軟禁されたシャルロッテが、申し訳なさそうにクワンダを見る。 「なんで、止めなかったんでちか?」 「いつまでも、決断を人に委ねるな」 危険に飛び込むシャルロッテ。ブレーキ役のクワンダ。 いつもの関係も、終わるのか。 今、振り返れば。彼は、雛鳥に巣立ちを促していたのだろう。
原作愛は、原理主義じゃない。 好きな作品から受け取ったバトンで「次の区間」を走る駅伝。 #ドラクエ3 を出発点に「商人を主役にし、大航海時代を掘り下げる」道を選んだ私は、新たな海へ船出する。 ONTEMBAAR、それは抑え難き不屈の者!
ダルマ神殿へ向かう旅の間。 シャルロッテは、コジコーデでの出来事を語り続けた。 「以上でち。まだ謎は残るけど」 「生きてただけで、儲けもんだ」 話を聞くガマもどこか、達観した様子で。 「たとえ一人でも、困った人を助けまちゅよ」 それが、商いの道。生き残った者の務め。
「コジコーデから来た!?」 「山奥を何週間も歩いて、大変でちた」 心の整理のため、巡礼者に旅の話をするシャルロッテ。 「エウロパ人では、バーラトに一番乗りしたガマしゃんは」 後から来た、強大なブリテン軍の脅威にさらされ。 そこで、シャルロッテはカレとの同盟を考えた。
二人は商売敵で、犬猿の仲。 それでも追っ手から逃れるため、共に行動する他ない。 今晩は、雨風をしのげる洞窟で休めた。 眠りさえすれば、夢渡りで仲間の所へ。だが不安で眠れない。 乱れる寝息。悪夢にうなされるシャルロッテ。 彼女の心は枷に囚われ、夢渡りができなくなっていた。
ガスカル島を出るアルゴ号。補給を済ませ、交易品を積んで。 「あの王様、未来が見えるのかしらね」 別れ際、司祭王は告げた。 この後シャルロッテに、最大の試練が訪れると。 マリオを抱っこしながら、マリカが心配する。 「だとしても、行くでちよ」 憧れのバーラトまで、あと数週間。
「あんたしゃん、臆病でちね」 「でなきゃ、敵地で生き残れんぞ」 ガマは現地の商習慣を守らず、砲撃で要求を押し通したが。 内心は怯えていたらしい。 「獅子王しゃんから聞いた印象と、違うでち」 「お前、敵の親玉に会ったのか!?」 救世教徒のガマからすれば、大魔王も同然か。
コジコーデを襲ったブリテン軍から逃げて、何日経った? 極限状況の中、どれだけ歩いた? 「話し相手がいねぇと、気が狂う」 生意気でも、お転婆でもいい。 ガマがシャルロッテを見ると、星空に向かって旗を振っていた。 しかし、何も起きない。頭が変になったか。 「お前、誰に手旗を?」
「簡単ではないぞ」 シャルロッテを見るクワンダ。 「だが、それが俺たちの道だ」 護衛対象だった少女の成長を、不器用ながら認める微笑み。 「シャルさぁん、良かったですねぇ!」 「お守り役から、相棒に変わったみたいだな」 二人の関係性が変わったことは、すぐ周囲に伝わった。
先日は面会謝絶だった前ボスと、晴れて会談するシャルロッテ。 「エリックには、済まぬ事をした」 「彼らなら、大丈夫ですよ」 アッシュが指を鳴らすと、応接室にホログラムが。 中継されるダッチマン号の様子に、驚く子分たち。 「ルチアノしゃん、これからも変わらぬ取引をよろしくでち」
リヴァプールで宿を取る一行。 万一に備えクワンダは隣室へ、シャルロッテとエルルは相部屋。 ベッドに寝ると、今日の疲れが一気に。 「エルルしゃん。ヤスケしゃんのことでも考えてまちたか?」 「シャルさぁん、鋭いですねぇ」 ヒノモトで知り合った、元奴隷の青年。今頃どうしてるだろう。
