見出し画像

論文が書けないあなたのための論文の書き方


はじめに

 世の中には、論文の書き方についての本が多数出版されている。これら「論文の書き方」本は、二つの系統に大きく分けられる。一つは、スタイルや全体の構成に関するもので、例えば、自然科学系の論文は、要旨、導入、材料と方法、結果、議論、参考文献うんぬんで構成され、各項目の書き方はコレコレといったものである。もう一つは、文章または語句についてのもので、論文に適切な書き言葉としての言い回し(フレーズ)や単語(ワード)を集めた辞書の類である。確かに、従来の「論文の書き方」本は、初めて論文に取りかかる学生や初学者にとっては、論文執筆の「お作法」を知るという意味で有用な情報を提供してくれる。しかし、論文を実際に書きはじめると、問題に突き当たることになる。一般的すぎて、役に立たないのだ。

 いくつかの「論文の書き方」本は、パラグラフライティングの紹介を中心に、論文のための文章の実践的な書き方について紹介している。パラグラフライティングとは、一般に以下のようなものである。

  1. パラグラフとは、一つのトピック(情報)についての、一連の記述である。

  2. パラグラフは、トピックセンテンス、サポーティングセンテンス、コンクルージョンセンテンスの三要素で構成される。

  3. パラグラフ内の各文章は、論理的に強く関連づけられていなければならない

 パラグラフライティングは、論文を書くための大切な指針となる。しかしながら、パラグラフライティングだけでは、論文が「まともに」書けるようにはならないのが現実だ。パラグラフライティングを使いこなせるようになるまでに、かなりの努力と試行錯誤が要求される。パラグラフライティングについての詳細は、いくつか良書がでているので、末尾の参考文献を参照していただきたい。

 では、どのようにすれば比較的短期間で「まともな」論文を書けるようになるのか。以下の一連のnoteは、論文を書く上で、これまで私が試行錯誤して意識化してきた記録である。それらは、いかに「機械的」に論理的な文章を書くかについての方法論であり、また、指導教官や共著者が「読む気になる」最低限の文章を書くための指針である。この「論文が書けないあなたのための論文の書き方」が、論文を書くことに苦しんでいる学生や初学者が次のステップに進む一助となり、論文指導する教官の血管が切れる回数を減らすことに貢献できれば幸いである。

 なお、本noteは生命科学系分野で英語論文を書く読者を対象としているが、他の理系分野の論文執筆にも適用できる。

心のバリアを乗り越える

 先ほど、従来の「論文の書き方」本は一般的すぎて役に立たないと書いたが、書きはじめの心のバリアを乗り越えるのには十分に有効である。あなたが最初に行うべきことは、ワープロソフトを立ち上げ、論文のセクションの見出しをすべて列挙することだ。一般的には、以下の構成となる。

  • Title

  • Authors

  • Affiliations

  • Keywords

  • Abstract

  • Introduction

  • Materials and Methods(Conclutionのあとに来る場合がある)

  • Results

  • Discussion

  • Conclusion(ない場合もある)

  • References

  • Legends

  • Table

 つぎに、機械的に書ける部分をすべて埋める。後で多少の追加・修正は必要となるが、Authors、Affiliations、Materials and Methodsである。おすすめしたいのは、論文を書き始める前から、できれば実験を始めた直後にMaterials and Methodsを書き上げてしまうことだ。そうすれば、論文を書く段になって、書き留めておいた文章をコピー&ペーストするだけで済む。また、あらかじめMaterials and Methodsを書いてしまうことで、実験デザインで足りない部分を意識することができる。

頭の中身を書き出す

 つづいて、ResutsとDisucussionにとりかかる。論文を書き始めようとするあなたは、ある程度の実験結果をすでに得ているはずである。最終的な論文の形を意識してから実験にとりかかる場合もあるが、学生や初学者にはおすすめしない。なぜなら、自己批判のトレーニングが十分でないため、実験のデザインにバイアスがかかるからである。これまでに得られている結果の図のタイトルを箇条書きにする

  • Results

    • 例)図1.変異体における遺伝子Aの発現

    • 例)図2.変異体におけるタンパク質Bの発現

  • Discussion

    • 例)図1.変異体における遺伝子Aの発現

    • 例)図2.変異体におけるタンパク質Bの発現

 この段階では、図の順番は厳密でなくともよいが、ResultsとDiscussionで対応させること。とにかく、いま持っている結果を紙面に書き出してしまうことである。すでに図が完成していることが理想であるが、ラフに構成した図でもよい。ただし、未取得部分の写真やデータの仮置きは絶対にしない(手書きのイラストや文字による指示であればよい)。データの使い回し(捏造に相当する)や更新忘れによるミスに繋がる可能性がある。

