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図書館

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図書館全般についての記事をまとめています。
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#司書

図書館のお仕事紹介:イベント企画

図書館のお仕事紹介:イベント企画

図書館では、貸出などの通常業務の他に、定期的にイベントを開催することがあります。

たとえば「身近な材料で七夕飾りやクリスマスリースを作ろう!」といったワークショップ系や、講師を招いての講演会、映画の上映会、こども向けの紙芝居やおはなし会などです。

地味なことが多い図書館員の仕事のなかでは、イベント企画というのはわりと楽しげな業務ではありますが、やはり外部とのやり取りになるため、気を遣うこともい

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読書量を冊数で量るのは無理があります

読書量を冊数で量るのは無理があります

図書館で働いていると、利用者の読書量が気になります。貸出冊数の統計を出したり、「月に何冊くらい本を読みますか」などのアンケート調査をしたこともあります。

ただ最近「読書量を冊数でカウントするのは無理があるのではないか」と思うようになりました。

1冊あたりの情報量が本によってまったく違うからです。

「一か月でピーターラビットの絵本全24冊読んじゃった」という人と「ヘーゲル著『精神現象学』上巻が

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司書の雇い止めで話題になった、狭山市立中央図書館に行ってみました

司書の雇い止めで話題になった、狭山市立中央図書館に行ってみました

先日、用事があって埼玉県にある狭山市駅周辺で時間を潰さなければならず、近くの狭山市立中央図書館に行ってみました。

ここは、2023年に図書館司書の雇い止め問題で話題になったところです。

我々図書館業界人のあいだでも(悪い意味で)話題になっていました。
どうせならもっと素敵なことで話題になっている図書館に行きたかったのですが、仕方がありません。

図書館に一歩入って感じたのが「空いている」という

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図書館の電子化はなぜ進まないのか?

図書館の電子化はなぜ進まないのか?

「もうすぐ紙の本は滅びる、これからは図書館も電子の時代!」みたいなことは、思えば何十年も前から言われていた気がします。

何十年も経った今、「そうはなってないな」というのが正直な感想です。
たしかにコロナ禍を機に、私の勤め先でも来館せずに使えるサービスを増やそうという動きはありました。実際に電子書籍・電子ジャーナルも拡充していますし、利用者向けの電子資料活用講習会にも力を入れています。

ただ、図

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図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

図書館に、こんな人がいます。
仮にXさんとします。

Xさんは職員として図書館に出勤しているので、傍目には「司書さん」に見えるかもしれませんが、まったく司書ではありません。

人事異動で図書館に配属された一般職員です。

貸出・返却やレファレンスなどの利用者対応、配架や書架整理、本の装備や分類・書誌データ作成、展示の企画、壊れた本の修理など、世間でイメージする図書館司書の仕事はいっさいやっていませ

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「20分で3品」司書

「20分で3品」司書

よく料理で、「揚げ○○の××あんかけ」みたいな手のかかるレシピに挑戦したり、「フォアグラのトリュフソース添え」みたいな高級食材を使いたがる人がいます。

でも家庭で求められるのはそんなことではなく、「冷蔵庫にある賞味期限が迫っている食材を組み合わせて20分で3品作れ、しかもちゃんとおいしい」ことだったりしますね。おなかをすかせた家族を待たせないことのほうがたいせつです。

図書館でも同じようなこと

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図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

利用案内と利用者教育は、広い意味ではレファレンスサービスの一種かと思いますが、単独で紹介されることがあまりないので、項目を立ててみました。

図書館員の使命として「利用者の時間を節約する」ということがあります。
「この本が見つかりません」「探し方がわからない」といった問い合わせについては、こちらが探して本を持ってきたほうが早いので、そうすることも多いです。

ただあえて「利用者が次から自分で見つけ

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翼のあるものは飛びたがる

翼のあるものは飛びたがる

よく求人広告で「誰にでもできる簡単なお仕事です♪」みたいなものがあって、見ると今働いている図書館より時給が良かったりします。
もちろん広告が大噓で、実際は超過酷な仕事、という可能性もありますが、仮に広告どおりだったとして、じゃあ転職しようか、とはなりません。
「誰にでもできる簡単な仕事」というのはかえって拷問じゃないかと思うからです。
むしろ「そこそこの知能が前提で、それなりの努力と研鑽が不可欠、

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図書館のお仕事紹介(13)修理製本

図書館のお仕事紹介(13)修理製本

昔から書籍修理には興味があり、製本教室に通ってみたことがあるのですが、そこでわかったのは「自分は不器用過ぎて製本家になれない」ということでした。
専門知識以前に「定規にカッターをあててまっすぐ切る」「紙に糊を塗って貼り付ける」といった工作の基本がまともにできないのですね。もともとモノはつくるより壊すほうが得意で、家電なども触っただけで壊すので「手から破壊のビームが出ている」疑惑もあり、家人からデス

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図書館のお仕事紹介(12)展示

図書館のお仕事紹介(12)展示

今回は、図書館業務にしては華やかな部類と言える展示についてご紹介します。

ふだんの業務で一番多いのは「新着展示」ですね。新しく入った本をすぐに配架せず、新着本コーナーに展示します。

もうひとつは「テーマ展示」です。よくあるテーマは季節行事(ひな祭りとかクリスマスとか)、推薦図書、人物関連、時事問題、貴重書や郷土資料の紹介などでしょうか。

作業の流れとしては「展示テーマを決める」→「資料の調査

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人にはどれだけの蔵書がいるか

人にはどれだけの蔵書がいるか

「図書館の人って、自宅にもさぞたくさん本があるんでしょうね?」と言われることがあります。

もちろん人によります。本の山に埋もれて暮らしている人もいれば、そもそも本好きではなく自宅に本などない、という人もいます。

ちなみに私は、自宅の蔵書を数えてみたところ、漫画や雑誌を入れても、430冊くらいでした。日本人の平均値より多いかもしれませんが、本好きとしては少ないのではないでしょうか。

自室に天井

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図書館のお仕事紹介(11)相互利用

図書館のお仕事紹介(11)相互利用

相互利用とは、要するに図書館同士でやる本の貸し借りです。
(Inter Library Loan、略してILLともいいます)
「自館に登録している利用者からの依頼で、他館の所蔵資料を利用させてもらう」業務と「他館からの依頼で、自館の所蔵資料を提供する」業務になります。

さらにそのなかで、本そのものを貸し借りする「現物貸借」と必要なページだけコピーして送ってもらう「文献複写」に分かれます。

さら

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図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

今回はいよいよ図書館の花形業務、レファレンスのご紹介です。

今頃になってしまったのは、そもそも私はレファレンス専門の担当者でもなく、例によって「何でも屋」として他業務の合間にバタバタとレファレンスもやっているだけなので、私ごときに語れることがあるのか不安だったからです。
(実際世の中には「レファレンスの鬼」みたいなすごい専門の司書がいて、事例集などもいろいろと発信されています)
とは言え最近はレ

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人生の先輩に仕事を教える

人生の先輩に仕事を教える

私もこの年齢になって、そろそろ後進の育成みたいなことに貢献したいと思っていたのですが。

ふと気が付くと、自分の職業人生で、自分より若い人に教える回数より年配者に教える回数のほうが圧倒的に多いのですね。

「大学卒業したて!司書資格取りたて!」というキラキラした瞳の志ある若者に、司書の仕事を伝えていければ…と夢見ていたのですが、現実はだいぶ違いました。
そもそも図書館で新卒採用などしていませんし、

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