長靴半島の危機が去った後。 戦力不足を感じたシャルロッテは、1年の間にどこかで銃を入手し、訓練していたらしい。大気中の水分を雹弾に変え、撃ち出す魔銃。おそらくは、ムウの遺産。 出所は明らかでないが、アッシュがアンロックした「勇者の武器庫」から護身用に贈られたのかもしれない。
星の海を漂流する、古の巨大な遺跡船。熟練の冒険者らしき老紳士の魂が、夢渡りで甲板に降り立つと。そこには雄大な山河と草原が広がっていた。 「シャルロッテ。私はここに街を作るから、その時は世話を頼むよ」 「わたちが町長でちゅ」 祖父の腕に抱かれながら、幼きシャルロッテは微笑んだ。
「ホランドの王様はぁ、どんな風に心が広かったんですかぁ?」 「まず、救世教徒じゃないシャルロッテちゃんに寛容でちた」 イスパニアは、救世教を侵略の道具にした。異教徒は人にあらず。 「君は、夢の渡り鳥だと聞いたよ」 「どこのウワサでちか!?」 このときは流石に、肝を冷やした。
「ヒノモトで救世教を広めない。それがヒデヨシしゃんの条件でち」 ホランド王が出した、出資の条件。極東のヒノモト国王に夢渡りで会い、自国との交易を認めさせること。オスマンの獅子王から譲り受け、育ててる花の球根を分けてほしいこと。 「ヨミコさぁんは?」 「大陸に出征した後でちた」
「葡萄の島に着いたソルフィンしゃんたちは、拠点作りを始めたでち」 夜、その拠点へ忍び寄る人影。槍と弓で武装した先住民だ。 「こらぁ、何するでちかぁ!」 ちょうど夢渡りで来てた霊体のシャルロッテが、お化けに扮し追い払う。 「助かったよ」 「ちょっと、様子を見てくるでち」
「シャルロッテさぁん、可愛くなりましたねぇ♪」 「シャルで、いいでちよ!」 エルルが屋台に「休憩中」の看板を吊るす。 「さぁ、積もる話をしましょお!」 見た目は少女だが、エルフの血を引くシャルロッテは46歳。 「飲むのもほどほどにしとけよ」 護衛の傭兵クワンダも健在だ。
なぜ、こうなった。 今日はフリウリ村の教会で、勇者アッシュとマリカの結婚式のはず。 新郎新婦の行く手を阻むのは、花嫁姿のシャルロッテと…!? 「シャルロッテちゃんは失恋の傷心を利用され、魔王の花嫁になりまちた。チミたちは敵でちゅ」 「ちょっと、何のイタズラよ?」 「失恋…?」
「ようこそ、シチリアへ」 組織の者が迎えに来た。 「積み込み作業の間、ささやかな宴を用意させて頂きました」 「ご苦労でちゅ」 島内を案内される一行。名目上は、お得意様の接待。だが値踏みされているのは間違いなく。警護のクワンダは意図的にいかつい演技で、周囲に目を光らせた。
田舎娘でありながら、勇者のハートを射止めたマリカ。 新たな恋と、夢に駆け出す商人シャルロッテ。 そして、列強諸国の横暴に抗い続ける海賊少女マリス。 彼女らは、ONTEMBAAR。飼い慣らせない、不屈の者。 はたして、宝珠を巡る冒険の結末は… マーケター! 第一部完ッ!!
いよいよ、お待ちかねのサウナ。火山の如き熱気に、玉の肌を流れる汗。 「エルル、ヒノモトの彼とはどうなの?」 「ヤスケさぁんは、お友達ですよぉ♪」 女三人集まれば、やっぱり話題はコイバナで。 「シャルさぁんとマリカさぁんは、勇者の花嫁の座を争ったんですかぁ?」 「秘密でち!」
【告知】 #おてんば商人の大後悔時代 は長靴半島の危機を乗り越え、物語は前半の結末「勇者の結婚編」へ。応援といいね、ありがとうございます! 後半は予定より話が膨らみ #ドラクエ3 リメイク発売日、11/14までの完結は無理そうです😅 ところで、シャルロッテの隣にいるのは?