図を提示する順番を決める

 図の提示順は、IntroductionとDiscussionにおける論文の流れ(ストーリー)を決める重要な因子となる。実際に行った実験の時系列順である必要はない。大事なことは、論理展開(ロジックフロー)を元に図の提示順を決めることである。自分のなかで論理展開がはっきりしていない場合、以下を基準に順番を機械的に決める。

  • 物理的な順番:図Bが図Aの情報なしには説明できない場合、図A→図Bの順番となる。

    • 例)図A. 遺伝子改変マウスの作成、図B.遺伝子改変マウスの行動解析

  • 生物学的時間軸に沿った順:図Cの実験が図Dの実験より時間的に前に行われた場合、図C→図Dの順番となる。

    • 例)図C. 生後7日目のマウスを用いた実験、図D.生後3ヶ月目のマウスを用いた実験

 図表をプリントアウトし、物理的に並べてみるとよい。慣れるまでは、モニター上での並べかえは避けた方がよい。全体の流れを把握することが難しいためである。この時点でLegendsも完成させてしまおう。最初は、図にLegendsも含める。そうすれば、図をSupplementaryに回す事になった際に修正が最小限で済む。投稿版では削除する。

Resultsを書く

Resultsでは、まず図のタイトルからトピックセンテンスを作成する。つづいて、図に基づいて「実験結果」を記述する。例えば、野生型と変異体で、ある遺伝子の発現について比較した場合、野生型に対して変異体では、発現が上昇・低下したのか、それとも変化しなかったのか、具体的な数字を挙げて定量的に記述する。例)遺伝子Aの発現は、野生型に比べて変異体では約70%にまで減少していた(変異体では野生型の約70%にまで減少した)。この際、「変異体では約30%減少した」と記述すべきでない。なぜなら一般的に、棒グラフの場合には、野生型のバーの長さを100としたときに変異体のバーの長さが70となり、箱ひげ図の場合には、野生型の中央値を100としたときに変異型の中央値の位置が70となるからである。変異体では約30%減少したと記述すると、図上または頭の中で引き算をすることが必要となり、図の印象との齟齬が生じる。ただし、棒グラフにおいて野生型を0とした場合には、変異体のバーは下向きに-30%の長さとなり、「変異体では約30%減少した」との記述と整合性がとれる。さらに、必要ならば統計的な「解析結果」を記述する。この際にも、野生型に対して変異体では発現が「有意」に上昇・低下したのか、それとも「有意」は変化は観察されなかったのか記述する。以下に、初心者にありがちなミスを挙げる。

  • 単に「変化した」とのみ記述し、変化の方向性を示さない。

  • 数字を挙げた具体的な記述がない。

  • 「実験結果」または「解析結果」のどちらか一方のみを記述する。

  • 実験結果から示される「事実」の記述のみならず、「意見」の記述が混ざる。

 似た実験結果が続く場合、文章をコピー&ペースとして、変更点のみ修正してもよいが、文章が冗長となりリズムも単調となるので、後で修正する必要がある。

Discussionを書く

 Disucussionでは、最初のパラグラフでResultsの簡潔な要約を記述する。第2パラグラフ以降で、あなたの実験結果と過去の報告を比較する必要がある。よって、「意見」の記述を除き、原則としてすべての文章に図表の番号か引用文献の番号がつく。まず、実験結果を簡潔に記述し(事実)、それが意味することを述べる(意見)。つづいて先行研究を記述する(事実)。先行研究を記述してから、実験結果を述べてもよい。最後に、本研究と先行研究が矛盾しない・異なっていることを述べる。もし、先行研究の報告と異なる場合には、考えられる説明を引用文献付きで記述する(事実に基づいた意見)。支持する文献と矛盾する文献の両者がある場合には、別々のパラグラフで記述する。結果の図が10あるとしたら、最低でも10パラグラフできるはずである。もし、連続する2つのパラグラフで同じ先行研究を引用することになる場合は、対応する2つの図と結果を一つにまとめることを検討する。現時点では、各パラグラフは、できるだけ独立性を保った形で構成しておくとよい。

