マガジンのカバー画像

図書館

56
図書館全般についての記事をまとめています。
運営しているクリエイター

#図書館員

図書館のお仕事紹介(15)巡回

図書館のお仕事紹介(15)巡回

半端な時間にちょっと手が空いたな、というときは、館内を巡回することにしています。

警備上の巡回は警備員さんがしてくれているのですが、図書館員の巡回は別の目的があります。

「巡回している自分の姿を利用者に見せる」ことです。

「図書館員だけど質問ある?」みたいな顔で、ゲーム画面のモブキャラ的に館内をうろうろしつつ、書架の乱れを直したり、困っていそうな人にお声がけしたり、問い合わせを受けたりするわ

もっとみる
図書館のお仕事紹介(12)展示

図書館のお仕事紹介(12)展示

今回は、図書館業務にしては華やかな部類と言える展示についてご紹介します。

ふだんの業務で一番多いのは「新着展示」ですね。新しく入った本をすぐに配架せず、新着本コーナーに展示します。

もうひとつは「テーマ展示」です。よくあるテーマは季節行事(ひな祭りとかクリスマスとか)、推薦図書、人物関連、時事問題、貴重書や郷土資料の紹介などでしょうか。

作業の流れとしては「展示テーマを決める」→「資料の調査

もっとみる
図書館のお仕事紹介(11)相互利用

図書館のお仕事紹介(11)相互利用

相互利用とは、要するに図書館同士でやる本の貸し借りです。
(Inter Library Loan、略してILLともいいます)
「自館に登録している利用者からの依頼で、他館の所蔵資料を利用させてもらう」業務と「他館からの依頼で、自館の所蔵資料を提供する」業務になります。

さらにそのなかで、本そのものを貸し借りする「現物貸借」と必要なページだけコピーして送ってもらう「文献複写」に分かれます。

さら

もっとみる
図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

今回はいよいよ図書館の花形業務、レファレンスのご紹介です。

今頃になってしまったのは、そもそも私はレファレンス専門の担当者でもなく、例によって「何でも屋」として他業務の合間にバタバタとレファレンスもやっているだけなので、私ごときに語れることがあるのか不安だったからです。
(実際世の中には「レファレンスの鬼」みたいなすごい専門の司書がいて、事例集などもいろいろと発信されています)
とは言え最近はレ

もっとみる
人生の先輩に仕事を教える

人生の先輩に仕事を教える

私もこの年齢になって、そろそろ後進の育成みたいなことに貢献したいと思っていたのですが。

ふと気が付くと、自分の職業人生で、自分より若い人に教える回数より年配者に教える回数のほうが圧倒的に多いのですね。

「大学卒業したて!司書資格取りたて!」というキラキラした瞳の志ある若者に、司書の仕事を伝えていければ…と夢見ていたのですが、現実はだいぶ違いました。
そもそも図書館で新卒採用などしていませんし、

もっとみる
図書館のお仕事紹介(9)受贈

図書館のお仕事紹介(9)受贈

受贈とは、寄贈された資料の受入にかかわる業務です。
くれる側の立場からは「寄贈」ですが、図書館側からは「受贈」になります。
「くれるものをもらうだけだろ」と思われるかもしれませんが、寄贈によって発生する事務はけっこうな作業量になるので、私の勤め先でもちゃんと受贈の担当者がいます。

作業を一覧にすると、このようになります。

・寄贈者の意志確認(とくに受入先や受け入れなかった場合の処分方法)
・寄

もっとみる
図書館のお仕事紹介(6)督促

図書館のお仕事紹介(6)督促

督促とは要するに返却期限を過ぎても返してくれない利用者に対して返却を促す業務です。館外貸出をしている図書館であれば、避けて通れないものでもあります。

私は基本的に図書館業務で嫌いなものはないのですが、督促だけはどうも苦手です。担当者ではなくても手伝いを頼まれただけで、露骨に「やだなあ」という顔をしていたと思います。

入職当時、督促の手段はおもに電話だったので、テレアポかサラ金の取り立てのごとく

もっとみる
生きづらさを抱えた人にとって、図書館への就職は救いになるのか?

