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【デザイン進化不要論】 チェコでミースを見てデザインについて考える。

チェコ共和国第二の都市ブルノ。

2014年の夏、御縁により、チェコの国費で一か月ほど留学をした。

仕事を一か月休み、成田からウィーンに飛び、ウィーン発の鉄道でブルノに着いた。

首都プラハと違い、小ぶりなヨーロッパの地方都市の風情のブルノは快適なスケール感の街であった、、。

夏の夕暮れに染まるブルノの街

工業都市として有名なブルノにはもう一つの顔がある。

それは「ブルノ・モダニズム」と呼ばれる「近代建築」の名作が揃っている街なのである。

近代建築のパトロンであるユダヤ系のブルジョワジーが多かったのがその理由とされている。

ブルノ・モダニズムの名作「CAFE ERA」J. クランツ
「モラビア銀行」ボフスラフ・フフス、エルネスト・ウィエスネル
「駅中央郵便局」ボフスラフ・フフス

そのブルノの街に、近代建築史上に光り輝く珠玉の名作建築があるのだ。

ミース・ファン・デル・ローエが設計した「トゥーゲンダット邸」である。

1930年に竣工したこの住宅作品はブルノの街の高台に位置し、
ナチス・ドイツに侵攻されるまでの束の間のチェコ近代建築最盛期のアイコンとなっていた。

何故か庭にピアノが置かれている
リビングからブルノの街を望む

これまで、色々な建築史家や建築家がこの建築について語っているが、
そのガレージに置かれいているクラシック・カーについて語られるのを見たことがない。

このミースのトゥーゲンダット邸のガレージには、純白のクラシック・カーが置かれているのである。

見学ツアーでは真っ先に案内され、
現代と比較して建築デザインの変わらなさとカー・デザインの激変っぷり
のギャップには大変な驚きを覚えた。

ガレージに置かれた、この建築と同じ時代の車

当時の最新モードであった近代建築も、
実は古典建築のサンプリング&リミックスであることは今や広く知られている。

ル・コルビュジェも、近代建築を車や巨大船舶の「当時の最新テクノロジー」になぞらえたプロパガンダを展開したのですが、元ネタはマニエリスムや新古典主義建築、果てはイスラム建築の古典なのである。
(そのル・コルビュジェの矛盾を最初に暴いたのが、奇しくもチェコの鬼才建築批評家カレル・タイゲである)

という目で見ると、
この頃のカー・デザインは「馬車」のモチーフが色濃く残っていることが良くわかる。

そして、建築も車も、
「古典」の遺伝子が消えた時点で輝きを失った消費デザインになったのである

そもそも、
デザインとは進化しなくて良いものだったのではなかろうか、、、

有名な十字柱は、誰にも見られない地下の機械室まで貫いている


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