Introductionの最終パラグラフを書く

 Introductionを書き始めるにあたり、まず最終パラグラフを書いてしまう。ここまでにMaterials and MethodsとResults、Discussionはある程度でき上がっているので、機械的に記述できるはずである。ここでも、トピックセンテンス、サポーティングセンテンス、コンクージョンセンテンスの構成となる。各センテンスは、つぎのような文章で始まることになる。

  • トピックセンテンス(研究の目的を述べる:通常1センテンス)

    • 例)In this study, we reported that … や Here, we showed that … など

  • サポーティングセンテンス(実験結果を記述する:複数のセンテンス)

    • 例)We revealed that …

    • 例)We  analyzed that …

    • 例)We investigated that …

  • コンクルージョンセンテンス(研究の意義を述べる:1〜2センテンス)

    • 例)Our results would give insights into …

    • 例)Our report could contribute to …

Introductionのアウトラインを作る

 これで、ようやくIntroductionのアウトラインを作る準備が整った。 従来の「論文の書き方」本では、最初にアウトラインを作ることをすすめているものがあるが、本noteでは、Introductionは論文執筆の後半で作成することにしている。なぜなら初学者の場合、まずIntroductionを含めた論文全体のアウトラインを作り、そこから書き始めたとしても、書き進めるうちに論理展開に齟齬が生じ、頻繁にアウトラインの修正が必要になるからである。Introductionは論文のストーリを決定する上で重要な役割を果たす。極言すれば、Introductionの目的は読者に論文内容についての先入観を植え付けることである。そのため、緻密な戦略が要求されるが、まずは形にしてしまうことを目指す。

最初のステップとして、論文に含めたい研究内容について、頭の中身をすべて書き出す。キーワードや箇条書きでよい。重複があっても構わないので、とにかく、関連する知識を紙面に可視化する。つぎに、似た情報をグループ化する。この段階で、いくつかの情報の塊ができる。さらに、重複した情報を一つのセンテンスに集約する。

第2のステップとして、抽象度に従ってセンテンスを順番に並べる。一般に、Introductionの構成は、抽象度の高い記述から具体性の高い記述へ、一般的な記述から特定の記述へと進む。例えば、広く知られている事実や生理現象に関するセンテンスは抽象度や一般性が高いので、順序の前半になり、一方、遺伝子やタンパク質の名前が出てくるセンテンスは具体性・特定性が高いので、後半に並べられる。そうやって並べられたセンテンスは、各パラグラフのトピックセンテンスとなる。Resultsで決めた、図の順番に対応する論理展開になるよう注意する。

第3のステップでは、トピックセンテンスの数を2〜3に絞る。一般的なフルペーパーでは、Introductionのパラグラフ数は3〜4を想定している。最終パラグラフはすでに完成しているので、アウトラインを元に2〜3のパラグラフを書き上げることになる。必要最小限のトピックセンテンスを厳選するか、似たトピックセンテンスを一つにまとめる。トピックセンテンスの作り方には、主に2つのパターンがある。

  • 現象やモノの定義からはじめる

    • 例)脳は人の身体で最もエネルギーを必要とする器官である

    • 例)タンパク質Aは、Bファミリーに属している転写因子である

  • 宣言からはじめる

    • 例)シグナル伝達系Aは中枢神経系の初期発生に重要な役割を果たしている

    • 例)睡眠の質は日常生活の質に大きな影響を与える

 後述するが、定義トピックセンテンスの場合には、具体的な説明としてのサポーティングセンテンスが、宣言トピックセンテンスの場合には、理由を説明するサポーティングセンテンスが続くことになる。

 つぎに、各トピックセンテンスが論文に必要かどうか吟味する。一つの基準は、そのトピック(またはキーワード)がResultsやDiscussionに再び出てくるか、である。もし、出てこないのであれば、そのトピックは構成に必要ないものである。

第4のステップでは、トピックセンテンスを言い換えて、コンクルージョンセンテンスを作る。コンクルージョンセンテンスの作り方には、主に3つのパターンがある。

  • トピックセンテンスの意義・重要性を述べる

  • トピックセンテンスの反証・矛盾を述べる

  • トピックセンテンスが重要であるにも関わらず、情報がない・少ないことを述べる

 コンクルージョンセンテンスは、トピックセンテンスと強く関連付けられている必要がある。強い関連性を持ったコクルージョンセンテンスを「機械的に」作るための方法として、以下が挙げられる。

