかし、研究センスは研究活動でしか培われません。研究活動には手を動かす実践経験が必須です。そして、経験は継続した活動でしか身につきません。大事なことは、続けること・休まないこと(できるだけ体調をくずさないこと)・研究室(仕事場)に出てくること・最後までやりきること、です。1日12時間以上365日働けと言っているわけではありません。ですが、少なくとも、平日は毎日、2時間でもいいいので手を動かして、一連の実験を完遂することが大事です。
実験の習得は自転車の乗り方の練習と同じ
個々の実験そのものは、特別難しいものではありません。ただ、自転車の練習と同じで、習得するまでは中断しては身につかないのです。一定の期間、集中して、反復練習あるのみです。自転車に乗れるようになったあなたが「明日は自転車に乗らなきゃ。めんどくさいな」と思うでしょうか?自転車に乗ってどこかに向かうことは億劫だと思うかもしれませんが、自転車に乗ること自体をめんどくさいとは思わないはずです。手が自動で動くまで、めんどくさいと思わないようになるまで実験をやり込めば、研究の進行度合いは劇的に改善されるはずです。
研究は進まなくてもいい、でも手を止めるな
かといって、むやみに無駄に実験することを勧めているわけではありません。研究の方向性を決めるような重要な実験は慎重にデザインして実行する必要があります。ただ、その研究に必要となる実験系の練習、これまでに成功した実験結果のサンプル数を増やすこと、論文や研究室における過去の実験結果の再現性がとれるか確認すること、など、優先度または重要度は低いが、いずれやらなければいけない実験はたくさんあるはずです。息をするように、自転車に乗るように実験を行うことができれば、研究は進まなくても足元はどんどん確固になっていきます。
実験を生活に組み込んでしまうこと
おすすめの方法は、1種類の実験を少なくとも1ヶ月間連続して行うことです。週に1〜2回、同じ曜日、同じ時間に同じ種類の実験をすることをお勧めします。経験則になりますが、一つの実験に習熟する場合、3〜4回目でだいたいのコツが掴めるようになり、8〜10回目で実験がめんどくさくなくなります。そして、20回をこえるくらいから「そうだ、今からやるか」の境地に達することができます。この、「実験がめんどくさくない」境地に達することが、研究初心者から脱却する第一歩です。
研究をルーティンにしてはいけない
実験はできる限り早くルーティンにしなければいけません。しかし、研究は決してルーティンにしてはいけません。実験がルーティンになると結果がどんどん出るようになりますが、一方で、出る結果しか研究しない「研究ルーティン化の罠」が待っています。実験をルーティンにするのは、効率化することによって研究で大事なことを考える余裕・リソースを作るためです。実験の自動化・効率化の先にある、科学研究の本質である、科学的重要性を見つけだす・創りだす過程はルーティン化できません。手段に囚われて目的を見失わないようにしましょう。
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