生きづらさを抱えた人にとって、図書館への就職は救いになるのか?

ネットを見ていると、メンタル系の疾患や対人関係の問題など、なんらかの生きづらさを抱えている人が「図書館司書になりたい」とつぶやいている記事に遭遇することがあります。

あるいは「発達障害の人に向いている職業リスト」になぜか「図書館員」が挙げられていたのも見たことがあります。

また私の勤務先では、メンタルを病んで休職していた人が、復帰直後に図書館へ異動になる例もありました。
人事としては「まあ図書

もっとみる
図書館のお仕事紹介(5)選書

図書館のお仕事紹介(5)選書

「図書館で購入する本は、誰がどうやって選んでいるの?」という質問を受けたことがあります。実際には館種や規模によってさまざまなのですが、ここではよくあるパターンについてご紹介します。

① 選書担当者が選ぶ一番オーソドックスな方法で、1人または複数の選書担当者を決めて、その人が選びます。
たいてい図書館には「選書資料」としていろいろな新刊案内や目録が送られてくるので、そこからピックアップしていること

もっとみる
図書館のお仕事紹介(4)装備

図書館のお仕事紹介(4)装備

また前回から大幅に間が空きましたが、シリーズ第4弾です。

装備とはこれはみなさんおなじみの、図書館の資料に背ラベルやバーコードを貼ったり、フィルムコーティングしたり、ハンコを押したりする仕事ですね。図書館業務のなかでもある意味一番わかりやすいものかと思います。

ただ装備作業にもそれぞれ目的があり、気をつけるべきポイントもあるので、個別にまとめてみました。

1、所在を明示する要するに「本が迷子

もっとみる
図書館のお仕事紹介(3)除籍

図書館のお仕事紹介(3)除籍

図書館が毎年大量の本を捨てている、というのは人によってはショッキングな事実かもしれません。

今回はこの「除籍」という避けて通れない業務についてご紹介します。

1、除籍とはまず除籍の作業は2種類に分かれます。
・資料現物(本とか)を物理的に図書館に無い状態にする
・帳簿上、または機械データ上で、無いものを「無い」とわかる状態にする

物理的に無い状態にするというのは要するに捨てるとか売るとか配る

もっとみる
図書館のお仕事紹介(1)配架と書架整理

図書館のお仕事紹介(1)配架と書架整理

専門性についての記事でおおまかな図書館の仕事についてご紹介したのですが、個々の仕事についてもうすこし詳しく解説するシリーズを始めます。

配架は返却本や新着本を所定の場所に並べる業務、書架整理は請求記号順にきちんと並んでいるかチェックしつつ、位置を調整する業務です。

この二つは図書館の仕事としては入門編的な位置づけで、未経験の新人さんが入ってきたときは「まず配架と書架整理からやってもらおうか」と

もっとみる
職業としての図書館員(番外編):給料分の仕事?

職業としての図書館員(番外編):給料分の仕事?

図書館で働いていて、一番困るのは「給料分の仕事だけしていればいい」と言われることです。

「そんなこと考えていたら、ろくな仕事はできない」としか言えません。

図書館に限ったことではないでしょうが、目の前に課題(たとえば困っている利用者)があって、自分に一応解決できる能力があるのに「自分の給料でそこまでのことはできない」とは言えないですよね…。実際私自身、給料が安いから手を抜くなどと考えたこともあ

もっとみる
図書館員流「本を見る方法」

図書館員流「本を見る方法」

「本を読む方法」ではないことがポイントです。
図書館に勤めていると「本が読み放題でいいね」と言われることもありますが、年間何千冊何万冊を取り扱っている身では、いちいち本を「読んで」いたのでは時間がいくらあっても足りません。とは言え資料を把握するのも仕事のうちなので、手にした本は時間の許す限り開いて見るようにしています。こうした速読やななめ読みですらない、図書館員独特の「本の見方」をご紹介します。

もっとみる