  • トピックセンテンスと同じ主語を使う

  • トピックセンテンスの目的語を主語にする

 さらに、パラグラフ間の結びつきを強くするために、以下に留意する。

  • コンクルージョンセンテンスに、次のパラグラフのトピックセンテンス内のキーワードを含める

  • コンクルージョンセンテンス内のキーワードを、次のパラグラフのトピックセンテンスの主語にする

 ここまでくると、キーワードでしりとりのように繋がった、相互に強く関連するトピックセンテンス・コンクルージョンセンテンスのペアを複数もつアウトラインができているはずである。

Introductionを書きあげる

 そして、トピックセンテンスとコンクルージョンセンテンスの間に、2〜3のサポーティングセンテンスを挿入する。サポーティングセンテンスはトピックセンテンスに関する引用文献を伴った具体例でなければならない。サポーティングセンテンスを書いてしまってから、引用文献を検索してもよい。引用文献が見つからない場合は、そのサポーティングセンテンスは削除する。

 原則として、パラグラフの構造は、ABT構造(And, But, Therefore)または、AAT構造(And, And, Therefore)を取る。

  • ABT構造
    トピックセンテンス and トピックセンテンスを支持する(矛盾しない)サポーティングセンテンス but トピックセンテンスに反証する(矛盾する)サポーティングセンテンス therefore コンクルージョンセンテンス。

  • AAT構造
    トピックセンテンス and トピックセンテンスを支持する第一のサポーティングセンテンス and トピックセンテンスを支持する第二のサポーティングセンテンス therefore コンクルージョンセンテンス。

 一つのパラグラフ内に逆説の記述は一回のみ。二回以上の逆説を含まないこと。一つのパラグラフにButやHoweverが含まれる回数は一つである。

AbstractやConclusionを書く

 Introductionのトピックセンテンスを「機械的に」抜き出し、Introductionの最終パラグラフをつなげて、Abstractを作る。不必要な情報や重複を削除、必要ならばMaterials and Methodsの情報を追加し、字数を文字数制限内に調整する。Conclusionは、Introductionの最終パラグラフとDiscussionの各パラグラフのコンクルージョンセンテンスを「機械的に」繋げて作成する。できるだけ簡潔な文章となるよう調整する。Abstract、Introduction、Conclusionの文章からキーワードを選択する。

タイトルを決める

 能動態を使用し、コンクルージョンセンテンスの中から、研究結果を直接表現するような力強い文章を選ぶ。

推敲!推敲!また推敲!

  ここまでで、半自動的に論文の体裁が整った原稿ができている。最終段階として、全体のバランス、パラグラフ間のつながり、文章間の関連性に注意して、推敲を行う。以下のチェックリストを使用する。

  • Introductionにおいて、(ほぼ)すべてのセンテンスに引用文献があるか?

  • Resultsにおいて、「意見」の記述が混ざっていないか?

  • Discussionにおいて、(ほぼ)すべてのセンテンスに図表番号または引用文献があるか?また、「意見」の記述ばかりで「事実」の記載が足りないことはないか?

  • Referencesにおいて、本文中に引用されている文献は全てあるか?本文中で引用されていない文献は残っていないか?引用文献は本当に適切か

  • 各パラグラフにおいて、トピックセンテンスとコンクルージョンセンテンスは、キーワードを共有しているか?

  • パラグラフ間において、前のパラグラフのコンクルージョンセンテンスと後のパラグラフのトピックセンテンスは、キーワードを共有しているか?

  • すべてのパラグラフは、ABT構造またはAAT構造をとっているか?

 以上の点に注意して、全体を通し、少なくとも3回は推敲する

指導教官や共著者にみてもらう前に

 この段階で、すでに「最低限」の論文は書けている。しかし、指導教官や共著者にみてもらう前に、必ず確認しておかなければならない注意点がある。

本文について

  1. スペルチェックをかける
    最低でもワープロソフトのスペルチェック機能を使用し、誤字脱字を修正する。できれば、Grammarlyのような英文作成支援AIによって、冠詞や複数形など文法エラーも修正する。ChatGPTといった文章生成AIを使用してもよい。

  2. フォントと文字サイズを統一する
    フォントはTimes New Roman、文字サイズは12ポイントに統一する。見出しを大きい文字サイズにしない

  3. 行間をシングルスペースにする
    原稿を書く際にはダブルスペースの方が好まれる場合があるが、タイプライターで紙に印刷していた時代の名残なので、モニター上ではシングルスペースのほうが読みやすい。

  4. 引用文献に漏れ・スタイルの不統一がないか確認する
    文献管理ソフトを使用し、投稿先雑誌のフォーマットに合わせたスタイルにする。

  5. 投稿を予定している雑誌のフォーマットにあわせる
    大抵は、IMRaD形式(Introduction, Materials and Methods, Results, and Discussion)であるが、雑誌によってはMaterials and Methodsが最後にくる。

