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傑作選

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短編集、面白記事、ゲーム紹介、ブログ。 好評をいただいたり、又は埋もれている力作のマガジン。
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#小説

ピンポン玉殺人事件

ピンポン玉殺人事件

雨の降る小さなアパートに短いホイッスルが木霊し警官が立ち入りを制止した。

「お嬢ちゃん、ここは危ないから向こう行ってなさい。ホラ、ラリルチョコあげるから。」

でかいコートに探偵風の帽子をかぶった少女が警官をジロリとなじる。

「お嬢ちゃん?」

少女は目を細め、自身のはるか後方を探した。

「いや、君のコトだよ。」

はあ……。とピンと来てない様子の少女。なんで?

警官は言い聞かせた。

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【短編】時空間漫才

【短編】時空間漫才

茜「どうもー!『綿花ドブ落ちて満開アタシみたいだ』です~!」

葵「頑張っていきましょうね」

茜「今日はわざわざ遠いところからきてやったぞ~って方どれぐらいいますかね?」

葵「上げづらいわ!というか遠いもクソもないやろ同じ学校の生徒さんやから。」

茜「ね、皆さん言うほど遠くもない場所から大して苦労もせず来てくださって、どうもあざ~~す。」

葵「言わんでいいことしゃべんな!」

振りかぶった

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【短編】風が吹いて儲かった桶屋が出版した自己啓発本は誰も帯書いてくれない

【短編】風が吹いて儲かった桶屋が出版した自己啓発本は誰も帯書いてくれない

カフェで並んでるときの話なんですけど、前のおしゃれな紳士っぽい男の人が注文してて

「686円になります。」

「1000円からで。」

「あっ。」

チャリン

「す、すみません!」

「ははは、気にしないでください。」

そしたらおつりを手に取るやいなや途端にお手玉みたいになって

「おっとっとっと!」

ってその場にすっ転んだから店員さん

「大丈夫ですか!!」

って声かけたら

「よくこ

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【短編】就活で嘘はつけない

【短編】就活で嘘はつけない

この間人事部で新卒採用の仕事が回ってきてさ、初めての新卒採用だったから緊張してさ、どうすれば人事として正解なんだろうと一晩中考えた。その結果、就活生の側から見て良い面接官になるのが1番だって結論に至ったんだ。