「パラディオンだ!」 古き伝承の、都市の守護神像。カラカラの住人たちはシャルロッテを女神の如く仰ぎ見る。 「お前がみんなと紡いだ絆が、街を守った」 クワンダも誇らしげに、相棒を見る。生意気なドヤ顔はいつも通り。後に、この街は「シャルロッテンブルク」の名で呼ばれるようになる。
「落ち着け! みんなシャルロッテを応援するんだ」 クワンダが住民に呼びかける。祈りを捧げる人々。 「オーロラヴェールでち!」 シャルロッテの身体から、ゆらめく極光が広がる。光は次第に大きくなり、やがて街全体を覆い尽くし、全ての砲弾を防いだ。 「何だよ、あの光は!?」
今日こそはフリウリの教会で、アッシュとマリカの結婚式。見守るのは、神父役のシャルロッテ。厳密には救世教徒でないが、二人の強い希望で。 「愛は寛容で、親切でち。人を妬まず、驕らず…愛は絶える事が無いでち」 そして、一同が見守る中。 「誓いまちゅか?」 「誓います」
【告知】 #おてんば商人の大後悔時代 、もし楽しみにしていらっしゃる方がいましたらありがとうございます。 #ドラクエ3 HD-2D版の発売日も発表されましたし、11/14までに頑張ってお話を完結させることを目指します。 遊び始めたら、執筆が止まるので(笑)
砂漠の商人に扮し、隊商に加わった一行はバステトの街を目指す。 「あんたら、若いのに大変だね」 「彼らは孤児で、俺が面倒を見てる」 最年長のクワンダは、一行のパパ。遠くを見るのはシャルロッテ。 マリカとアッシュは、一緒のラクダに乗って。 「救世教徒に気をつけな。ヤバい連中さ」
ロバニエミに戻ると、二つのポータルは消えていた。 「危なかったわ。あいつら誰?」 「後で話す。それより一休みして、エルフの里へ行くのが先だ」 クワンダの提案に、頷くソルフィン。 気になるが、夜明けも近いのでマリカの魂もカラカラへ。 眠れぬシャルロッテには、おばばが付き添った。
「ぐすん、アッシュしゃん…」 「俺も、お前の爺さんも皆、通った道だ」 泣いているシャルロッテと、見守るクワンダ。 そこへ、ドアをノックする音。 「おい、お客さんだぞ」 雨の中、ゲニンが誰か連れてきた。 「オレはソルフィン・ソルザルソン。スカンジアの北、ロバニエミから来た」
数日後、オスマンの船がカラカラに入港した。 「おばば、敵襲か?」 「よく見るんだよ」 船上で、獅子王がシャルロッテにお土産の袋を渡している。 アッシュを勇者と認め、支援を申し出てくれたのだ。 「なんでちか、これ?」 「我が王宮で育てている花の球根だ。エウロパでも流行るぞ」
「おじいちゃんの一族は、勇者の素質がある人を代々助けてきまちた」 誰が呼んだか、勇者の酒保商人。 シャルロッテは養子だが、3代目だとか。 「荒事は、しもべのクワンダしゃんに任せるでちよ」 「誰が下僕だ」 傭兵クワンダは、シャルロッテの祖父に大きな借りがあるらしい。
「ところでキミたち、なんで密航を?」 船長らしい落ち着きで、マリスが少女ふたりに問うと。 「シャルロッテちゃんは、くろこしょうゲットでち!」 「こいつはある商会のお嬢様で、まだ勉強中だ」 連れの男は、護衛と監視を兼ねて彼女の祖父から雇われたらしい。
波に揺れ、きしむ船内。 飲み水代わりのエールを積んだ樽の影で、何か動いた。 ネズミかとも思ったが… 「あんたしゃんも、密航でちか」 「港にいた子ね。確かシャルロッテとか」 そのとき、上のほうが騒がしくなった。 「海賊どもだ、乗り込んでくるぞ!」