図表について

  1. フォントを統一する
    図のフォントはArial、文字サイズは原則12ポイントを使用する。図にはTimes New Romanなどのセリフ系フォントを使用しない。パネルのラベルは24ポイントとする。表のフォントはTimes New Roman、文字サイズは12ポイントとする。

  2. 各パネルの配置をグリッドにあわせる
    各パネルの上端(または下端)および左端(または右端)が揃うように整列する。図の作成はMS PowerPointやAbobe Illustratorなどの描画ソフトを使用する。図を整列させるために、MS Wordの表に埋め込んだりしない。

  3. カラーコード・シンボルコードに一貫性を持たせる
    例えば棒グラフにおいて、野生型を白棒、変異型を黒棒で示した場合や、オスを青い■、メスを赤い●で示した場合、すべての図でコードを統一する。

  4. 色覚多様性に配慮する
    色のシミュレーター(https://asada.website/webCVS/)等の色覚シミュレーションツールによって、カラー図の各要素が判別可能か確認する。

ファイル名について

  1. フォーマットは任意だが、ファイル作成日付および執筆者の名前(イニシャル)をファイル名に含めること

  2. ファイル名には、日本語(漢字、ひらがな、カタカナ)、空白とピリオドを使用しない(拡張子の前のピリオドを除く)

  3. 空白の代わりにアンダーバー(_)を使用する

  4. 途中でファイル名のフォーマットを変更しない

  5. 修正を入れたファイルの名前には、オリジナルの名前の末尾に日付や修正者名(イニシャル)を追加する(異なる内容のファイルに同一ファイル名を使用しない)

 以上の注意点は、重箱の角をつつくようなものに感じるかもしれない。だが、少し想像してみてほしい。通常、指導教官や共著者は多忙である。あなたが論文執筆に集中できる環境にあるのに対し、彼ら・彼女らは、異なる性質の業務を並行して処理しなければならない状況が多い。そのような多忙さの中で、スペルミスやフォーマットの不統一にまで神経を使わねばならないのだろうか?また、論文の本質とは直接関係のない些細な修正に意識を取られることは、想像以上にエネルギーを消耗する。論理展開に集中したいのに、スペルミスによって思考の流れが中断されるからだ。それは、仕事に集中しはじめるたびに、かかってくる電話に邪魔される状態に似ている。指導教官や共著者といえども人間である。論文原稿に向き合い、さて修正するかと気合を入れた途端にスペルミスやスタイルの不統一をいくつも見つけると、モチベーションは明らかに低下する。そして、後で時間があるときに見直すかと原稿を棚上げするか、すぐさま、英語が悪いとあなたに差し戻すのである。

落穂拾い的なこと

 最後に、指導教官や共著者との間で論文の修正・編集をスムーズに進めるにあたり、筆頭著者としてもっと真剣に考えてほしいことを数点ほど述べたい。

  • あなたには、筆頭著者としての責任がある
    論文が書けないあなたは、すべてがそろった初稿を提出することは難しいだろう。書きたい内容・文章・パラグラフがどうしても書けないこともあるかと思う。その場合には、空白のまま残すのではなく、コメントを添えてたたき台としての文章を書くべきである。「あとはなんとかしてくれるだろう」と、丸投げするのはやめていただきたい。

  • 初心者が書いた論文原稿の修正・編集には、3ヶ月を必要とする
    経験則として、初稿の修正には、専念していても最低でも1ヶ月はかかる。論理展開から修正する必要がでてくるからである。その後、さらに4回程度の修正を経て投稿直前の原稿が完成する。1回の修正に要する時間は、軽微な修正で最短3日、通常1週間程度、パラグラフの追加や論理構成の変更があると2週間である。あなたが見積もった作業時間の3倍の時間がかかると思って間違いない。

  • できるだけ平日の月〜木の間に原稿を提出する
    くりかえすが、通常、指導教官や共著者は多忙である。それは平日のみならず、平日の通常業務に支障をきたさないために、週末・休日に会議や出張が入る場合も多い。彼ら・彼女らの時間的資源の余剰分を圧迫しないためにも、金曜日の夜に原稿を提出するのは避けた方がよい。

参考文献

 以下に、このnoteで書くことができるようになった「最低限の文章」から抜け出すための良書を紹介する。

ライティング全般

パラグラフ・ライティング





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?