 おれが就活生だった頃を思い返してみると、

「いかに人事に恵まれていなかったか」という負の記憶に溢れていた。

俺は新卒のころ面接で落ちに落ちまくっていた。しかし、勘違いしないでほしい。

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もうラケットを握れない

もうラケットを握れない。

「お前のグリップはいつもボロボロだ」ってみんなにからかわれた。

緊張すると手汗でびしょびしょになるから。

最後の試合が終わったあと、

「グリップのせいかな」って冗談を言った。

「直してやるよ」って奪い取られた。

ラケットは真っ黒になって帰ってきた。

だからもう握れない

金属バットの架空ネタ―耐性―

金属バットの架空ネタ―耐性―

小林「あのさ、最近思ったんだけどさ、上司って怒る生き物やんか」

友保「それで食うてるからな」

小林「理不尽なことだとさ、こっちも腹立ってしまって、こないだついに限界を迎えてさ」

友保「おい、やめとけよおい。片腕だけにしとけ」

小林「アマゾンで業務用藁人形セット買ったんよ」

友保「ラリってんのかおい。」

小林「ほんでな」

友保「おん」

小林「99本目を打ち終わった時神様からお告げがあ

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【バカリズムの無いネタ】どうでもいい教室

【バカリズムの無いネタ】どうでもいい教室

【問題】

次の図を見て、春は来るか、来ないかを答えなさい。

さあ、誰かわかる人。

はい。松田さん。

うん、そうだね。来るが正解ですね。素晴らしい。

今の松田さんの答えを図にするとこういうことになります。

はい。この場合の卒業生の「来なければいいのに」は「来い」ということになります。

教科書の32ページを開いてください。えっと、今日は2月の17日だから……えー加藤。公式を読み上げなさい

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「ラーメン」ミルクボーイの無い漫才

「ラーメン」ミルクボーイの無い漫才

駒場「うちのおかんがな、好きな料理があるらしいねんけど、どうしてもその名前が思い出されへんらしいねん。」

内海「好きな料理の名前を忘れた?どういうことやねんそれ~。ほんなら俺がおかんの好きな料理一緒に考えたげるからどんな特徴言うてたか教えてみてよ。」

駒場「おかんが言うにはな中国発祥の料理で、どんぶりにスープと麺、チャーシュー、卵なんかを盛りつけた庶民派料理らしいねん。」

内海「おぉん……ラ

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名は体を表すので自分で付けさせて下さい。

名は体を表すので自分で付けさせて下さい。

慎太郎「名は体を表す!!!」

達也「……え、何?急に。」

慎太郎「どうやらモノの性質ってのは名前によって何となく決まっちゃうらしいんだよ。」

達也「まっさかー。」

慎太郎「空はさ、『ソラ』って感じがするだろ?こう広がってる感じの。壁はさ、『カベ』って感じがするだろ?ごつい感じ。」

達也「『ソラ』!!……確かに何となくそんな感じがするかもしれないけども。」

慎太郎「お前はさ、達也なわけじ

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きのこたけのこ戦争・エンドゲーム

きのこたけのこ戦争・エンドゲーム

「さて、本日お集まりいただいたのは他でもございません。この醜く、果てしない戦争に決着を付けて頂くためでございます。」

ホールに集められた客は各々ざわつき始める。戦争?聞き慣れない暴力的な表現に皆少なからず動揺している。

「…どうやら状況が飲み込めていないご様子。それもそのはず、まだ主役の方々が登場されておりませんからね。ではご登場いただきましょう!幕を!」

タキシードの男がパチン!と指を鳴ら

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悪魔の告白

悪魔の告白

「聞いてください神父様。どうか愚かな私めの奇妙な悩みを聞いていただきたいのです。」

神父「罪を告白すれば神はあなたを許します。さぁ、話してごらんなさい」

「はい。話は先月に遡ります」



私は、普段はヴェネツィア商会に勤めて営業の仕事をしていまして、その日も相変わらず成績が振るわず肩を落として帰っていたのです。

すると橋の向こうから180cmほどの大男がコチラを睨みつけてきて歩いてきたの

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【短編】ドッペルゲンガーはいる

【短編】ドッペルゲンガーはいる

新里「この前、こんな面白いサイトを見つけたんだ。『ツインストレンジャー』って聞いたことあるか?」

神田「いいや。どんなサイトなんだ?」

新里「海外発の人探し掲示板なんだが、あるイギリス人女性の投稿が衝撃的な内容だったんだ。『私のドッペルゲンガーを探しています』ってな。」

神田「ドッペルゲンガー!?」

新里「そうさ。自分の顔写真を投稿して、世界中のユーザーにそっくりさんを見つけてもらおうって

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不幸な魂

不幸な魂

「それで、今日は何を占って欲しいんだい坊や。」

「ええ、実はここの所不幸続きでどうすれば不幸から抜け出せるのか占って欲しいんです。」

「…不幸かね。はて、どうも見たところあんたは特別不幸には見えないけどね。」

「ボクが不幸じゃないって、なんでそんなことが分かるんです?」

「あたしの水晶はね、鏡さ。あんたの行いその全てを映し出すのさ。そして特になんの不幸も訪れていないことが分かったのさ。」

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変は恋の数百倍厄介

変は恋の数百倍厄介

恋と変は似ている

字面が似る=成り立ちに共通点がある

のが漢字のルールなのはご存知だろうか。

『恋』

上つくりが「男女が糸を引っ張り合う様子」

下つくりが「心が惹かれる(糸が引かれるとかかる)」を表している。

『変』

上つくりが「男女が糸を引っ張り合う様子」

下つくりが「棍棒を持って叩く人」を表す

ホントに何の儀式?

つまるところ、1つ間違えるだけで恋にも変にもなり得るというこ

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